ブックタイトル同志社看護 第3巻
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同志社看護 第3巻
抄録目的:腰部脊柱管狭窄症で手術を受ける患者(LSS患者)の周手術期看護援助の示唆を得るために,入院前から退院後1ヶ月のQOLおよび不安・抑うつ状態の推移を明らかにすることである。方法:LSS患者31名を対象に,SF-36,HADSを用いた自記式質問紙調査を実施した。データ収集は,入院前1~2週間:T1,入院後1~3日以内:T2,退院前1~3日以内:T3,退院後1ヶ月:T4に実施した。分析は,繰り返しのある一要因の分散分析を行った。結果:対象者は,男性17名(54.8%),女性14名(45.2%),平均年齢70.9±9.7歳であった。不安得点はT1:6.1点,T2:6.2点,T3:4.8点,T4:5.0点であり,時間の主効果があった(F=3.29,p=0.024)。抑うつ得点はT1:6.7点,T2:6.8点,T3:6.0点,T4:7.0点であり,時間の主効果はなかった。SF-36では,PFはT1:13.6点,T2:14.2点,T4:15.9点,RPはT1:22.7点,T2:23.5点,T4:20.4点,GHはT1:43.7点,T2:44.6点,T4:45.3点,VTはT1:42.4点,T2:42.7点,T4:46.1点,SFは,T1:34.3点,T2:31.6点,T4:34.8点,REはT1:31.4点,T2:34.3点,T4:29.4点であり,いずれも時間の主効果はなかった。また,BPはT1:32.1点,T2:33.7点,T4:44.1点で,時間の主効果があり(F=19.93,p<0.001),MHはT1:43.6点,T2:40.9点,T4:46.0点で,時間の主効果があった(F=4.24,p=0.019)。考察:LSS患者の周手術期の不安・抑うつを低減し,健康関連QOLを高めるには,入院前からの準備教育,病院から在宅への円滑な移行のための退院支援の必要性が示唆された。キーワード:健康関連QOL,不安・抑うつ,周手術期看護,腰部脊柱管狭窄症Ⅰ.緒言高齢化に伴い運動器の障害によって,歩行や立ち座りなどの移動にかかわる機能低下をきたした状態のロコモティブシンドロームの代表的な疾患として腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Spinal Stenosis,以下LSS)がある(飯田,2016,p.26)。国内における40歳以上の8万人を対象にした調査においてLSSの患者数は推定240万人ともいわれている(紺野,2010,p.56)。LSSは,馬尾神経障害や膀胱直腸障害により日常生活に支障をきたすと手術適応となり(宮腰・飯田・南出,2015,pp.1-18),高齢化とともに手術件数も年々増加傾向にある。一方,LSSで手術を受ける患者(以下,LSS患者)の在院日数が短縮されている。平成26年度患者調査における脊椎手術の術前平均在院日数は5.3日,術後平均在院日数は23.2日である(総務省統計局,2014)。また,手術前日や手術前々日の入院が多くなってきている(竹内,2012,p.10)。LSS患者は,手術部の安静を保持するため,体幹捻転,体幹の前屈,後屈などの動きを制限する禁忌肢位が生じ,体幹装具を装着する場合が多い。そこでLSS患者には,日常生活において禁忌肢位をとらない行動変容が求められる。従来,看護師は,患者の行動変容に対して術前期間にオリエンテーションや術前訓練を提供し,術後の患者の日常生活動作に対する行動変容の準備性を高めるケアを提供してきた。しかし,在院期間の短縮は,術前指導,術前訓練および術前オリエンテーション期間の削減につながっている。そのため,術前患者情報の収集や入院オリエンテーションは入院前の外来で実施され,入院後の看護業務の時間短縮につながっているが,術前訓練などの実施状況は低いと報告されている(瀬戸・三橋,2013,pp.106-108)。また,手術の直前の情報提供は,患者の不安が強く学習には不適切な時期(Haines・Viellion,1990,pp.53-57)であり,与えられた情報を忘れやすい傾向にする(Levesque・Grenier・Kerouac,1984,pp.227-236)といわれている。一方,在院期間の短縮は,退院後の療養指導の期間の削減にもつながっている。そのため,セルフケア不足のまま退院する患者の増加に対し,セルフケア支援のための効果的な介入が課題といわれている(高島・村田・渡邉,2010,p.236)。また,術後の手術侵襲からの身体的な回復においてMooreは,筋力回復まで術後2~5週間要すると唱えている(鎌倉・深田,2008,p.2)。このように,在院期間短縮に伴い,術後に行動変容が余儀なくされるLSS患者は,心理的に不安定な時期に術前指導を受け,身体的に十分回復していない時期に退院指導を受けていることがわかる。LSS患者の心理については,QOLの視点,不安や抑うつから検討がされている。QOLの視点では,国民標準値と比較できる36-Item Short-Form HealthSurvey(SF-36)で測定した研究が散見された。そのうち,手術に関連した研究では,術前から退院後の経時的変化(北浜・花北・深尾,2007,pp.107-114:大谷・石田・宮城島,2013,pp.19-24),手術療法と保存療法を術前と退院後で比較(柏木・横山,2012,pp.34-40:武2