ブックタイトル同志社看護 第2巻

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概要

同志社看護 第2巻

認知づけを促進する患者教育は,術後の行動変容に効果的であるといえる。腰椎固定装具装着による可動域制限と頸部固定装具装着による可動域制限および視野制限は,危険予測の遅れを招き,危険回避行動の困難につながると考えられる。そこで,固定装具を装着しながらも危険を早期に予測し,回避する方法および安全を確認しながら正しい視線で歩行する方法を手術の意思決定時点から情報提供することで,手術後の危険の予測が可能となり,安全確認の方法を習得できると考える。3.本研究の限界本研究は1施設に限定した18名の患者を対象とした質的研究であり,すべての脊椎固定装具装着患者に共通する結果ではなく,一般化には不十分である。また,インタビュー後に対象者が退院したため,抽出したカテゴリーについては対象者との検討がなされておらず,信用可能性の検討が不十分である。Ⅴ.結論脊椎固定装具装着患者の入院中の日常生活動作における困難感の体験について要約的内容分析することにより,以下のことが明らかとなった。頸椎手術患者の体験は,【頸部安静に伴う禁忌肢位の遵守】【カラー装着に伴う視野制限】【頸部安静に伴う体動制限】【カラー装着に伴う食事動作の困難感】【カラー装着の負担と安心感】【歩行器を使用するときの注意】【手術後の身体への影響】【日常生活動作のサポート】の8カテゴリーで構成された。腰椎手術患者の体験は,【腰部安静に伴う禁忌肢位の遵守】【腰部安静に伴う食事動作の困難感】【コルセット装着の負担と安心感】【歩行時に転倒しない対策】【歩行器を使用するときの注意】【手術による身体への影響】【禁忌肢位のための日常生活動作の工夫】【日常生活動作のサポート】の8カテゴリーで構成された。脊椎固定装具装着患者が日常生活を送るうえで最も重要なことは,禁忌肢位をとらないことの遵守と新たな日常生活動作の獲得である。患者が安全に日常生活動作を拡大していくためには,危険を早期に予測し回避するトレーニングを,入院前からの日常生活指導に取り入れていくことが必要と考える。は日本学術振興会科学研究助成金基盤研究B(課題番号25293442,代表者當目雅代)の助成を受けて実施したものである。本研究に関してすべての著者に開示すべき利益相反はない。文献日高有紗・平岡理恵・山中百合子(2013):脊椎手術後の睡眠阻害要因の検討.日本看護学会論文集成人看護Ⅰ.43:51-54.飯田佳奈美(2015):術後リハビリテーション.大川淳(編).まるごと脊椎これ一冊.216.大阪:メディカ出版.厚生労働省(2012):疾患別手術別件数在院日数.http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002hs9l.html.(2016年11月16日)小林佳代子(2015):よく使う装具の装着法.大川淳(編).まるごと脊椎これ一冊.106-113.大阪:メディカ出版.宮腰尚久(2007):脊柱変形とQOL.OsteoporosisJapan.15(3):185-187.Miyakoshi N.,Itoi E.,Kobayashi M.et al.(2003):Impact of posturaldeformities and spinal mobility on quality of lifein postmenopausal osteoporosis.OsteoporosisInternational.14(2):1107-1102.水口奈緒美・柴田香理・大野朱美他(2012):腰椎手術患者の転倒・転落要因の実態調査.整形外科看護.7(2):105-109.大口二美(2013):後方進入による頸椎手術後のソフトカラー装着時の日常生活動作に関するディストレスの特徴.日本看護学会論文集成人看護Ⅰ.43:147-150.髙田研(2007):体幹装具の基礎知識.整形外科看護.12(11):31-36.筑後祥恵・月田佳寿美(2012):頸椎装具を装着している患者の体験と思い.整形外科看護.17(4):98-102.ウヴェ・フリック(2007)/小田博志(2011).新版質的研究入門―人間の科学のための方法論.393-400.東京:春秋社.楊静・上里千枝・茅原路代(2013):脊柱管狭窄症患者の痺れや痛みが起こす日常生活に影響する思い.日本看護学会論文看護総合.43:43-46.謝辞:本研究にご協力くださいました患者の皆様,医療機関の皆様に深く感謝申し上げます。なお、本研究28