ブックタイトル同志社看護 第3巻

ページ
13/56

このページは 同志社看護 第3巻 の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

同志社看護 第3巻

腰部脊柱管狭窄症患者の周手術期におけるQOL及び心理の推移Ⅳ.考察1.LSS患者の不安・抑うつ状態本研究対象者では,入院前から入院後の約3割の患者が「不安疑い」または「不安あり」の状態にあったが,退院前と退院後1ヶ月においては1割台になっていた。LSS患者を含む脊椎手術予定2週間前の術前不安の報告(大口,2014,pp.61-64)では,【未知の体験に対する不安】【術後の後遺症に対する不安】【過去の体験からの不安】などのカテゴリを抽出していた。本研究対象者の入院前も入院1~2週間前に該当するため,手術という患者にとって未知の体験に対する不確かな状況の不安や,本対象者の手術経験回数が平均2.1回であったことから,過去の手術の体験を想起しての不安であったと考える。不安得点については,入院後に最も高く,その後退院前に一旦低下し,退院後1ヶ月に若干上昇するという時間の主効果が認められた。周手術期患者の不安・抑うつ状態を入院日から退院日にかけて調査した報告(齋藤・大芝・内田,2007,pp.59-63)では,不安は入院日が最も高く,退院にかけて有意に低下したと述べている。また,人工膝関節置換術患者の報告(吉川・植崎・森野,2008,pp.102-104)でも,入院前から入院後に有意に不安得点が上昇している。本研究でも手術が近くなった入院後に不安得点が高くなっていた。これは,術前の約5日間で手術の準備が進められ,[麻酔や手術の脅威],[手術室での体験]などの心配事(小笠・當目・竹下,2013,pp.1-12)が実際の体験として差し迫り,入院後の不安得点の上昇に影響したと考えられる。また,退院後1ヶ月に若干不安得点が上昇したのは,入院中は医療スタッフからの疾患管理とケアを受ける療養生活を送っていた状態から,退院後1ヶ月の療養生活は自己管理の状態へと移行することから,退院前後で療養環境やケア提供体制が変化するためと推測される。本研究対象者では,入院前から退院後1ヶ月にかけて約3~4割の患者が「抑うつ疑い」または「抑うつあり」となっていた。これは,LSSの症状と抑うつの関連を調査し,約3割が抑うつ傾向にあったとする松平ら(2007,pp.192-196)の報告と同様であった。LSS患者の抑うつ得点については,時間の主効果は認められなかったものの,入院後に上昇し,退院前に一旦低下,退院後1ヶ月に再度上昇した。入院後の抑うつは手術前の不安や心配事が影響していると思われる。一方,退院後1ヶ月の抑うつ状態は,間欠性跛行は改善するが,下肢の痺れは残存する(山田,2016,p.38)こと,腰部の安静保持のため体幹装具を装着し,活動が制限されること,再狭窄の可能性(三戸,2008,p.61)などから抑うつ状態が増加したと推察される。2.LSS患者の健康関連QOLSF-36尺度の下位尺度得点において本研究対象者の平均年齢が属する70~80歳代標準値と比較し,検討する。GH,VTおよびMHは70~80歳代標準値に近い値であった。一方,PF,RP,RE,SF,BP各時点で70~80歳標準値より得点がかなり低値を示していた。つまり,LSS患者は,精神的QOLは同年代と近い状態であるが,身体的QOLが同年代と比べて低い状態であることがわかった。加齢に伴い身体機能も低下するため,70~80歳代のPFの標準値は37.9点と低い。PFは健康上の理由で日常生活動作の状態や歩行距離について問う項目である。LSS患者が手術適応となるのは,日常生活動作に支障をきたす場合である。PFについて北浜ら(2007,pp.107-114)は,手術前20.7点,手術後2週間31.7点,手術後3ヶ月35.2点,手術後6ヶ月33.9点,柏木ら(2012,pp.34-40)は手術前19点,手術後3ヶ月29点と報告している。しかし,本研究対象者の周手術期のPFは各時点で15点前後とかなり低い値であった。LSS患者の症状に対する一番の悩みは「歩くのが辛い」「長時間歩けない」(紺野,2010,pp.55-68)といわれている。手術前は,間欠性跛行により歩行困難をきたし,日常生活が遂行できない状態であり,退院後1ヶ月は手術を受けて間欠性跛行は改善するが,痺れなどは残存する。さらに,退院後1ヶ月は,行動変容が習慣化していない状態で体幹装具を切除術では3週間程度,固定術では3ヶ月程度の装着が必要(山田,2016,p.40)となる。そのため,退院後1ヶ月ではPFが改善しないと推測される。RPの70~80歳代標準値は42.4点,REの同年代標準値44.8点であり,本研究対象者のRPは20点代前半で推移し,REは30点代前半で推移しており,RPおよびREともに入院前から入院後に一旦上昇し,退院後1ヶ月で低下していた。仕事や普段の活動をしたときに,RPは身体的な理由で,REは心理的な理由で問題が生じたかを問う項目である。LSS患者の手術前の身体的理由は,間欠性跛行による歩行困難,膀胱直腸障害がある。LSS患者の症状に関する一番の悩みにも,「日常生活が不便,支障がある」「家事ができない」(紺野,2010,pp.55-68)があり,手術前のLSS患者の症状が仕事や普段の活動に影響していることがわかる。一方,本研究対象者の退院後1ヶ月のRPが入院前と入院後よりも若干低下7