
佐古薬局
薬剤師
患者さんや地域の医療と深くつながり、
薬剤師として、社会に貢献。
幼い頃、お世話になった薬剤師の姿に憧れて、地域密着の薬局薬剤師になった卒業生にインタビュー。症状に合わせた薬をただ提供するだけでなく、患者さんのライフスタイルや性格にまで寄り添い、その人自身を支える毎日について伺いました。
幼少期の体験から生まれた、
薬で人を支えたいという想い。
小さい頃はよく喘息の症状が出て、調剤薬局で薬を処方してもらっていました。当時の私は、薬の味がとても苦手で、母はかなり苦労していたそうです。錠剤をすりつぶしたり、ジュースに混ぜたり。あの手この手で、私が薬をきちんと飲めるように気を配ってくれていました。あとから知ったのですが、こういった工夫はすべて、薬剤師の方からのアドバイスに基づいたものだったそうです。この話を聞いた私は、幼い自分に寄り添ってくれた薬剤師の方に憧れを抱くように。自分も将来は調剤薬局で働いて、病気の方が持つしんどさや辛さを少しでも軽くしたい、と考えるようになりました。
在学中のアウトプット経験が、
現場で必ず生きてくる。
大学では、症例を想定したシミュレーション実習や、患者さんとのやりとりを練習するロールプレイを取り入れた授業が多数。薬剤師になって感じるのは、こういった実践型の授業がしっかりと、現場のリアルにつながっていたんだということ。病院実習で、シミュレーションと同じ疾患を持つ患者さんに対応することになったり、薬局での新人研修でよどみなく対話を行えたり。知識をインプットするだけでなく、現場を想定したアウトプットを繰り返していたからこそ、落ち着いて患者さんに対応し、プラスアルファの提案ができる。そんな経験がこれまでに何度となくあります。
患者さんとのつながりを、
点ではなく、線にしていく。
私が働く薬局は規模の大きな病院の近くにあるため、癌などの重たい疾患を抱えて来局される患者さんも多いです。重たい症状に応じた薬は、副作用のリスクがあることも。そのためアフターフォローの電話をかけ、体調の変化をヒアリングしたり、飲み方のアドバイスをしたりすることも、大切な業務のひとつ。初めはあまり話してくれなかった患者さんも、会話を重ねると「食事の時間がバラバラで……」「こんな症状が出て心配」といった相談をしてくれるようになります。小さな不安も共有し、相談できる。患者さんとの接点を増やし、関わりを深めながら、そんな存在をめざしています。
生活と性格に寄り添って、
提案はすべてオーダーメイド。
地道に信頼関係を築き対話を重ねていくと、患者さんの相談から、薬剤師として成長できるきっかけをもらえることも。以前担当した患者さんに、手が不自由な方がいらっしゃいました。その方から「薬の袋が開けづらい」という悩みを聞いて気づいたのは、「決められた時間に、決められた量の薬を飲む手伝いだけが、服薬指導ではない」ということ。その方のライフスタイルや性格、身体状況に合わせて、包み方を変えたり、カレンダーに薬をセットして飲み忘れを防いだり。一人ひとりに合わせた提案をするたびに、薬剤師としての可能性を広げられていると感じます。
変わっていく医療のあり方にも、
対応できる薬剤師をめざして。
日本では今、薬剤師や介護士が病院と連携して、地域全体で医療を提供していく必要性が高まっています。患者さんの日常を、近い距離で支えることが、これからの薬局が果たすべき役割。最近は疾病や薬に関する相談を気軽にできる「かかりつけ薬剤師」に指名されることも増え、やりがいと使命感を感じています。患者さんの意見を病院に連携して、より適した薬の処方を模索したり、病院や薬局に通うことが負担になっている患者さんを在宅医療に切り替える提案をしたり。業務の幅を自分で決めることなく、薬剤師として、患者さんや社会のためにできることを広げ続けていくことが、私の夢です。