ブックタイトル同志社看護 第2巻
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同志社看護 第2巻
に子どもが助かる時代になって,NICUから人工呼吸器をつけてお家に帰られる方は,増えてきています。大阪で大体200~300人の方が自宅で過ごしておられると聞いているのですが,その方々が24時間ずっと人工呼吸器をつけながらですので介護する方は24時間介護になります。そんな中,人工呼吸器をつけているお子さんの預かり施設は本当に少なくて,困っておられるということが当院をオープンしてよくわかりました。イギリスの子どもホスピスには人工呼吸器の方とか気管切開の方とか全くおられませんでした。日本だったらどうだろうねと話しながら帰ってきました。イギリスは,国の方針としてNICUで人工呼吸器をつけてまで子どもさんを助けるということはしないそうです。ところが日本ではどんどん助ける。それで,お家に帰って行かれる。でも預かってくれるところは少なくて,重度の肢体不自由児の施設に一時預かりのベッドはあるのですが,人工呼吸器をつけていると預かってもらえなくて困っておられたようで,当院がオープンしたら結構そういう重度の方たちが集まってこられて,今でも12床の中で大体多い時で一日5人位人工呼吸器の方をお預かりしています。そうすると,なかなか看護力が足りなくて難しい所もあるのですが,何回かお預かりする中で,最初は預かってもらうということに抵抗を感じていたご両親が,預かってもらうことによって自分に余裕ができて,自分の健康管理ができ,きれいになり,元気になっていかれて,そんな様子を見ることが私たちにとって励みになっています。またずっとお家におられてなかなか外の世界に接する機会のなかった子どもたちがいろいろなイベントやボランティアさんも含めて,いろんな人との関わりを通して,どんどん成長していく所を見させていただくということもすごく嬉しいことです。特に,NICUで生まれた子どもさんで,奇形で何回も手術しておられる方は,顔が変形していたり,手術の跡があって,最初は「自分の子どもは・・・」「あんまり外に見せたくないんです」って言いながら,写真をとるのも拒否しておられた方々が,ボランティアさんたちが「かわいいね,かわいいね」って言って関わる中で,本当に自分の子どもはかわいいんだと,お母さんが子どもさんのことを認められるようになって,「もう,いつでもどうぞ,子どもの写真撮っていいですよ」って言ってくださったり,「うちの子,爪がとってもきれいなんですよ」と言って,男の子ですけれども,ネイルをしてもらったり等,嬉しい体験ができることもあります。難病を持った子どもさんやがんの子どもさんの場合,ご両親がすごくご自分を責めておられる場合もあります。責める気持ちをなかなかぬぐえなくて,当院を利用される中で,チャプレンの関わりもありますので,ご両親の責任では決してない,ということをお伝えする機会もあったりして,そういう中で,ご両親も変わっていかれる様子をみせていただくというのも本当に私たちの喜びです。どんどんそういう子どもさんたちが増えていく分,こういう子どもホスピスが日本でもたくさん増えていってほしいと思っています。子どもホスピスの本は日本ではなかったのですが,私たちは,今年『輝く子どもの命―子どもホスピス癒しと希望』という本を出しました。子どもの命をどう考えるのかというキリスト教的な視点から第一章は書いています。第二章では,子どもホスピスとホスピスケアということで実際の子どもホスピスの様子とかヘレンハウスの様子,イギリスや世界の子どもホスピスの様子のことを書いた章です。第三章は実際に先程映っていたご家族とか,3家族の方に実際の自分の子どもさんが病気になったときから亡くなるまでの経緯や思いを書いて頂いています。また子どもホスピスの課長がそれぞれの子どもさんが入院された時から亡くなられるまでを看護者としての視点で書いています。成人のホスピスは診療報酬体系が大分よくなりましたので,良いのですが,子どもホスピスは赤字経営です。子どものがんの方が入ってきたら,成人のホスピスと同じ収入があるのですが,子どものレスパイトの方が入ってこられたときには,がんの子どもさんの半分くらいしか収入がありません。でも,スタッフの数は必要ですので,赤字経営の中で,淀川キリスト教病院がホスピス・こどもホスピス病院を支えてくださっている形になります。ご有志の方があれば,入口のところでワンコイン募金をしておりますので,お気持ちを表して下さればありがたいです。聖書の言葉で『わたしの兄弟である最も小さい者の一人にしたのはわたしにしてくれたことなのである』(マタイ25-40)という言葉があるのですけれど,今日聞いていただいたみなさんにお願いしたいことは,子どもホスピスっていうのはまだまだ日本で知られていませんので,こんなところがあるのだということを近くの方にお伝えしていただきたい,その必要性を是非伝えていっていただけたらと思います。50