ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年

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概要

同志社看護 第4巻2019年

日中に睡眠時間を確保し不規則かつ分断された睡眠覚醒パターン(睡眠維持の障害)であり(三島,2010),この状態が認知症の人のみならず介護者の心身の負担,疲弊を増悪させることが明らかになっている。認知症の中でもアルツハイマー型認知症の人の睡眠障害の原因は,主に生物時計の器質的障害で(肥田・三島,2009),認知症のない高齢者に比べるとメラトニン分泌量の振幅低下が認められる(伊藤,2009,p.199)。さらに,加齢に伴う機能低下や複数疾患の罹患,内服薬の影響等が重複し,稀に周期性四肢運動障害等を合併する。このように原因が多様な認知症の人の不規則型睡眠覚醒パターンには,薬物療法ではなく非薬物療法が優先される(三島,2010,p.111)。睡眠は,サーカディアンリズム(眠るタイミングを決定する約1日の周期リズム,体温,自律系,メラトニン等)とホメオスタシス(眠るエネルギーを蓄積し疲労を解消する仕組み)の二つの機構から成り立っており,この仕組みをうまく利用すると,認知症の人においても睡眠障害の緩和が期待できる(田中,2013c)。具体的には,生活リズムを整える生理的同調因子(光・体温リズム)への働きかけ(療養環境における光の暴露)と,社会的同調因子(社会的接触,社会参加や日中活動量の確保,感覚受容器の機能低下への働きかけ,規則正しい食事のリズム)への介入が調整手段となりうる(大渕・伊藤,2009)。先行研究では,長期ケア施設に勤務する認知症ケアの専門家を対象とした生活障害(食事・排泄・清潔・活動と休息)への具体的かつ効果的なケアは詳細に報告されている一方,在宅で療養する認知症の人へのケアの研究が不足している(朝田・諏訪,2014)。本報告の目的は,国内外の先行研究から在宅療養する認知症の人の睡眠障害に対する看護支援プログラムの作成にむけて,睡眠実態を把握するための睡眠測定方法や看護支援について明らかにすることである。Ⅱ研究方法1.文献検索の方法と手順在宅療養する認知症の人の睡眠障害への看護について検討するために,「認知症(痴呆症)(dementia)」,「高齢者(elderly)」,「睡眠障害(insomnia)」,「ケア(care)」,「看護(Nursing)」,「在宅(home-care)」をキーワードに2000年以降の文献を検索した。国内文献は医学中央雑誌Web版およびCiNii Articlesを用いて会議録と商業雑誌以外の看護系論文を検索した。全てのキーワードを含む文献は該当がなく「在宅」を除くと20文献が抽出された。さらに,学術論文で要約がある認知症の人の睡眠障害を扱う本文ありの8文献とハンドサーチ2件の計10件を分析対象とした(検索日2018.6.21.)(表1)。海外文献は,PubMedを用いて検索した(検索日2017.4.10.および2018.6.21.)。抽出された49文献は,「home-care」をkey wordに含んだが,大半が施設入所者を対象としていた。このうち薬物療法の効果に関するもの,文献レビューを除き施設入所高齢者と在宅療養者又は地域在住の健康な又は虚弱な高齢者を対象とする論文(家族介護者への介入を含む)で目的に合致した10件を分析対象とした(表2)。計20件の分析方法は,国内外にわけてマトリックス表を作成し目的や対象者の選定基準,対象者数,調査内容・調査期間,介入方法と成果等を記した後,睡眠障害への看護支援策の立案に活用する目的で分析した。2.用語の定義認知症の人の睡眠障害は,器質的障害であり昼夜を問わず生じる24時間の生活リズム障害である。本研究では睡眠障害と不眠を同義語とし,生活リズム障害を伴うとした。睡眠障害(不眠)の定義:不眠症状が持続的に続き,その結果何らかの日中の障害がもたらされること。睡眠障害国際分類3版(ICSD3 rd:InternationalClassification of Sleep Disorders-3)による日中の機能障害とは,1.疲労または倦怠感,2.集中力,記憶力の低下,3.社会生活上,職業生活上の支障,学業の低下,4.気分の障害または焦燥感,5.日中の眠気,6.やる気,気力,自発性の減退,7.職場や運転中の過失や事故,8.緊張,頭痛又は胃腸症状,9.睡眠についての心配・悩みである。このうち最低一つ該当する状態である(亀井,2016,p.25;AmericanAcademy of Sleep Medicine,2014)。30