ブックタイトル同志社看護 第3巻
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同志社看護 第3巻
看護学生の観察時のアセスメント力を視覚情報から可視化する試み顔領域は,患者の表情や顔色に関する情報を得ることができ,さらに患者とコミュニケーションをとり,関係を成立させるときにも必要となる項目であると述べている。今回のベッドサイドの静止画像でも,他の研究と同様に看護師の経験の長さにかかわらず,共通して顔領域を注視すること,また顔領域を注視することにより顔や酸素の投与状況などを観察することができていたのではないかと推測する。一方,ナースコールは初回観察期待領域到達時間が平均15.3秒と遅かったが,全員が注視していた。河合らの研究では臨床経験6ヶ月にナースコールの非注視率が大幅に減少したと述べられており,ナースコール領域は,患者が看護師を呼ぶという臨床において重要な役割をしているものであり,今回の対象学生もナースコールが重要な観察点であることを早期に修得していたと考える。2.画像を観察した後の看護学生のアセスメント力視線計測後の学生の記述内容について,最もよく注視していた点滴と酸素吸入について述べる。点滴領域の記述では,気づいたこととして4名の学生が「点滴をしている」と記述していた。また考えられることとして1名は「薬を体内に入れている」ことから「点滴の管理」を必要な援助を記述し,後の2名は「点滴の合併症リスクがある,針が抜けていないか,出血していないかを見る」ことから「点滴管理,確実な点滴の管理とルートの確保」を必要な援助として記述していた。酸素吸入領域の記述では,気づいたこととして全員が「酸素吸入している」と記述していた。また考えられることとして3名が酸素を必要な疾患や状態である,1名は酸素がいきとどいているかと考えていた。必要な援助としては酸素量・設定・濃度等の酸素の管理と呼吸音聴取や症状を聞くなどの観察項目を挙げていた。藤内ら(2005,p.213-219)が述べた臨床判断に影響を及ぼす看護師の能力として「知識や経験の修得状況」「先を見越す能力」「安全や苦痛の予測能力」「同様な場面での対処経験」「悪化の予測能力」の5つのうち,新人看護師1ヶ月程度の観察意図の特徴は知識を獲得している過程にあり,経験も少ないため「先を見越す能力」「安全や苦痛の予測能力」「危険予知能力」など不十分であると述べられている(西方・牧岡・中澤他,2012,p.18-19)。今回の看護学生も同様に知識や経験の修得過程であり,同様な場面での対処経験も少ないが,針が抜ける可能性があるや酸素が十分にいき届いていない可能性があるなど「先を見越す能力」「安全や苦痛の予測能力」「危険予知能力」が育まれつつあることが推察される。3.看護基礎教育への示唆今回,観察・アセスメント力を明らかにできるかを検討することを目的として静止画像の視線分析と画像を見た後,気づいた内容から必要な看護援助を記述した内容を分析した。静止画像の設定は,輸液ポンプを使い点滴療法を行っている,酸素療法中で吸引も行っている,膀胱留置カテーテル挿入中である,床頭台に吸引の必要物品がある,ギャッチアップして臥床している,ナースコールが枕元にある,ベッド上にティッシュとゴミ袋が設置されている,付き添いの方の手があるという点に学生が気づきアセスメントを行い必要な援助を考えることを意図した内容であった。学生の視線は,こちらが意図した観察点を注視していたが,ただ単にその場所を見ていたのか,必要な観察点としてじっくり見ていたのかを理解するために,画像を見たあとに「気づいたこと」「気づきから考えられること」「必要な看護援助」を記述してもらった。アンケートによる併用調査を行うことにより,同じ画像を見ても専門的知識を用いて援助の必要性を記述している場合とそうでない場合,あるいは時間をかけて見ている場合でも重要な内容を捉えているか否かの判断はつきにくい。認知プロセスは視線計測だけでは捉えられないため,何に気づき,どのように考えたかといった思考過程はアンケート調査と関連させて分析していくことが重要である。今回は1枚の静止画に多くの情報を入れすぎたために,詳細な部分の情報が見えにくい場合があり,気づいたことから考えられる内容が幅広いものとなってしまった。また今回は時間を決めずに観察してもらったが,時間の長い人も,何度も観察を繰り返す傾向があった。今後は,1枚の静止画像の情報量を減らし,複数のパターンの画像を短時間で観察するという内容にすること,何を観察するのかを明確にした画像,モデル人形ではなく模擬患者をモデルにした画像を作成することにより,アセスメント内容も焦点化された記述が期待できる。また,観察期待領域の設定について,今回は「その他」の領域を最小限に設定したが,画像の情報量を減らし,焦点化することで観察期待領域の範囲が明確になり,設定しやすくなると考える。19