ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年

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概要

同志社看護 第4巻2019年

同志社看護Doshisha Kango Vol.4, pp.29-39, 2019-資料-認知症の人の睡眠障害への看護支援に関する文献検討Literature Review on Nursing for Insomnia with dementia elderly小松光代1)1,三橋美和)1,眞鍋えみ子)1,山縣恵美)1,杉原百合子)1),岡山寧子Mitsuyo Komatsu,Miwa Mitsuhashi,Emiko Manabe,Emi Yamagata,Yuriko Sugihara,Yasuko Okayama抄録目的:本報告の目的は,在宅療養する認知症の人の睡眠障害に対する看護支援プログラムの作成にむけて,国内外における先行研究から,睡眠の測定や看護支援の方法を明らかにすることである。方法:国内文献の検索は,医学中央雑誌Web版およびCiNiiArticlesを用いて,「認知症(痴呆症)」「高齢者」「睡眠障害」「ケア」「看護」「在宅」をキーワードに設定した。海外文献は,PubMedを用い,キーワードを「dementia」「elderly」「insomnia」「care」「home-care」「nursing」とした。該当文献から会議録や商業誌を除き,認知症の人の睡眠障害に関するものを国内8件,ハンドサーチ2件を加え,海外10件,合計20件を選定した。結果:国内外の先行研究のフィールドは高齢者施設が多く在宅療養はわずかであった。介入研究は少なく大半は実態調査であった。対象者の平均年齢は国内の方が高い傾向で,睡眠測定は客観的測定指標と主観的評価指標を併用するかいずれかを採用する方法であった。調査で使用する睡眠測定機器は年々変化し,対象者の負担や精度を考慮して選定されていた。認知症の人への睡眠障害の看護支援は,対象者の既往歴や性差,ADLや認知機能障害の程度等を配慮し,日中の活動性や社会的接触等の同調因子を意識した個別的な働きかけに効果が認められた。高齢者のみならず介護者にも睡眠障害を認め,介護負担が大きい介護者への支援も必要であった。考察:睡眠測定の方法は,最近10年の間に簡易で負担が考慮され,精度の高い機器が使用さるようになった。睡眠障害への看護支援プログラムでは,対象者の選定基準を明確にし,日中の活動性や社会的同調因子への働きかけが実施されていた。プログラムの作成に際し日常生活行動や生活習慣,生活環境等の個別的な配慮をしつつ根拠に基づく同調因子への働きかけが有効であることが示唆された。高齢者とともに介護負担の大きい家族への予防的な睡眠健康教育の実施が必要であった。キーワード:認知症,高齢者,睡眠障害,看護,ケア,文献検討Ⅰはじめに2025年推計によれば,我が国の認知症患者数は700万人を超え65歳以上の5人に1人の割合になると言われている(内閣府,2015)。近年の研究では,認知症の原因となる髄液中のアミロイドβが睡眠後に低下することや動物実験レベルで徐波睡眠と細胞外アミロイドβ濃度の低下との関連が指摘される等(鈴木・金野・内山,2016,p.15),睡眠不足が認知症の発症リスクを高め認知症の進行に伴う症状の増悪をもたらすことが報告されている(三島,2013,p.327)。在宅療養する認知症の人の夜間不眠は,体調不良や心理・行動症状の出現のみならず介護負担の蓄積や在宅介護の破綻を招き施設入所へと至る最大の要因になることは周知のとおりである(川端・三島,2014,p.187)。認知症の人を24時間観察すると,1)同志社女子大学看護学部Faculty of Nursing,Doshisha Woman?s College of Liberal Arts29