ブックタイトル同志社看護 第2巻

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概要

同志社看護 第2巻

脊椎手術後固定装具装着をした患者の日常生活動作における体験Ⅱ.方法1.研究デザイン半構造化面接法による質的帰納的記述研究である。2.用語の定義脊椎固定装具とは,脊椎手術部位を安静にすることで筋緊張を改善し除痛を図ることと,不安定な脊椎を支持し固定することを目的に装着される固定装具である(小林,2015,p106-113)。頸椎固定装具は,下顎骨部と後頭結節部を固定し,頸椎の屈曲伸展を制限する装具とし,腰椎固定装具は,脊椎を伸展位に保持し前屈・回旋を制限する硬性コルセットと,腹腔内圧上昇効果により脊椎およびその脊柱起立筋への荷重負荷を軽減させる軟性コルセットの両方を含むものとする。3.研究対象者年間100件以上の脊椎手術を実施しているA病院において協力を得た。手術後に脊椎固定装具装着を必要とする脊椎疾患は,加齢や労働による椎間板の変性や骨棘形成,椎間関節の変性が原因となり,中高年に好発する。そこで,研究対象者は,頸椎手術・腰椎手術を受け,術後に脊椎固定装具を装着している50歳以上の成人・老年期にある入院患者のうち,退院および転院が決定しており,日常生活動作において介助を必要としない意思疎通がはかれる患者とした。条件を満たし面接が可能と思われる患者について,担当医の了解を得た後,整形外科病棟の看護師長から紹介を受けた。紹介を受けた患者に対し,研究目的・意義などを説明し,研究参加の同意が得られた患者を面接調査対象とした。4.調査期間平成26年6月中旬から10月下旬までであった。5.データ収集方法研究参加の同意が得られた患者に対し,退院予定日の2~3日前に半構造化面接と診療録調査を実施した。面接はプライバシーが確保できるA病院整形外科病棟の面談室を使用し,対象者の診察や看護ケアの支障とならない時間に行った。面接回数は1名1回とし,面接時間は30分程度を予定した。面接は研究者が作成したインタビューガイド(表1)に基づき1名の研究者が行い,対象者に自由な語りを促した。面接内容は対象者の同意を得たうえでICレコーダーに録音した。診療録調査では,対象者の年齢,性別,診断名,手術部位,術式,現在の身体症状,脊椎固定装具の種類,身体機能障害の有無,入院期間,ADL,補助具使用の有無等についての情報を得た。6.データ分析方法面接内容は速やかに逐語録におこしデータ化した。データ分析は,Mayringの要約的内容分析の手法(ウヴェ・フリック,2007/2011,p393-400)を参考に質的帰納的に分析した。要約的内容分析とは,重要でない文章や同じ意味の言い換えを削除したり,同じ意味の言い換えを束ねて要約したりする作業により,類似する内容を削除する手法と,内容をより高次元の抽象レベルにまとめる手法が含まれた質的帰納的分析方法である。本研究では,対象者個々の逐語録を精読し,入院中の日常生活に関する記述について,文脈を損なわないように抽出し1文にまとめ,内容を的確に表す言い換えを行い分析単位とした。次に,それらを抽象化のレベルへと一般化し,内容を的確に表現するコード化単位を設定した。さらにコード化単位の記述数を数量化し,意味内容が類似するものをまとめてサブカテゴリー,カテゴリーに分類し,名称を付与した。なお,分析は対象者を頸椎固定装具装着患者と腰椎固定装具装着患者に分けて行い,各々の入院中の日常生活動作における体験について,類似性と相違性を検討した。表1インタビューガイド表1インタビューガイド1手術後してから現在まで、どのような経過を辿られましたか。2手術後ベッドからご自分で動けるようになってから、ご自分で身の回りの動作をするときに「やりにくい」とか「危ない」と思った動作はありますか。3医師や看護師、理学療法士から手術後にご自分で身の回りの動作をするときに、「してはいけない」あるいは「避けた方がよい」動作について、どのように説明を受けていますか。4そのような「してはいけない動作」や「避けた方がよい」動作を“やってしまったこと”はありますか。また、それはどのような時でしたか。5「やりにくい」や「危ない」と思ったときに、どのように対処しましたか。6病院の中やベッド周囲で、このような工夫や配置がされていたら、もっと身の回りの動作がしやすかったと思うことはありますか。21