ブックタイトル同志社看護 第2巻

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概要

同志社看護 第2巻

同居高齢者および施設入所高齢者における孤独感に対する支援について,対人関係を促進するような心理的援助の必要性を述べている。また,青木(2001,pp.125-136)は,在宅高齢者の孤独感を緩和するために,豊かな人間関係の構築に向けて地域活動や組織を多様に展開していくことの重要性を示唆している。これらの報告と本結果を総合的に勘案すると,閉じこもり傾向にある高齢者に対しても,高齢者の社会関係の維持,構築を図る働きかけが必要なことに疑いはない。そのために,看護職には,地域包括支援センター等において,閉じこもり傾向にある高齢者の継続的なフォロー,彼らの健康状態や生活状況の把握,孤独感解消のために活用可能なフォーマル,インフォーマルな社会資源の包括的なアセスメント,そして,タイミングを見はかり個人のニーズに即した介入が求められるだろう。特に,地域包括ケアシステムの構築が進められる今日においては,高齢者が自身で積極的な社会参加を図る自助の促進や,地域の高齢者が互いに支え合う互助の構築の視点は重要になるといえる。具体的には,外出機会が減少している高齢者に対しては,社会関係を維持することをねらいとした地域活動等への参加の啓発が,孤独感の解消につながると共に外出機会を維持することにもなり,閉じこもり予防に有効かもしれない。地域住民で構成された外出支援サポーターの活用など,高齢者の生活に密着した支援が求められる。また,家に閉じこもった状態で外出の促しにも応じない高齢者に対しても,看護職による訪問や傾聴ボランティアの活用などを通じて他者との交流の機会を設けることで,社会関係を維持することが可能になるかもしれない。そして,閉じこもり傾向にある高齢者の孤独感を解消させることができれば,閉じこもり予防・改善につながる可能性もある。厚生労働省の介護予防マニュアル(介護予防マニュアル改訂委員会,2012,pp.97-111)によると,閉じこもりと判定された者に対しては,運動器の機能向上プログラムや栄養改善プログラム,口腔機能向上プログラムといった通所系の介護予防事業メニューへの参加が勧奨されている。高齢者の社会関係の構築を図る視点から考えると,閉じこもり傾向にある者に対しては,このようなプログラムへの参加を目標に,参加する前段階としてプログラム実施者と人間関係を構築することが対策のひとつとなり得るだろう。これらの支援は,地域の実情を生活面,健康面,社会面等から総合的に把握しアセスメントする看護職の役割であると考える。本調査は横断調査であり,両者の因果関係は明らかでないが,本結果は,閉じこもり予備群と判定されるできるだけ早期のうちから,孤独感を解消させるような働きかけが閉じこもり予防に効果的である可能性を示すものだと考える。4.研究の限界と今後の課題本研究は地域における体力測定会へ継続的に参加を希望した高齢者を対象としており,得られた結果の一般化が難しい点に限界があると考える。今後は体力測定会に参加していない高齢者へと対象を拡大し,地域全体の高齢者の実態把握と分析を行う必要がある。加えて,本研究は横断調査であり,閉じこもりと孤独感の因果関係までは明らかにできていない。今後は,縦断的な調査から両者の関係を明らかにする必要がある。さらに,孤独感の強い高齢者に対してその生活実態を明らかにし,閉じこもり高齢者の孤独感に関連する要因について分析を深めていく必要がある。Ⅴ.結論地域在住自立高齢者で体力測定会への参加を希望した者を対象に,質問紙調査を行い,閉じこもりリスクの程度と孤独感との関連を明らかにした。その結果,孤独感得点の平均点は性別や近所に頼れる人の人数,主観的健康感,主観的体力,うつのリスク,家庭内の仕事,趣味の有無,グループ活動への参加,LSIKの項目で有意差が認められ,各項目において,性別では男性,近所に頼れる人のいない者,健康であると感じていない者,体力に自信がない者,うつリスク保有者,家庭内の仕事を持っていない者,趣味がない者,グループ活動に参加しない者,LSIK低得点の者の孤独感が有意に高値を認めた。また,閉じこもりリスクと孤独感の関連では,上記の項目を共変量として調整しても,非閉じこもり群に比べて閉じこもり予備群の孤独感が有意に高く,閉じこもり群で高い傾向があることが明らかとなった。以上のことから,外出頻度が減りつつある閉じこもり予備群のうちから,孤独感を解消させるような働きかけが必要と考えられる。また,こういった取り組みが効果的な閉じこもり予防対策につながると期待される。謝辞:調査にご協力いただきました関係者各位,ならびに亀岡市の住民の皆様に厚く御礼申し上げます。なお,本研究は,文科省科研費基盤研究(A)24240091および京都府地域包括ケア推進機構,亀岡市からの助成を受けて実施した。共著者全員に開示すべき利益相反はない。16