ブックタイトル同志社看護 第3巻
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同志社看護 第3巻
していた。これは北浜ら(2007,pp.107-114)の手術前25.2点から手術後2週間24.0点に低下しているのと同様の傾向であった。退院後1ヶ月あるいは手術後2週間の時点では,身体的な理由として,PFと同様に体幹装具装着による可動域制限が生活機能に影響していると考える。また,REも同様に退院後1ヶ月が入院後よりも低下していた。これも北浜ら(2007,pp.107-114)の手術前31.2点から手術後2週間30.6点に低下していのと同様の傾向であった。LSS患者の手術前の【手術という未知の体験】や【術後の症状残存や後遺症に対する不安】(大口,2014,pp.61-64)などの状態が仕事や普段の活動に影響していたと推測する。一方,退院後1ヶ月でREが低下したのは,本研究の不安や抑うつ状態が退院後1ヶ月で上昇していることが影響していると思われる。SFも70~80歳代標準値48.5点よりも下回り,入院前から退院後1ヶ月は30点前半で推移していた。SFとは,家族,友人,知人などとの普段の付き合いの程度を示したものである。本対象者のSFは入院前から入院後に低下し,入院後から退院後1ヶ月に上昇している。LSS患者と同様に手術後行動変容が伴う人工股関節置換術患者(当目,2004,pp.24-32)および人工膝関節置換術患者(吉川・植崎・森野,2008,pp.102-104)でも,入院前から入院後にかけてSFは低下していた。一般に,手術を予定している待機期間中に積極的に他者と付き合いを増やそうとは考えないため,妥当な結果と思われる。本調査で時間の主効果が認められたのは,BPとMHであった。BPは,体の痛みにより仕事や家事が妨げられたか問う項目である。手術前は30点前後であったが,退院後1ヶ月は40点前半まで改善し,70~80歳代標準値に近い値まで上昇していた。LSS患者の手術の目的は,神経に対する圧迫を取り除き,疼痛を改善することである。本調査でも,BPは,入院前・入院後と比較して退院後1ヶ月は有意に改善していた。このことから,退院後1ヶ月の疼痛の軽減がQOLの改善の要因であることがわかった。MHは40点代で推移し,入院前から入院後にかけて一旦低下し,退院後1ヶ月では有意に上昇していた。MHは,気分の感じ方を問う項目であり,得点が高いほど気分が良い状態である。途中で手術が必要となった患者のMHは,保存療法継続患者よりも低いと報告されている(武井,2014,pp.139-146)。LSS患者は,症状に対して理学療法や薬物療法で対処していたが,手術療法が適応となったことで待機期間中の気分の状態が低下したと考える。また,気分の状態は実際に手術を体験し,回復過程の中で安定していく(当目,2004,p.30)ため,退院後1ヶ月に上昇したと考える。3.看護実践への示唆LSS患者において,不安得点は,入院後に高くなり,退院前に低下した。抑うつ得点は,入院中よりも退院後1ヶ月に上昇した。また,健康関連QOLは,PFがかなり低いQOL状態であること,RPとREが入院後から退院後1ヶ月にQOLが低下していることがわかった。周手術期管理の中で,術後の回復を促進するために,1生体侵襲反応の軽減,2身体活動性の早期自立,3栄養摂取の早期自立,4周術期不安軽減と回復意欲の励起があり,とくに4では術前オリエンテーションにおける教育,入院前情報と相談事に専門家が答えるコンサルテーションに意義があるといわれている(鷲尾・名波・土居,2014,pp.29-34)。本研究対象者は入院1~2週間前に実施される術前検査を外来で受けた後,入院までの待機期間中に医療者から準備性を高める情報や心配事を相談できる機会を得ていない。入院後に看護師より術前オリエンテーションを受けることになる。このことから,周手術期のLSS患者の不安や抑うつ状態を軽減し,QOLを高めるためにも外来における入院前からの看護の充実が望まれる。近年,在院期間の短縮に伴い入退院センターなどが開設され,入院前から入院中および退院後のケアについて計画されるようになった(福島・浅野・岡林,2013,pp.30-42)。しかし,LSS患者では,入院前のPFが著しく低値であり,間欠性跛行により歩行困難な状態である。そのため,LSS患者にとって手術可能な病院の入退院センターの受診や訪問は,困難を伴うと考える。LSS患者の入院前教育は,地域のかかりつけ医と連携し,準備教育を受けることが可能なシステムが必要である。また,LSS患者の場合,術後は腰部の安静に伴う行動変容が余儀なくされる。わが国においては,整形外科領域の専門看護師制度や認定看護師制度は設けられていない。可動域制限がある中で日常生活動作の再獲得に向けて患者教育できる行動変容理論を習熟し,患者家族のニーズを把握し,カウンセリング技法を習得した整形外科看護を専門とする看護師制度が望まれる。Ⅴ.本研究の限界本研究の対象者は1施設に限ったものであり,LSS患者全体の健康関連QOLおよび不安・抑うつ状態の結果を示すには不十分である。8