ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年
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同志社看護 第4巻2019年
同志社看護Doshisha Kango Vol.4, pp.41-52, 2019-同志社女子大学大学院看護学研究科特別講義兼看護学部FD講習会(2018年6月11日)-臨床におけるナラティヴ実践のすすめNarrative approaches in clinical settings中川晶(なかがわ中之島クリニック院長、京都看護大学特任教授)Akira Nakagawaただいまご紹介いただきました中川です。医学部に入る前は農学部で生化学をやっており,大学院は中退して中学の教師を1年ほどやってました。なかなか自分の居場所が見つからず,医学部に入ってもなかなか卒後の進路が決まりませんでした。そのうち心療内科に興味が出てきました。心療内科というのは,1963年に九州大学の池見酉次郎教授が日本では初めてお作りになった診療科目です。現在,心療内科というと精神科出身の先生方が多いのですが心療内科という名前からも分かりますが,内科の一部門です。今でもそのつもりなのですが,精神科との境目が微妙になってきてます。精神科の先生方で開業してる方はよく心療内科をお使いになる傾向があります。それでは何でも心療内科かというとそうでもありません。病気でいうと統合失調症は専ら精神科でしょうか。一方,軽症のうつ病や不安症,パニック障害,そういう外来治療が中心になるような病気を扱うのは心療内科というのが一般的になってきてるような気がします。患者さんの方も,本格的な精神病は精神科,軽症のこころの病気は心療内科と思っている節があります。ぼくとしてはどちらでもいいのですが。とにかく全ての医療において,こころとからだを同時に診て行こうとする心療内科の立場が必要と考えております。ナラティヴ・ベイスト・メディスンの始まり~エビデンス・ベイスト・メディスン隆盛時代から~1991年,カナダのマクマスター大学のゴードン・ガイアット(Gordon Guyatt)がエビデンス・ベイスト・メディスン(EBM)を提唱したことになってますが,かれの師匠のデビッド・サケット(DavidSackett)が1970年代からこつこつEBMの概念を構築してました。この概念が出ると世界中の医療者がこぞって賛同したわけです。エビデンス(根拠)をベースにした医療といえば当然のことなのですが,それをきちんと言葉にしてくれたということで熱烈にこの概念が歓迎されました。ところがどうも患者さんのほうにあんまり受けがよくない。エビデンス・ベイストで,がん患者さんに対して,説明するとき例えば,5年生存率が30%と説明すると,患者さんのほうは「私は,その30%に入るのか,反対に70%の死亡に入るのか」と質問してくるわけです。エビデンス・ベイストからすれば「それは確率ですから,あなたがどちらに入るかは分からない」としか答えられないわけです。「あなたのがんの種類で,ステージがこうだから30%です」くらいは言えるかもしれませんが,患者さんにとっては,どうすれば30%に入れるのかが問題であって。なぜ自分はこんな病気になったのかが知りたいわけです。例えば肺癌のばあい,顕微鏡で扁平上皮癌と分かっても何故その癌になったかは説明し難い。煙草が原因ですと言うと患者さんの中には「いや,私,たばこ吸いません」という人もいる。「それでは副流煙が原因でしょう」とやると今度は「周りで誰もたばこ吸わへんのですけど」となると苦し紛れに「街歩いてるうちに煙草の煙を吸い込んだのでしょう」とここまでくるとこじつけもいいとこです。要するに,エビデンス・ベイストでは病気の真の原因については何も言えないということになります。確かに,症例を積み重ねていくことで,これまで,この癌,このステージだったら30%としか言えなかったのが,EBMが進むと,この状況の人は,32%生きられるという風になります。これは診断が正確に41