ブックタイトル同志社看護 第3巻

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概要

同志社看護 第3巻

臨床の画像を通して観察するという体験を通して,学生自身が,自分は何を観察し,どのようなことに気づき,援助を導き出しているのかを理解する必要がある。その上で学生個々の成長にあわせて,教員とともに何が観察できており,そこから何を考える必要があるのか,必要な知識・技術・対処方法を確認する必要がある。それらを積み重ねることで学生自身の経験を増やすことにつながり,観察した内容からアセスメントし援助を行うという思考過程が強化されると考える。4.本研究の限界本研究は,1大学の5名という少数の結果であり,また,本研究で使用した視線計測装置を用いた研究が少ないことから,視線計測の測定時間や視線分析などの研究方法が不十分である。Ⅴ.結論看護学生の患者観察の認知プロセスを視覚計測と画像を見て「気づいたこと」「その情報から考えられること」「必要な看護援助」の記述内容を分析した結果,以下のことが明らかとなった。視線計測では,注視時間,注視回数ともに点滴領域が最も多く,次いで酸素・吸引領域であった。視線軌跡のパターンは,初めに顔を見て,全体の領域を一通り確認したのち,点滴,酸素・吸引など必要と考える観察領域を1つ1つ丁寧に見ていた。5名のうち4名がはじめに顔をみていた。全員が2秒以上停留していた観察領域は,点滴と酸素・吸引領域であった。記述内容では,点滴に関する記述は,4名の学生が「点滴をしている」を気づいたこととして記述し,「薬などを体内に入れている」「点滴の合併症のリスクがある」「針が抜けていない,出血していないかみる」と考え,「輸液管理」「確実な点滴管理とルートの確保」を必要な援助と記述していた。焦点化された画像を観察する視線とアンケート調査による併用調査の結果を関連させて分析することにより思考過程を捉えることが可能であると考える。臨床の画像を通して観察するという機会を増やし,学生個々の成長にあわせ,教員とともに必要な知識・技術・対処方法を確認する経験を増やすことがアセスメント力の強化につながると考える。文献藤内美保,宮腰有紀子(2005):看護師の臨床判断に関する文献的研究-臨床判断の要素および熟練度の特徴.日本職業・災害医学会誌,53(4):213-219.林静子,丸岡直子,寺井梨恵子(2015):病室観察時における看護師の眼球運動の傾向.石川看護雑誌.12:13-23.五十嵐真理,田中千晶,住吉智子(2014):看護学生の危険予知に関する研究―小児臨床写真を用いた視線運動と観察による分析―.新潟大学保健学雑誌,11(1):17-24.笠井美香子,定方美恵子,井越寿美子他(2011):看護観察場面における看護師の視線運動臨床経験の差異による比較.日本看護学会論文集:看護管理.41:177-180.河合千恵子,森本紀巳子,井形英代他(1998):看護者の観察能力と視覚情報の取り組みの特性.QualityNursing.4(12):24-30.西方真弓,牧岡鯨太,中澤紀代子他(2012):看護師の視線運動と観察の意図―新人看護師と臨床経験豊富な看護師との比較―.新潟大学医学部保健学科紀要.1 0(2):1 1 - 2 1.大黒理恵,斉藤やよい(2013):眼球運動と危険認識からみた看護大学4年生の危険予知の特徴.医学と生物学.157(6):947-953.大野健彦(2002):視線から何がわかるか-視線測定に基づく高次認知処理の解明-.Cognitive Studies.9(4):565-579.Peggy L.Chinn,Maeona K.Kramer(2004)/川原由香里監訳(2007),看護学の総合的な知の構築にむけて(第6版).12-78.東京:エルゼビア・ジャパン佐藤美紀,大津廣子,曽田陽子他(2011):看護師と看護学生の静脈採血時の視線軌跡の違い.愛知県立大学看護学部紀要.17(7):7-14.横井達枝,箕浦哲嗣,大津廣子(2014):危険場面における看護学生と熟練看護師の注視の比較.日本看護技術学会誌.13(2):132-139.利益相反:本研究における利益相反は存在しない20