ブックタイトル同志社看護 第2巻
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同志社看護 第2巻
なただけです』という御言葉に出会い,私を安らかにいさせて下さるのは神様しかいないということがわかって,たとえ悪性でも神様あなたに委ねますというお祈りができました。そして,神様が私を愛し,私の人生を握っておられるということに安心して,とても楽になって手術を受けたのを覚えています。結局良性で良かったのですが,その時教えられたのは,病気をしたら,体も心も魂も痛むということ,医療者に求められるのは,体の痛みを解決することだけではないということ,相手の心や魂の痛みはどうしようもないと思っても,共にいようとする思いが大切であること,それと自分の人生の中でどんな小さいことでも一つひとつが自分にとって,意味があると認めること,同じように,他の方にとっても,ほんの小さいことであっても,その人にとったら意味があると認めていくことが大事ということでした。そして実際の患者になって初めて少し患者さんの気持ちがわかるようになりました。神様は,こういう形で私に荒療治をされたのだなと思いますが,その時私は神様から大きなスピリチュアルケアを受けたと思っていますし,その時の経験は,私自身の今与えられた仕事をする上でのベースになっています。それから学生時代に教わったことの中で,今でも私の看護の原点になっていることですが,看護哲学という授業の中で,「医療に携わる者は,相手の前に,持っている医療技術を一旦十字架につけるということが大切だ」と言うことを教わり,それを聞いた時,これが看護の原点なんだと思いました。私たちは,相手との対等の関わりの中で自分の医療知識や技術,自分のもっているもの,自分の思い,自我とかを一旦手放すことも大切で,それが十字架につけることだと思います。そうすることで,本当に相手の方が何を望んでおられるか,何が必要で何を感じておられるかが,少しずつわかるようになって,本当に相手に必要なことを提供できるようになると思います。そういう学生時代を送って,どこに就職しようか考えていた時に,淀川キリスト教病院のことを知りました。『臨死患者ケアの理論と実際―死にゆく患者の看護―』という,柏木哲夫,今の淀川キリスト教病院の理事長がまだホスピスを始める前に出された本です。丁度その頃,学生実習で受け持っていた患者さんががんの末期の方でした。痛みが強くなると麻薬を注射するという毎日で,看護記録には毎日痛みのことと,注射をしたということしか書かれていませんでした。医療者も足が遠のく中で,家族の方と一緒に身の回りの世話をしました。患者さんには,その頃は真実を告げないことが多かったので,その方にも本当のことが告げられていなくて,本当に話したいことが話せずにいましたが,学生が来ることを楽しみにして下さっていました。本当に,これが看護なのだろうかと思いながら実習していた時に,この本は末期の患者さんの必要,どうケアしていくのか,真実を告げること,向き合うこと,チームで関わること等が書いてあり,とても新鮮で,こういう看護がしたいと思いました。それと,先ほど入院した経験もあって,当時200床も満たなかった淀川キリスト教病院に就職をしました。就職して思いましたのは,医師も看護師も本当によく患者さんのベッドサイドに行って,その方の必要にどう答えるのか,悩みつつも本当に真摯に関わって責任をもって対応している様子がわかって,忙しい中でもやりがいを感じることができましたし,たくさん失敗をして未熟さに落ち込むこともあったのですが,そこで多くの方に教えられて成長させていただいているという実感がありました。外科病棟と内科病棟で4年勤めた後,一旦結婚退職して,他院でも働いたのですが,再度淀川キリスト教病院に就職して内科病棟の責任者とか教育担当,救急外来の責任者を経て,2012年の11月に開設したホスピス・こどもホスピス病院の看護部長として現在に至っています。元々ホスピスは1984年に病院の中に開設されたのですが,2012年にホスピス・こどもホスピス病院という形で外に出ることになりました。ここからスライドを出します。もともとホスピスは中世のヨーロッパで旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会のことをさして,そうした旅人が病や健康上の不調で旅立つことができなければ,そのままそこでケアや看護をしたことから看護収容施設全般をホスピスと呼ぶようになりました。今日本の中でホスピスというと,イメージ的には成人のがんのターミナルの方が入る所とイメージされるのですが,世界的には,休み場所という感じで,がんの方だけではなくいろんな病気の方が入られて休む場所として使われることが多いようです。子どもと成人の違いですが,成人のホスピスは,がんで積極的な治療を行わないと決めた方が対象で,その方らしく生きることを支援するところです。子どものホスピスはがんのみでなく,難病や重度の心身障害の子どもたちも対象としており,自宅での介護負担軽減のためのお預かりが基本です。46