ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年
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同志社看護 第4巻2019年
臨床におけるナラティヴ実践のすすめそこから,川の流れ物語という彼女だけの世界に通じる常識が見つかりました。側でぼくと彼女の会話をもし,聞いている人が居たとしたら,禅問答のように訳の分からない会話だったに違いありません。でもサーキュラーな質問を続けることで,彼女の世界が理解出来て,ついにはリフレクシブな質問,つまり「ところで川ってなんで流れるんだっけ?」が出来たのでした。この質問は効果的で,難攻不落だった彼女のうつが軽減するきっかけになりました。同じような例を最近も経験しました。長い間,自殺という考えに取り憑かれた女性で,うちのクリニックにも数年通院してました。彼女は毎回「もう死にたい」「何で死んではいけないの?」と繰り返してました。常識的な答えでは問題は解決しませんでした。そこでぼくはリフレクシブな質問をしてみました「なんで,ここへやって来るの?」。ただ,それだけでしたが,彼女はしばらく黙り込んでしまいました。頭の中でぼくの質問に対する答えを探していたのだと思います。ここはクリニックでクリニックは病気を治すところ,なのに死にたいと言う自分が助かろうという行動,つまりクリニックに来ている。この矛盾にどう答えようかと答えを探していたのです。しばらく時間が経過して,おもむろに彼女が答えました。「生きていたくないけど,仕事が出来るようになりたい。だからここへ来てる」我々の常識からしたら,変な答えだし,答えにすらなってないのですが,彼女の理屈は彼女の世界では通用します。ぼくは「なるほど」と答えました。その後は少しづつ変化が起こり始めました。4つの質問は使いわけることが大事です。最初はリニアから入って,ストラテジックで解決すれば,それでいいし,駄目なとき初めて,こっちのスタンス,構えを変えるときが来ます,そしてサーキュラーで相手の世界の常識を探ります。そこで,問題が勝手に解決していく場合もあるし,そのうち有効なリフレクシブを出すことが出来ます。とはいえ,4つの質問の長所・短所を知っておくことも大事です。7つのCナラティヴで質問するときの,いわゆる会話するときの心得が「7つのC」です。(スライド9)。1番のConversation(会話)というのは,説得ではなくいつも行ったり来たりする対話になってる必要があるということです。それから2番目Curiosity,興味を持つ。相手の物語に興味を持って,その物語の筋書きに興味を持つということです。僕らは,話し手を分析するのではなく,物語そのものに興味を持つことです。3番目のCircularity(円環性)というのは,原因,結果の因果律に縛られるのではなく,事柄同士のつながりに意識を向けることです。我々は何事かが起こると,すぐにその原因は何だろうと考えます。しかし,この因果律に縛られ過ぎると,原因探しに終始してしまい,問題解決に至らないこともままあります。4つめはContext(文脈)です。物語の文脈に意識を向けていれば,これまでに分からなかったことが分かることが多いと考えられます。5番目はCo-creation(共同創作)です。物語の内容は語り手の中にあるのですが,聞き手がいて初めて物語は完成します。つまりは話し手は縦糸,聞き手は横糸で,物語という織物が出来ていくと例えられることは,このことを指しています。6番目51