ブックタイトル同志社看護 第4巻2019年
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同志社看護 第4巻2019年
抄録目的:手術を受ける肺がん患者(肺切除患者)の効果的な周手術期看護援助の示唆を得るために,入院前から退院後1週間までの不安・抑うつ状態および健康関連QOLの推移を明らかにすることである。方法:肺切除患者32名を対象に,HADS日本語版とSF-8を用いた自記式質問紙調査を実施した。データ収集は,入院前術前検査受診時(T1),入院日(T2),退院決定時(T3),退院1週間後の初回外来受診時(T4)に実施した。分析は,繰り返しのある一要因の分散分析を行った。結果:対象者は,男性20名(62.5%),女性12名(37.5%)で,平均年齢66.8±11.9歳であった。不安得点はT1:5.4点,T2:5.8点,T3:5.1点,T4:4.9点であり,時間の主効果はなかった(F=0.779,p=0.470)。抑うつ得点はT1:5.7点,T2:7.0点,T3:7.0点,T4:7.2点であり,時間の主効果はなかった(F=2.123,p=0.119)。SF-8では,PFはT1:49.3点,T2:49.8点,T4:43.9点(F=10.954,p<0.001),RPはT1:49.7点,T2:49.9点,T4:41.9点(F=15.534,p<0.001),BPはT1:58.0点,T2:56.9点,T4:44.1点(F=47.216,p<0.001),SFはT1:50.3点,T2:50.7点,T4:45.1点(F=10.416,p<0.001),REはT1:50.3点,T2:50.3点,T4:46.6点(F=6.150,p=0.008)であり,時間の主効果があった。GHはT1:49.9点,T2:49.0点,T4:47.7点,VTはT1:50.7点,T2:50.4点,T4:47.6点,MHはT1:48.5点,T2:47.5点,T4:49.9点であり,いずれも時間の主効果はなかった。考察:肺切除患者の周手術期の不安・抑うつを低減し,健康関連QOLを高めるためには,周手術期管理チームが入院前から患者に対して,精神的支援と退院後の疼痛や身体機能の低下を見据えた介入を行っていくことが必要である。キーワード:肺がん,周手術期看護,健康関連QOL,不安・抑うつⅠ.緒言肺がんは罹患率,死亡率ともに高く一般的に予後不良とされている。しかし,早期に発見され手術適応となれば治癒が期待でき,社会復帰の可能性は高くなる。現在,肺がんは早期がんに手術が適応されているが,進行がんに対しても化学療法と放射線治療を組み合わせた手術療法が行われており,手術件数は年々増加している(Committee for Scientific Affairs, 2016)。平成26年患者調査(総務省統計局,2014)によると,手術別の在院日数は,開胸手術は術前5.7日,術後21.0日,胸腔鏡手術は術前3.9日,術後10.2日であり,年々短縮傾向にある。実際には,手術を受ける肺がん患者は手術前日に入院し,手術後5~7日で退院となることが多い。近年では胸腔鏡下などの低侵襲手術が増加しており(Committee for Scientific Affairs,2016),今後さらに入院期間が短縮していくことが予測される。入院期間の短縮は,肺がん患者の手術や術後の療養生活に適応するための看護支援にかける時間を削減した。患者は外来でがんであることが告知され手術療法を意思決定した後,入院までの手術待機期間を自宅で過ごすため,容易に診療科外来の看護師とかかわることは難しい状況におかれる。そのため,患者は手術やがんの転移,予後に対する様々な不安を抱えながら,精神的に不安定な状態で手術までの期間を過ごしている。また,術後においては,全身状態が安定し肺切除後合併症のリスクが低減すれば早期退院となる。肺がん術後患者は,創部痛や呼吸機能低下から日常生活に必要な活動性が退院後すぐに回復するわけではなく,健康関連QOLが低下していることが明らかになっている(Heuker , Lengele, Delecluse, et al., 2011)。病棟看護管理者を対象とした周手術期看護の課題に関する全国調査では,術前の患者の心理的準備や術後のセルフケアの不十分さが認識されており(高島・五木田,2009),入院期間が短縮されても変わることのない患者が抱く手術や術後の療養生活に対する不安への個別的ケアが課題となっている。在院日数短縮に伴う術前看護の取り組みとして,クリティカルパスの使用や術前オリエンテーションを外来で実施する方法が導入されている。また,術後看護としては,専門外来部門との連携や多職種連携,地域連携といった外来機能の強化が実施されている。しかし,7:1看護に伴い外来の人員が削減されたこと,外来には常勤者が少ないことが要因となり,約8割の外来看護管理者は忙しさが増したと認識している(高島・村田・渡邉,2010)。つまり,限られた時間とマンパワーで,術前術後の身体的な支援にとどまらず,患者の効果的な心理的支援を行っていくことが,現在の周手術期看護には必要である。手術を受ける肺がん患者の心理については,不安や抑うつ,QOLの視点から多く検討されている。それら8