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教員が語る同志社女子大学の学び

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「古典」
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「京都」

『源氏物語』を鏡に
自分を見つめる。
文学研究の醍醐味です。

日本語日本文学科

吉海 直人特任教授

『百人一首』の研究においても、多数の本を執筆しています。

『源氏物語』の研究を始めて40年になります。若いころは「いつか研究テーマが尽きるのではないか」と不安になりましたが、とんでもない。人生のすべてが詰まった物語であり、研究者自身の年齢やライフイベントに沿って追究したいテーマが次々と見つかる、非常に度量の大きな作品です。

例えば、私が子どもを持ったときには“平安朝の貴族は子どもをどう育てたか”に興味を持ちました。そこで『平安朝の乳母(めのと)たち』として、上代にまでさかのぼり乳母の変遷も含めて追究していきました。乳母という職掌に子どもを預ける平安時代の親子関係は、子どもを手元で育てる現代の親子関係とはまったく異なる、そうした観点から『源氏物語』をどう読み解くかを提言する研究となりました。
『源氏物語』を読むことは、物語を通して自分を見つめ直すことだと言われます。作品を“鏡”として自分と対峙する、これが文学研究の醍醐味のひとつだと思います。

現在は時間意識をテーマに研究をしています。平安時代は太陽や月の動きから時を知る自然時報のほか、宮中に水時計があり、時刻を告げる係がいたことが明らかになってきました。平安貴族は時刻を理解したうえで、夜に活動することがわかってきたのです。
一方、現在の時間の計り方は江戸時代以降のものであり、現代的な時間意識で男女が会い・別れる「きぬぎぬ」を解釈してしまうと、読み誤る可能性が出てきます。これらを1冊の本にまとめるべく研究を進めています。

『源氏物語』と併せて、31文字の小さな文学である和歌の研究も続けており、『百人一首』に関する著書も多数執筆してきました。小中学校から習う『百人一首』は余りに流布しているため、思い込みや現代の常識が和歌の解釈をさまたげている面が否めません。そこで百首すべてを自分の解釈で塗り替えてやろうといった大胆な計画を立て、今も研究を続けています。

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現代の私たちがどう読むかが、未来の文学研究の糧になる。

1年次の授業で私がまず学生に伝えるのは「高校までで習ったことと、大学での学びの違いを考えなさい」ということです。『百人一首』同様、思い込みが古典文学を学ぶ際の障壁になることがあり、授業ではそれらの排除に努めます。そして2年次の基礎演習では、学生が自律的に『源氏物語』の注釈や用例を調べ、自分の視点で『源氏物語』を読むようになります。
大学在学中に54帖すべてを読解し、論文を書くのは不可能ですが、『源氏物語』は小さな部分を切り取り、そこから考察しても十分に研究として成り立つ器の大きな作品です。
ゼミでは、その切り取り方と、参考文献や用例の検索方法を私が指導し、学生が自分の興味のあるテーマを設定します。例えば、『枕草子』の冒頭で有名な「あけぼの」ですが、実は『枕草子』では冒頭の1例にしか使われていません。ところが、『源氏物語』では14例使われていることが用例検索からわかります。このことから、「あけぼの」は『源氏物語』で調べる価値のあるテーマだとわかります。
辞書にも出ていないこと、人とは異なる視点から考えることで研究は一層深まり、自信もついてくる。文学研究の面白さです。

『源氏物語』を書き写した写本は多数あるため、ゼミではそれぞれの違いを調べることから始め、さらに注釈書などから昔の人が何を問題にしていたかを調べていきます。古典文学は時代によって読み方が変化し、それが反映されているのが注釈書であって、注釈書を読み取ることで本文を読む力も身につきます。古の人たちがどう作品を読んだかを知ることが重要であり、現代の私たちがどう読むかは、未来の人の研究に意義あることなのです。

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キャンパスの前に京都御所。古典を学ぶうえで最高の環境です。

卒業論文の作成にあたっては文章能力が不可欠であり、私は1年次、2年次から授業で徹底して指導を行います。2年次の基礎演習では書式を用い、論文の組み立て方や論理的な文章の書き方など、自分の考えを文章化する訓練を重ねます。ゼミに限らず、私が担当する授業の定期試験はすべてレポート提出を課しており、学生からは“赤ペン先生”と呼ばれています。

独自の視点から課題について考え抜き、それを理論的に表現していくことで文章能力が鍛えられるのは言うまでもありません。卒業生は企業に勤務する人が多いのですが、業種を問わず、自分で課題を見つけ出し、解決し、それを文章で表現する能力を各職場で発揮しているようです。
また、ゼミの卒業生には中学校・高校の国語科の教員も多く、『源氏物語』で卒論を書いた彼女たちは、古典文学の面白さを熟知しているため、その楽しさを生徒に伝えるのが上手なようです。一人でも多くの人に古典の楽しさを伝えるためには、教員養成が最も近道ではないかと最近気づきました。

同志社女子大学の今出川キャンパスの目の前は、京都御所です。すぐそばには歌人・藤原定家の流れをくむ冷泉家があり、葵祭や時代祭も間近に見ることができる。大学にいながら、日本の歴史・文化を感じとることができるのは、古典文学を研究するうえで最良の環境です。

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受験生のみなさんへ

受験で身につけた知識は、必ず役に立ちます。大学ではその知識を土台にして、自分の視点で興味の対象を見つけ出し、本当に面白いと感じることを徹底的に追究してください。決して教わろうとせず、日本語日本文学科という場を通して、自分探しに力を注いでほしいと思います。私もそうやって40年間研究を続けてきました。私をひとつの見本としてもらえたら嬉しいです。

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吉海 直人特任教授

表象文化学部 日本語日本文学科 [ 研究テーマ ] 平安朝の物語及び和歌文学

研究者データベース

卒業論文一覧

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卒業論文テーマ例

  • 「平安朝文学における「まじらふ」考―『源氏物語』を中心に―」
  • 「『源氏物語』「もぬけ」考―空蝉の残した衣をめぐって―」
  • 「『源氏物語』「ささめく」考」
  • 「『源氏物語』「にほひやか」考」
  • 「『源氏物語』「めざまし」考」
  • 「『源氏物語』「暁」の表現」
  • 「『源氏物語』における「うるはし」の一考察」
  • 「『源氏物語』「やをら」考─「やをら」で始まる恋物語─」
  • 「『源氏物語』における「そそのかす」考」
  • 「『源氏物語』における「たばかる」考」
  • 「紫式部の「額」にまつわる独自の表現」
  • 「『源氏物語』における「心知る」の一考察―密通を知る女房たち―」
  • 「『源氏物語』における「省筆の技法」の考察―「書かない」ことの効果―」
  • 「『源氏物語』「まつはす」考」  
  •                 
  • 「平安朝文学における「あくがる」―私家集の例を中心に―」
  • 「『源氏物語』「夜離れ」考―紫の上の人物造型として―」
  • 「『源氏物語』における「いまめかし」―演出される世界―」
  • 「「何心なし」の刻印―女三宮試論―」
  • 「『源氏物語』「もろともに」考」
  • 「『源氏物語』における「物越し」