ブックタイトル同志社看護 第2巻

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概要

同志社看護 第2巻

看護学部における地域住民参画型教育の取り組みと今後の課題者さん役からの率直な感想を聞くことで,相手にとって自分の行動はどのようにとらえられているのかを知ることができ,良い経験になった」,「一般の方から感想を聞けて,これからの意欲に繋がった」など,大半の学生から肯定的な感想が聞かれた。2)お礼状の作成看護OSCEを実施した翌週の「看護総合演習Ⅰ」において,看護OSCE内容を撮影した映像を使用しての振り返りと,担当のSPに対するお礼状の作成を行った。お礼状には学生の写真を貼付し,学生がそれぞれに工夫してSPへのメッセージを記載した。Ⅳ本学部におけるSP養成と看護OSCE参画支援の成果と今後の課題本学部では開設初年度から,試行錯誤しながら地域住民参画型教育の一端として,SPの養成と看護OSCEへの参画支援を行ってきた。本学部におけるSP養成と看護OSCE参画支援の成果と,より効果的に行っていくための今後の課題を整理したい。1 SP養成・看護OSCEへの参画支援の成果地域住民の力をSPとして看護学教育に取り入れることは,学生,そしてSPとなる地域住民双方にとって有益なものである。まず,学生のアンケートからは,臨床に近い環境の中,適度な緊張感で課題を実施し,看護を受ける対象に近い立場のSPから率直な意見と励ましを受け,今後の学習意欲に結び付ける学生の様子が見て取れた。看護OSCEの目的である「自己の課題を明らかにし自己学習へとつなげる」効果があったと評価できる。さらに,核家族化がすすみ,世代の異なる対象と接する機会をほとんど持たない学生も多い中,50~70代を中心とした年代の地域住民と接する機会は学生にとって,さまざまな対象の思いや考えを知る機会になったといえる。一方,SPのアンケートでは,学生の役に立ちたいとの思いからSP活動に参加し,学生に患者の思いを伝え,学生の育成に関われる喜びを感じている様子がみられた。また,自分自身が成長する機会とも捉えており,SPにとっても,適度な緊張感のなかで患者を演じる経験は貴重な体験になったと考えられる。さらに,教員にとっても改めて地域住民の力の大きさを感じる場となった。講習会での質疑応答やフィードバックなどから,教員自身も自らが持つ固定観念や看護師としての視点に寄っていることに気づかされることもあり,学生のみならず教員も大いに刺激と学びを得られた機会であった。2 SP養成の今後の課題SP養成の今後の課題として,次の3つを挙げたい。まず1つ目に,SPの質の担保を図ることが挙げられる。SPの教育は教育側の責任であり(山本・伊藤・冨澤,2015),教員の企画力,準備力も問われるものである(本田・上村,2009,p.73)。本学部では今年度,看護OSCEにおけるSPの役割が果たせることを目的として,説明会においてSPの概要や役割を説明し,2回の講習会では実際のシナリオに基づいた演技とフィードバックの練習という実践的な内容で養成した。今後はSPとしてのスキルアップを図れるような教育を計画していく必要があると考える。ただし,SPからのアンケートでは2回の開催回数を適当としているものが約9割であり,回数の多いことがSPの負担になることも考えられる。SPの負担も考慮した効果的な講習内容のプログラムを作成していくことが望まれる。2つ目にSPにとっても,より意義ある活動となるようにしていくことが挙げられる。SPの担い手の多くは高齢者であり,高齢模擬患者の養成は,高齢者のProductive Activity(小澤・中村・後藤他,2011)や,「生きがい」につながる役割意識が芽生えているとの報告(鹿島・吉村・吉本他,2014)がある。今回のSPの応募動機も,6割のSPが「学生の役に立ちたい」を挙げていた。また、地域中高年者が社会貢献性のある役割を新たに獲得することにより,健康関連QOL向上につながるとの報告もみられる(今井・山川・間中,2008)。SPとして参加する高齢者にとっても,より意義のある活動となるために,活躍の場を広げることや学生の学びを結果として示すこと,学生との交流等が必要と考える。43