ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年
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同志社看護 第4巻2019年
においても,「保健師は,保健サービス等の総合的な提供や,地域における保健,医療,福祉,介護等の包括的なシステムやネットワークの構築とその具体的な運用において主要な役割を果たす」こととされ,そのための保健師の調整機能の強化が謳われている。さらに近年,地域包括ケアシステムをキーワードとして,高齢者,難病,医療依存度の高い小児などを対象とした,関係機関,関係職種とのネットワーク形成が重要視されている。しかし,この地域ケアシステム構築やネットワーク形成にかかる保健師独自の技術は十分明らかになっておらず,保健師個々の経験や能力によるところが大きいのが現状である。その理由として,保健師が行うネットワーク形成技術は,他の看護技術と異なり,コミュニケーションや調整機能といった,可視化することの難しい技術であることから,保健師個々の経験や能力によってすすめられてきたことが考えられる。そのため,すべての保健師が保健師の専門機能としてネットワークを形成していくためには,ネットワーク形成にかかるプロセスと保健師の役割を明確にすることが重要であると考える。いつ,どこで,誰と,どのような調整を行ったのかを明らかにすることによって,保健師の行うネットワーク形成技術習得のための基礎的資料となり得ると考える。なお,地域ケアシステム構築とネットワーク形成は,類似の概念と考えられるが,本稿では,地域ケアシステムに先立って関係機関,関係職種とのネットワークが形成され,その後そのネットワークが地域全体に拡大されて誰もが利用できる地域ケアシステムに発展すると考え,まずはネットワーク形成のプロセスと保健師の役割を明らかにしたいと考える。そこで本研究では,これまでシステムを形成した実績のある保健師を対象にインタビュー調査を行い,保健師の行うネットワーク形成のプロセスと保健師の役割を明らかにすることを目的とする。Ⅱ.研究方法研究デザインは,半構成的インタビューデータを用いて帰納的に整理・統合した,質的記述的研究である。1.データ収集方法1)対象インタビュー協力者は,A県の保健主管部局から地域ケアシステム形成の実績のある保健所保健師を紹介してもらい,内諾を得たうえで研究者が職場に赴き,研究目的と方法について説明を行い,同意を得た担当保健師および直属の管理職保健師である。対象の選定にあたっては,「システムを形成した実績のある保健所保健師」の紹介を依頼し,適任者については一任した。紹介された保健師は,重度の障がいを持つ小児の在宅療養移行支援を行った業務担当保健師とその上司である管理職保健師の2名であった。いずれも女性で,年齢は,業務担当保健師40歳代前半(保健師経験年数18年),管理職保健師50歳代後半(同経験年数35年)である。インタビューは,業務担当保健師と管理職保健師の2名に行ったが,その理由は,保健所として多機関の調整を行うためには,業務担当保健師と管理職保健師の両方の役割があると考えられるためである。また,対象者から同時にインタビューを受ける方がよいとの意見が出され,双方が双方の発言を補完する形で2人同時に行った。2)インタビュー内容半構成的インタビューの内容は,1対象者の所属する地域の概要,2形成したシステムの概要,3システム形成のプロセス,4システム形成のために調整した関係機関と関係職種および内容,5システム形成の成果と課題,6苦労した点であり,インタビュー項目に沿って行った。インタビュー内容は,対象者の同意を得てICレコーダーに録音し,個人名が特定されないように逐語録を作成した後,対象者2名に送って確認してもらった内容をデータとした。インタビューは,2016年8月に約90分行った。3)分析方法内容の分析は以下の手順で行った。(1)面接した内容を,意味のわかる最小の単位である文章に分解し,重複を削除して196の文章を抽出した。(2)それらの文章を,ネットワーク形成の時系列に沿って整理,統合し,類似した意味内容をもつ文章を集めてサブカテゴリーとした。(3)さらに,サブカテゴリーを統合して抽象度を高めたものをカテゴリーとした。(4)最後に,それぞれのカテゴリーの関連性を統合して,大カテゴリーを抽出した。データの分析にあたっては,主たる研究者が分類しまとめた後,共同研究者と検討し客観性に努めた。20