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教員が語る同志社女子大学の学び

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「表現」
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「個性」

オペラをはじめ
演奏活動を通じて
舞台表現を追究しています。

音楽学科

井原 秀人教授

自分にはないキャラクターを楽譜から読み取り、表現する。

私はこれまで声楽家として、さまざまなオペラに出演してきました。オペラは、音楽、演劇、文学、美術等が一体となった総合芸術であり、その壮麗さがお客様を魅了します。一方、歌い手にとってのオペラの魅力とは、作曲者によって描かれた、本来の自分にはないキャラクターを楽譜から読み取り、音楽を一旦自分の身体に入れて、全身で表現することだと私は思っています。

その醍醐味を味わい、自分の演奏活動を変えるきかっけとなったのが、黛敏郎作曲のオペラ『金閣寺』への主演でした。三島由紀夫の小説を原作としたこのオペラで、私は金閣寺の美しさに取りつかれた主人公の青年僧を演じました。三島文学に初めて触れ、何度も原作を読み、音楽を自分の中に取り込んで、想像したこともない屈折した人間を演じました。
以来、貪欲に、国内外の作品であらゆる役柄を演じてきましたが、自分とは違うキャラクターを表現することで、自分の人生がより豊かに彩られているのを感じます。

現在もオペラを中心に、歌曲のコンサートや、宗教曲、第九などの交響曲でソリストとしても舞台に立っており、これら演奏活動を私の研究活動としています。
研究テーマは「声楽全般における舞台表現法の研究」です。発声法、イタリア語・ドイツ語・フランス語などの言葉に声を乗せて観客に届ける言語表現法、役柄をどう演じるかの身体演技表現法などを研究対象としています。

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オペラ公演を通じて、社会に求められる客観性・協調性を磨きます。

私が担当する授業のひとつに「オペラ」があります。3年次からオペラの基礎を学び、4年次の秋学期には同志社女子大学音楽学科オペラクラス公演としてモーツァルト『フィガロの結婚』を、本学の新島記念講堂で開催します。キャストをはじめ、舞台スタッフ、照明、衣裳も学生が主体となって創り上げ、オーケストラ演奏は本学科の管弦打楽器コースの学生が担ってくれます。毎年恒例のこの公演では、バリトンの私も長く男性キャストのフィガロ役を演じています。

私は3年次の春学期から授業を担い、オペラ未経験の学生に対して、役への向き合い方や動きといった基礎を指導すると同時に、さまざまなオペラの重唱を課題曲として、発声法や言語表現法、演技表現法を指導しています。
オペラが初めての学生は、最初の譜読みだけで緊張してしまいますが、授業を重ねるごとに緊張がほぐれ、客席から動きを指導するようになると、着実に表現力が身についてきます。

3年次の秋学期には、オペラの重唱を集めた試演会を本学キャンパスの頌啓館ホールで開き、表現力を磨きます。4年次生になると、私も学生と一緒にステージに上がって共演しながら、作品を創り上げて行きます。授業以外でも学生が自主的に稽古を続け、私が驚くほど学生一人ひとりが自分の殻を打ち破り、成長していることがわかります。

私が指導において重視しているのが、客観的に自分を見ることです。自分が役になりきっていては、ほかのキャストとコミュニケーションがとれず、作品として成り立ちません。客観的に自分を見つめ、そのうえで周囲を見渡し、なおかつ自分の演技に集中する。
こうした自分の強みや弱さを知る客観性と、それを知ったうえで周囲との関わり方を考え、行動する協調性は、音楽のみならず、社会のあらゆる場面で必要になる力だと思います。

そして、オペラクラス公演の本番。大収容の新島記念講堂を揺るがす大きな拍手を受け、幕が下りた後は、全員が号泣です。大きな達成感、自分の殻を打ち破った充実感で、人間としてひとまわり大きくなります。

本学には、新島記念講堂や頌啓館ホールのほかに、自学自習の場「ラーニング・コモンズ」もあり、総合大学ならではの広いキャンパスに表現の場が多数あるのは、本学で音楽を学ぶメリットのひとつです。

何より総合大学であることは、演奏家を目指す学生にとって理想的な環境だと思います。
私自身は単科大学で音楽を学んでいたため、オペラ・歌曲の演奏技術向上の勉強中心の学生生活でした。卒業してから文学をはじめ多方面の学びに触れ、それにより歌い方や感情の表現方法がわかった経験があります。
その点、同志社女子大学は在学中から幅広い学問領域に触れ、他学科の科目も学ぶチャンスがあり、豊かな感性を磨くことができます。

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唯一無二の声、その個性を伸ばす指導を行っています。

「声楽コース」では50分の個人レッスンで、私の場合、最初の20分は発声練習をします。18歳から22歳は成長段階で、声もまだまだ伸びて成長していくため、発声練習は丁寧に行います。
後半の30分は課題曲の指導です。1年次はイタリア歌曲から始め、2年次ではモーツァルトのオペラなどのアリア、3年次ではドイツ語やフランス語の歌曲と並行し、オペラアリアとしてレベルの高いプッチーニ作品等にも挑戦します。

私が指導で重視しているのは、個性をどう生かすかです。持ち声の響きや声量は個人差が大きいため、個性や強みを伸ばして発声する指導を行っています。
声帯は、その学生にしかない唯一無二の個性です。一人ひとりの声を知って、その声に合う指導方法を熟考します。

授業では学生を笑わせることに力を注ぎます。笑うと体がリラックスし、緊張感がほぐれて声が出しやすく、授業も楽しくなります。卒業生の中には教員も多く、「井原先生のように、私も生徒たちにどんな楽しい授業をするかを考えています」とよく言われます。
卒業生の中には、ミュージカルが好きで劇団に入り活動をしている人、一般企業に就職し、アマチュアとして音楽を続けている人もいます。表現の楽しさと多様な表現方法を知り、それを社会のさまざまな場面で多くの人に届けている卒業生たちの活躍は、私の喜びです。

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受験生のみなさんへ

自分の好きな音楽に精一杯取り組んでください。コーラスや吹奏楽部で頑張っている人など、今、力を注いでいる音楽に集中して少しでも上達するように努力してほしいと思います。その上で、これから新たに声楽の道に進もうと思っている高校生の皆さん、これまでの努力は決して無駄にはなりません。今まで取り組んできた音楽を生かし、そこに声楽をプラスすることで表現はさらに豊かになります。

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井原 秀人教授

学芸学部 音楽学科 [ 研究テーマ ] 声楽全般における舞台表現法

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業演奏曲目例

  • ヴェルディ作曲 オペラ「椿姫」より
    ああ、そは彼の人か~花から花へ
  • レオンカヴァッロ作曲 オペラ「パリアッチ」より
    大空を晴れやかに
  • ドニゼッティ作曲 オペラ「ランメルモールのルチア」より
    あたりは沈黙に閉ざされ
  • ロッシーニ作曲 オペラ「セヴィリアの理髪師」より
    今の歌声
  • グノー作曲 オペラ「ファウスト」より
    トゥレの王―宝石の歌
  • 山田耕筰作曲
    君がため織る綾錦
  • 團伊玖磨作曲
    紫陽花
  • 小林秀雄
    すてきな春に