「イギリス」
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「女性像」
19世紀英国文学の
ヒロインを通して
人間理解を深めます。
英語英文学科
風間 末起子特任教授
作家・作品だけでなく、その背景まで広く研究しています。
英国を代表する女流作家シャーロット・ブロンテとエミリ・ブロンテ、そしてトマス・ハーディ、マーガレット・ドラブルといった、19世紀以降のイギリス文学の研究を続けています。作家や作品だけを研究対象とするのではなく、その背景にある歴史や社会、思想、そして作品に描かれた女性の生き方などを広い視野から追究します。人間理解のために深くものごとを考えるきっかけを与えてくれる、研究し甲斐のある作家たちです。
また、作品に登場するヒロイン像を歴史の流れの中で考察し、フェミニズムの変遷についても研究を進めています。
1847年に刊行されたシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』は、孤児ジェーンが自由と自立をめざして家庭教師になり、強い意志で人生を切り拓き、屋敷の主人ロチェスターと結ばれるまでを描いた作品です。当時のイギリス社会では画期的な新しい女性像が描かれました。
私の研究の柱であるトマス・ハーディも「新しい女」の小説の名手として知られており、『日陰者ジュード』では、結婚はせず同棲を選ぶなど因習にとらわれない大胆なヒロインを描き、発売後は大きな反響を呼びました。
当時のイギリスは産業革命によって大量生産が始まり、それにより労働階級の女性たちの雇用が広がりました。しかし、長時間のうえに低賃金。とりわけ多くの既婚女性が働いていた洗濯工場の仕事は重労働でやけどが絶えず、家に帰れば家事・子育てが待っているという過酷な生活でした。しかし1890年代に「新しい女」というイデオロギーが生まれ、覚醒した女性像が描かれるようになると、工場の改正法や女性管理職が出てくるなど、大きな社会変化につながりました。
産業革命を迎え強国となったイギリスの歴史を見つめると、社会の確立とともに、それまで影に隠れていた女性の存在が顕在化してくることがよくわかります。「新しい女」のイデオロギー以降、18世紀とは比べられないくらい文学やジャーナリズムの世界でも女性が活躍し始めるのです。世界でいち早く近代化したイギリスの文学は、非常に内容が厚く、文化、経済、哲学まで、あらゆる側面から研究できる面白さがあります。
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原文を読み、研究することで確かな自信が身につきます。
私のゼミでは、3年次生はシャーロット・ブロンテ、4年次生はエミリ・ブロンテの作品を取り上げ、まずは英語の原文をしっかりと読むことを重視しています。
19世紀の作品であり、使われている英語は難しく、見たことのないボキャブラリーが多数出てきます。しかし文法構造がしっかりとしているため、英文読解力が非常に鍛えられます。作家が推敲を重ねて書いた文章、それらを構成する言葉一つひとつに対して辞書を引きながら向き合っていると、なぜ作家がその単語を選んだかがよくわかり、作家の思いが心に入ってきます。100年以上読み継がれている歴史の重みを実感しながら、原文で読むハードルを自分の力で乗り越えていくことで、確かな自信が身につくと思います。
作品研究にあたっては、さまざまなアプローチ方法がありますが、私はいくつかのテーマを学生に提示し、テーマに付随した文献リストも挙げます。もちろん自由にテーマを設けて研究することはできますが、文学研究で最初に取り組むべきは正しいフォームの習得だと考えるからです。スポーツでもまずトレーニングをして体をつくり、土台を整える。それと同じことです。
提示するテーマは、例えば「映像と小説の比較」があります。『ジェーン・エア』はこれまでに何度も映画化されており、原作の小説を各時代の監督がどう映像表現しているかを比較・追究します。最新版の2008年の映画では、ジェーン・エアの恋人ロチェスターは、とても優しい男性として描かれていますが、1940年代のハリウッド映画では、非常に高圧的な男性として描かれています。こうした表現の違いを社会変化などに照らし合わせて研究します。
そのほか、なぜジェーン・エアが紺色のドレスを着ていたのか、といった文化史の観点からのテーマや、ジェーン・エアが描いた絵画からジェーンの深層心理を考えるテーマもあります。19世紀のヒロインと21世紀を生きる自分との違い、イギリスと日本の違い、あるいは女性としての共通点を見いだしながら、文学研究の面白さを感じてほしいと考えています。
これら研究について、学生は定期的にゼミ内でプレゼンテーションします。参考文献から調査をし、考察して自分の考えをまとめ発表するのですが、本学の英語英文学科の学生は非常にプレゼンテーションが上手です。学科の授業科目でプレゼンテーションの機会が多く、よい経験を重ねているからでしょう。卒業後すぐに社会で発揮できる能力です。
また、ゼミは日本語による研究レポートの提出を求め、私が厳しくチェックを入れます。イントロから本論、そして結論という論文作成のメソッドに沿って指導をすると、次のレポートでは学生が驚くほどレベルの高い文章を書いてきます。論理的な英文を読み進め、論理的な日本語を書くことで、文章能力は相当に鍛えられます。
何より、作品に描かれたヒロインが自由と自立を目指して生き抜く姿から人間を深く理解しようとする学びは、社会に出てさまざまな困難に立ち向かうときに、一人ひとりを内側から支える確かな力になると思います。
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同志社女子大学で育まれていく、深い精神性と豊かな心。
これまで多くの同志社女子大学の学生、卒業生を見てきて感じるのは、強い精神性と豊かな心を持った人がとても多いということです。「私が」「私の大学が」と、決して声高に自分自身をアピールすることなく、地に足の付いた生き方をしていると感じます。人に華を持たせることができ、地域社会で活動している人もたくさんいらっしゃいます。
「キリスト教主義」「国際主義」「リベラル・アーツ」によって育まれた深い精神性が、同志社女子大学で学ぶ学生の人生を長く確かに支えているのだと思います。
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受験生のみなさんへ
140年を超える歴史の長さや、6学部11学科という数字だけでは表現できない、とても奥行きのある、厚みのある大学が同志社女子大学です。まるで深遠な学びの森のようなキャンパスにぜひ入ってきてください。学問の面白さに目覚め、異文化を知ることによって今まで気づかなかった自分の可能性を知るなど、新しい経験を重ねることができると思います。
卒業論文テーマ例
- キャサリンとヒースクリフの愛のナゾ
- ゴシック小説として読む『嵐が丘』― ヒースクリフとは ―
- 語り手たちの『嵐が丘』
- シンボルから読む『嵐が丘』― 「手」と「犬」について ―
- 『嵐が丘』からみるシンボル ― 分離と融合 ―
- 『嵐が丘』と幽霊 ― キャサリンの死生観(キリスト教との比較) ―
- 『嵐が丘』における語り手による効果
- 『嵐が丘』における自己のアイデンティティーの確立と象徴