ブックタイトル同志社看護 第2巻
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同志社看護 第2巻
脊椎手術後固定装具装着をした患者の日常生活動作における体験がっていると考えられる。患者は固定装具を退院後も継続して装着することが必要となり,装具装着による負担や苦痛を軽減する対処方法を獲得することで,固定装具に対する信頼感を維持し,社会復帰後の療養生活における行動変容への継続につながると考えられる。歩行器による歩行練習に関しても共通した体験を述べていた。歩行器歩行の際に腰椎手術患者は,人や物にぶつからないように注意して歩行していた。さらに,腰椎手術患者は,独歩が許可されたあとも下肢の痺れや筋力低下から転倒の可能性があることを認識し,歩行前に靴が履けているか確認したり,手すりや壁につかまって歩くといった具体的な転倒予防対策をとっていた。一方,頸椎手術患者は歩行器歩行の際に,周りの人に避けてもらったり,ゆっくり歩くといった方法で転倒を防止していた。これは,頸椎手術患者は頸部の可動域制限や視野制限があり,危険を予測できる範囲が狭いことやとっさに危険を回避する行動がとれない状況にあることを,患者自らが認識したうえでの対処であると考えられる。また,日常生活動作のサポートを看護師から得ていることについても,共通した体験を述べていた。腰椎手術患者は自らできないと判断したことに対して介助を求めていたが,頸椎手術患者は看護師から介助を得ている状況であった。これは,頸椎手術患者は腰椎手術患者に比べ固定装具による可動域制限が厳しく,日常生活動作の困難や視野制限による転倒・転落,人や物との接触など,日常生活においてあらゆる場面で危険を伴う状況におかれていることが要因となっていると考える。2)頸椎手術患者と腰椎手術患者の特徴的な体験頸椎手術患者に特徴的な体験は【カラー装着に伴う視野制限】と【頸部安静に伴う体動制限】であり,腰椎手術患者に特徴的な体験は【歩行時に転倒しない対策】【禁忌肢位のための日常生活動作の工夫】であった。頸椎手術患者は,腰椎手術患者に比べ,視野制限や開口制限など可動域制限に伴う日常生活動作へ困難感を多く体験していた。頸部手術患者は,装具により下顎骨部と後頭結節部が固定され,頸部の回旋が制限される(小林,2015,p106-113)。そのため患者は上下の視野だけでなく,左右の視野も制限される。頸椎手術患者は〈前上方だけを見て歩いている〉,〈目線だけを動かして物を見ている〉といった行動をとることで,〈足元が見えないので動くとき不安〉と述べていた。さらに,患者は〈体幹捻転禁忌のためにロボットのように体全体で動いている〉と述べており,禁忌肢位をとらないようにすることでスムーズな動作が困難となり,自らの体動のぎこちなさを感じていた。このことから,患者は禁忌肢位をとらないことを遵守するために,危険予測や回避行動が困難な状態にあることが考えられる。腰椎手術患者は,術後の患部安静のための可動域制限に伴う日常生活動作の困難性に対し,補助具を使用したり,新たな動作を獲得することによって,〈自分でできることは自分でする〉といった日常生活動動作の拡大につながっていた。一方,頸椎手術患者は,動作が制限されることによる不自由さについての内容が多く抽出され,固定装具による可動域制限が厳しく,日常生活動作の拡大が困難な状況にあることが考えられる。さらに,手術による身体への影響について腰椎手術患者は下肢の痺れと筋力低下を感じていたが,頸椎手術患者はそれらに加え手の痺れが残存していると述べていた。これは,椎間板の変性や骨棘形成,椎間関節の変性による神経の圧迫や血流障害がもたらされた部位により,頸椎では上下肢に,腰椎では下肢に神経症状を呈するという疾患特有の症状である。術後も続く神経障害は巧緻機能動作の低下をもたらし,このような身体症状も頸椎手術患者の日常生活動作拡大を阻む要因であると考えられる。2.看護実践への示唆脊椎手術後に固定装具装着による行動変容を余儀なくされる患者は,医師・看護師などから固定装具の装着方法,手術後の経過や手術部を愛護する方法をパンフレットなどで情報提供されている。また,手術前のインフォームド・コンセントでは,医師より術後の痺れの残存などが説明されている。そのような情報提供を受けている中で,食事動作の困難性と危険の予測と安全確認方法についての看護実践への示唆を得たため,以下で述べる。頸椎手術患者および腰椎手術患者ともに,側臥位で食事動作が困難であるととらえていた。病院施設では側臥位での食事摂取が容易になるように“串刺し食”が提供されている。串刺し食は,側臥位で箸などを使用しなくても食事が摂取できるように工夫されたものである。しかし,頸椎手術患者は手指の巧緻性の低下と開口制限があるため,串から食物を外しにくく,食物の固まりも大きいことを経験していた。そのため,頸椎手術患者には手指の巧緻性の低下と開口制限に合わせた食事の工夫がさらに必要となる。脊椎固定装具装着患者は,禁忌肢位をとらないための行動変容が求められる。行動変容は,認知が先行して行動に変化がもたらされるものであり,手術前から27