ブックタイトル同志社看護 第3巻

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概要

同志社看護 第3巻

腰部脊柱管狭窄症患者の周手術期におけるQOL及び心理の推移井,2015,pp.68-75)した報告がみられた。一方,手術に関連した不安や抑うつの研究では,手術直前の不安と対処(大口,2014,pp.61-64),手術前の不安に及ぼす影響(櫻井・井上・竹谷,2014,pp.7-10)がみられた。しかし,在院期間の短縮に伴い,術前指導が実施されている入院前から,退院指導の内容が最も反映されると思われる退院後1ヶ月のLSS患者の心理的な推移を報告したものはない。本研究では,LSS患者の周手術期における患者の身体的・心理的・社会的準備性を高めるための看護援助の示唆を得るために,入院前から退院後1ヶ月の健康関連QOLおよび不安・抑うつ状態の推移を明らかにすることを目的とする。Ⅱ.方法1.研究デザイン質問紙法による縦断的調査研究である。2.用語の定義健康関連QOL:年齢・病気・治療に限定されない包括的な健康概念を測定し,定量化したもの(福原,2004,pp.13-20)。不安:侵入的で不快な不安思考が,患者の集中力・意思決定・睡眠・社会機能に多大な影響をおよぼしている状態(Stark・House,2000,pp.1261-1268)。抑うつ:憂鬱な気分沈滞があり,通常なら楽しいことにも興味が持てず楽しめない症状が持続する状態。周手術期:手術療法を選択した患者が,術前・術中・術後を経て退院し,家庭・社会復帰するまでの一連のプロセス(竹内,2012,p.4)。3.研究対象者研究施設は,A県にあるB大学医学部附属病院の整形外科外来を受診している手術予定の腰部脊柱管狭窄症を有する患者であった。B病院は急性期医療を担う特定機能病院であり,平成23年度の脊椎手術件数は約120件であった。研究対象者の選定条件は,全身麻酔下での脊椎手術が予定されている成人患者で,認知機能に問題はなく,日常生活動作に全介助を要しないとした。4.調査期間データ収集期間は,平成23年6月から平成24年12月であった。5.データ収集方法選定条件を満たす患者について整形外科診療担当医に選定してもらい,対象患者に研究協力を依頼することを外来看護師に伝え,外来で患者の紹介を得た。データは入院前,入院後,退院前,退院後初回外来受診時の4時点で自記式質問紙調査を実施した。1入院1~2週間前(以下,入院前):対象者は手術意思決定後で手術を待機している時期である。整形外科外来の待合室の空き部屋で看護師免許を持つ調査員(以下調査員)が研究の趣旨について文書と口頭で,研究参加を断っても,あるいは途中で辞退しても診療や看護に影響しないことを説明した。研究協力への同意が得られた患者を対象に,同意書の署名を得た後,質問紙票を配布し,記入された質問紙票をその場で回収した。2入院後1~3日以内(以下,入院後):対象者は手術前であり,術前オリエンテーションを受ける時期である。調査員が病棟で質問紙票を配布し,記入された質問紙票をその場で回収した。3退院前1~3日以内(以下,退院前):対象者は手術後であり,退院後の療養指導を受ける時期である。主治医より退院許可について説明され,対象者が退院に同意した後である。調査員が質問紙票を配布し,記入された質問紙票をその場で回収した。4退院後初回外来受診時(以下,退院後1ヶ月):対象者は退院後に初めて患肢の状態の診察を受ける時期である。整形外科外来の待合室の空き部屋において,調査員が質問紙票を配布し,記入された質問紙票をその場で回収した。6.調査内容質問紙票は,「36-Item Short-Form Health Survey(以下,SF-36)日本語版」と「Hospital Anxiety andDepression Scale(以下,HADS)日本語版」から構成した。また,患者の基本情報フェイスシートを作成し,年齢,性別,術前期間,術後期間,退院先,仕事,日常生活動作,手術経験,術式,術前装具装着,家族構成について研究協力者の看護師より情報を得た。1)HADS日本語版HADSは,入院前,入院後,退院前,退院後1ヶ月の4時点で調査した。HADS(Zigmond・Snaith,1983,pp.361-370)は自記式の不安・抑うつテストで,身体症状を持つ一般外来患者の不安と抑うつ状態を評価するために開発された尺度である。HADSは,不安と抑うつを各7項目から測定3