ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年

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概要

同志社看護 第4巻2019年

はCaution(用心)です。語り手の患者は傷ついていることが多いので,聞き手が質問などの介入を行うときは,用心深く気配りしながら近づかねばならない,ということです。ところが一転して7番目にはChallenge(挑戦)があげられています。これは用心深くあらねばならないが,時には踏み込む勇気も必要です。でないと停滞してぬかるみから抜けられません。例えば,先にお話しした,ぼくの患者さんに「なんで,来るの」と質問したときは,大きなChallengeでした。一歩間違えば,突き放されたと感じて,大きな問題になっていたかもしれません。でも,彼女の「死にたい物語」はそのとき停滞していたのです。十分用心はしてきましたが,停滞から二人とも抜けられなくなっていました。ブレイクスルーが必要だったのです。結果がうまくいったからいいものの,確かにかなり勇気の必要な場面でした。さて長々と話してきましたが,7つのCの話はお終いです。またぼくの講演もそろそろ持ち時間を越えようとしています。様々な切り口でナラティヴに辿り着き,医療場面でナラティヴが有効だという確信を持ち始めておりますが,有効な質問,ぼくはナラティヴ・クエッションと名付けておりますが,これをマスターするには,やはり日々の修練が大事だと思います。師匠のローナー先生もロンドンであちこちのグループで継続的にワークショップを開催しておられます。あるグループは2週に一度,他のグループは月に一度,2ヶ月に一度というグループもありました。日本でもナラティヴ・クエッションを広めようと最近,仲間とナラティヴ・インストラクター協会という組織を作りました。もし今回の講演でナラティヴ・クエッションに御興味を持って頂きましたら,是非ご入会いただき,一緒に日本流のナラティヴ・アプローチを造っていきませんか?長時間ご清聴ありがとうございました。参考文献中川晶(2010):ナラティヴ・ベイスト・メディシン.現代のエスプリ.515:121?131.中川晶(2017):ナラティヴ・アプローチ.日本保健医療行動科学会編.教科書講義と演習で学ぶ保健医療行動科学.70?73.:日本保健医療行動科学会.52