ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年
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同志社看護 第4巻2019年
認知症の人の睡眠障害への看護支援に関する文献検討ントロール群(飯田,2002),1件(堤・小林・涌井他,2011)はベースラインを設定し介入後と比較していた。対象者の年齢は,国内の方が高齢であったため,調査項目の厳選や簡便な調査方法が求められる。対象者数は,実態調査,介入研究ともに国内外ほぼ同数であった。調査方法において,海外では質問項目の属性に人種などの文化的背景が含まれていることや,睡眠測定や質問紙調査に加えてインタビューの実施が特徴的であった。睡眠測定の方法は,2000年代当初は睡眠ポリグラフのみで専門的な知識と技術が必要であったが,機器の簡易化がすすみ対象者にも負担が少ないものに変化してきている。国内と海外を比較すると測定機器,測定期間,主観的評価指標および主観的評価指標の用い方に相違点は認められなかった。看護学分野の研究においては,認知症の人に限らず様々な対象者に客観的又は主観的な測定方法が採用されているが,効率的にデータを収集し,信頼性の高い睡眠測定方法の採用が課題である(谷田・木村,2009)。2.看護支援プログラムの内容認知症の人の睡眠障害には非薬物療法が優先されるが(三島,2010),海外の文献レビューでは,睡眠障害に対する非薬物療法として体内時計を調整する高照度療法,リラクゼーションを目的とした代替療法,活動プログラムなどが非常に幅広く実施されていた(Alexndra M. de O, Marcia R, Patricia C. H. deMello, et al., 2015)。中でも代替療法の種類が豊富で音楽療法やタッチ療法等が含まれていた。今回の文献検討結果では高照度療法は該当がなく活動プログラムに限られていた。今回の文献検討から看護支援に不可欠なプログラムは,1同調因子を意識した介入,2生活に密着した(生活習慣の詳細を把握)短時間の個別ケア実践,3介護者への睡眠健康教育と予防的介入に集約された。まず,一つ目の同調因子を意識した介入の可能性について,サーカディアンリズムのメカニズムを理解した上で,科学的根拠に基づく調整因子を活用すれば生活リズム障害が改善する可能性(田中,2013a;田中,2013b;田中,2013c)を再確認できた。日中のアクティビティ(飯田,2001;堤・小林・涌井他,2011)は,社会活動,社会的接触等の社会的同調因子への働きかけであるが,同時に加齢とともに狭まった体温振幅にめりはりをもたらす効果も期待できる。また,就寝前に床上で過ごす時間や消灯時間が,睡眠時間の短さや中途覚醒回数の多さと関連するため(小西・西田,2015),就床時間帯の配慮,夜間照明の調整など暗闇な環境下で分泌されるメラトニンリズムのしくみ(生理的同調因子)を利用した支援につながると考えられる。生活の場と照度との関連については,施設入所中の睡眠障害のある認知症の人の場合,一日の大半を照度の低い場所で過ごすという報告があり(萩野,2006),睡眠覚醒リズムを改善するためには,午前中に日光を浴び,夕方は照度を落とす等メリハリのある生活が明確な根拠に基づく看護支援となりうる。さらに,睡眠状態の季節差の検討(笠井・小林・川島,2016b)においても,遅寝となる夏季は,体熱の放散を促進できるよう寝具や室温を調整して寝付きやすい環境にする工夫や中途覚醒を軽減する衣類・寝具の選択は体温リズムとあわせて考慮すると効果が見込め,生理的同調因子を生かした看護支援として活用ができる。次に,2つ目の生活に密着した短時間個別ケアについて,国内外の調査結果から,認知症の人の不眠の原因が多様かつ睡眠実態の個別性が大きく,介入には個々の年代,日常生活行動レベルや生活習慣,生活リズムにあわせたケアの計画立案が必要(角濱,2002;高山・洲崎・有吉,2010)であることを確認した。但し,これらを在宅で実現するためにはマンパワーや時間的・経済的側面の課題から決して容易でなく,文献検討結果のように施設内においても予備調査にとどまっていることが伺えた。実際の介入計画は15分程度の散歩やアクティビティ等短時間で生活の中に組み込めるプログラム(SuzanM. McCurry, David M. L, Kenneth C. Pike, et al.,2009)とし,対象を選定する基準は性別や既往歴,体格および認知機能や日常生活行動レベルを明確に規定し(Jennifer L. P, Nancy W. Glunn, Christopher A.Taylor,et al., 2008),個々の理解度や態度,性格にあわせた介入が求められていた(Jane V. D., Fion T., ANiroshan S., 2014)。これらを高齢者一人一人の身体活動レベル,認知症の程度や居住環境内での実現可能性に併せて丁寧に提供することで睡眠障害の改善が見込まれる。最後に3つ目の介護者への睡眠健康教育について言及する。介護者の中途覚醒の多さや早朝起床など睡眠状態の悪化や抑うつ状態については結果で述べたとおりである。在宅で療養する認知症の人の施設入所を回避し,安定した介護を継続するためには高齢者の睡眠問題が顕在化する前からの介護者への睡眠健康教育37