ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年

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概要

同志社看護 第4巻2019年

に,新島や佐伯の医療・看護に対する志を受けつぎ,現代の多様化した看護ニーズに対応できる質の高い看護職者,すなわち,「高い倫理観,人に寄り添う姿勢」,「的確な判断力」,「高いコミュニケーション力や対人形成力」,「健康の保持増進,健康回復への理解力」,「他職種との連携」などに基づく看護実践力を備えた看護職者の育成を目指している。2)看護学研究科での教育研究本学における看護学研究科設立については,新島の看護教育に対する志,すなわち「・・・全其ノ病人ノ心ヲ思イヤリ真実ノ愛心ヲ以テ病人ノタメニスル人・・・」(新島襄,1983,p.113)の育成をバック・ボーンとして,その具現化とさらに深化させたいというおもい,そしてこれからの看護職者に求められる姿に対応できる高度な看護学教育・研究をできるだけ早期に実現したいという考えから,看護学部設置準備の段階から,学部の完成年度を待つことなく看護学研究科(修士課程)の設置を想定し,開設準備をすすめてきた。では,今なぜ,看護学研究科なのか,その社会的な背景を述べたい。現在,疾病構造の変化や少子超高齢社会の進展など保健・医療・福祉をめぐる状況は大きく変動している。中でも,保健・医療・福祉制度は,従来の疾病や傷害の治癒・回復を目指す「医療モデル」から,生活の質に焦点をあて,疾病や障がいがあっても,住み慣れた地域で自立して,その人らしく暮らすことを支える「生活モデル」に大きくシフトしようとしており,この「医療」「生活」両面での支援に対する役割機能を担っている看護職の質の向上が求められてきた。それに応えるように,この20年,全国に看護系大学・学部が急増してきた。看護学の学士課程では看護専門職になるために必要な基礎的知識や実践力を身につけ,様々な健康レベルにある対象者のニーズに対応し,保健・医療・福祉等に貢献できる豊かな人間性をもつ人材育成を目指しており,それを達成するために,各大学・学部では各々特色ある教育を展開している。あわせて,さらなる看護の質向上のための看護支援方法の開発や看護実践の質向上に寄与する看護学研究者・教育者の増員など,大学院での教育・研究の社会的ニーズが高まり,看護系大学院の数も年々増加している。また,国の方向としても,「新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-」[中央教育審議会,平成17(2005)年]の答申において,創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者等の養成,高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業人の養成,確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教員の養成,知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材養成の4点を大学院の機能であると示し,博士・修士学位などの目的等に応じて,各研究科・専攻の人材養成の目的を踏まえた教育課程の組織的展開の強化,すなわち大学院教育の実質化を方向づけた。そして,「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討報告」[文部科学省,平成23(2011)年]では,「教育研究者の養成の充実,高度専門職業人養成の質保証の推進」の提言がなされた。看護系大学院における人材養成においては,「看護学の学術研究を通じて社会に貢献できる研究者や教育者の養成,学士課程では養成困難な特定領域の高度専門職業人や,保健,医療,福祉等に携わる専門職の協働においてマネジメント能力を発揮できる人材の養成を目指す」との方針が示され,社会的ニーズや自大学院の教育資源に基づき,養成する人材像を一層明確化した上で,特色ある人材養成をすすめた。このように,保健・医療・福祉分野で活動する看護職者が,ますます高度化・専門化する社会的ニーズに対応するために,指導的役割を担い,さらに高度で専門的な実践力を持つ看護職者や研究者,教育者の育成が緊急の課題であると同時に,大学院での教育・研究の充実が推し進められてきた。こうした社会的な要請をふまえ,本学の看護学教育のこれからを展望するためには,学部教育のさらなる充実をはかりつつ,看護の指導的役割を担える人材育成を目指す看護学研究科(修士課程)の設置が必須,しかもできるだけ早く設置という流れとなった。そして,大学院の開設で,学部卒業直後のみならず保健・医療・福祉分野の現場で活躍する看護職者をも広く受け入れ,判断力や指導力,専門的知識と技術の向上・開発を目指す研究マインドをあわせ持った看護職者として看護実践や教育の場へ送り出すこと目指し,看護の発展に少しでも寄与したいと考えた。2