病院で就労の相談ができる「がん相談支援センター」をご存知ですか?

2017/06/23

田村 沙織(看護学部 看護学科 実習助手)

現在、生涯でがんにかかる可能性は、男性が約60%、女性が 約45%であり、国民の2人に1人ががんになる時代となっています。また、がんの早期発見と治療法の進歩とともに、生存率は上昇しており、がんになっても長期生存し、社会で活躍している方も増えつつあります。がんの発症は男性では50歳を境に増加し,女性は30歳~40歳代より増加しています。3人に1人は就労可能年齢でがんになっています。患者さんが就労する理由は、生活を維持するため、治療費のためなどの経済的基盤の維持、社会との接点をもっていたいや働くことが生きがいなどの自己実現が挙げられます。

 しかし、現実には、就労している患者さんの約30%が依願退職、約4%が解雇、自営業等の約13% が廃業したと報告されています。がんの診断を受けても、日々の暮らしは続きます。診断を受け止め、治療の選択を考えていく大変な時期に、多くの患者さんは仕事の引き継ぎや生活の段取りにも直面します。治療が一段落した後も、職場復帰や経済的な問題について、悩む方は少なくありません。

がんに関わる問題を相談する窓口として「がん相談支援センター」をご存知ですか。全国の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」に設置されている相談窓口です。そこには、がんの療養について詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが相談員として対応しています。就職や就労の内容に関しては必要に応じてハローワークや社会労務士と協働して患者さんをサポートします。また、入院中でなくても地域の方でも無料で相談することができます。

相談内容は様々です。例えば、がんと診断され治療計画について説明を受けたが、他の病院の医師にも話しを聞いてみたいと希望されるセカンドオピニオンに関することや心の悩みを聞いてほしいとき、患者さん自身が受けているがん治療について詳しくゆっくり説明を聞きたいなど、相談内容は多岐にわたります。就労に関する相談も少なくありません。

抗がん剤治療による仕事への影響が心配である場合、相談員が抗がん剤の副作用や副作用が出現する時期、どのようなコントロール方法があるかなどを説明することや患者会を紹介し、同じ経験を乗り越えた方のお話を聞くことで、生活のイメージをつけるなど、不安の軽減に導くことが可能です。また、働き盛りの患者さんは、がんであると告知をされても治療のことより、仕事をどうしようかと真っ先に考える方もいらっしゃいます。告知されたことと仕事を調整することへの不安でいっぱいになる方もいらっしゃいます。そのような時、相談員が患者さんの思いを傾聴し、医師から提示された情報を整理し、入院に必要な日数や退院後の生活を予測し、仕事をどのように調整するのかを一緒に考えることも可能です。

病気や治療の副作用による症状とともに就労する患者さんは、職場の方に迷惑をかけたくない、職場で肩身の狭い思いをしたくないという思いを抱く一方、経済基盤や自己実現のため就労継続を望んでいらっしゃる方もたくさんおられます。がんになってもできるだけ今までの生活を継続できるよう看護師は他職種と連携をとりながら患者さんをサポートしています。

※所属・役職は掲載時のものです。