ブックタイトル同志社看護 第2巻

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概要

同志社看護 第2巻

体力測定会参加希望高齢者の閉じこもりリスクと孤独感との関連も閉じこもりリスク保有者が約20%に及んだことが明らかとなった。これまで,自立高齢者の閉じこもりリスクについて言及している論文は数少なく,その点で,本対象者のような意欲の高い比較的健康な高齢者においても約20%に閉じこもりリスクが認められたという本研究の知見の価値は高いといえる。地域における看護活動では,まず地域の健康問題の把握が重要である。したがって,看護の立場から閉じこもり予防支援を考える上でも,まずは閉じこもりリスクを保有している高齢者をできるだけ早期に把握する必要がある。本結果は,地域の体力測定会に参加するような高齢者集団においても,閉じこもりリスク保有者,すなわち閉じこもり予防支援の対象者を把握する必要性を示唆している。2.孤独感とその関連要因対象者の孤独感得点の平均点は37.6±9.4点であった。舛田・田高・臺(2012,pp.25-32)が地域在住高齢者443名を分析対象とした同様の調査では42.2±9.9点であった。これに比べて本対象者の孤独感は低い傾向にあった。この要因についても,前述の本対象者の特性,すなわち意欲の高い比較的健康な高齢者集団であることが影響していると解釈できるだろう。加えて,本対象者の特性として,生活満足度が高く,近隣に頼れる人が存在する者の割合が高い傾向にあることが推察され,その影響も考えられた。LSIKは,人生全体についての満足度,老いについての評価,心理的安定の3つの因子から生活満足度を測定できる尺度と言われている。本対象者のLSIK得点の平均は5.0±2.1点であった。古谷野(1996,pp.431-441)は在宅高齢者において4.6±2.2点であったことを報告している。その他にも,前期高齢者で4.5~4.9点,後期高齢者で4.3~4.4点との報告がある(谷口・桂・星野他,2013,pp.91-105;山口・近藤・柴田,2012,pp.59-69)。これらの報告よりも本対象者では得点が高く,生活満足度が高い集団であった。さらに,本対象者では約90.0%の者に同居者以外で近所に頼れる人が1名以上存在していた。小林・深谷(2015,pp.88-100)は,60歳以上の高齢者において,互いに家を行き来するような間柄の親しい近所の人が1人以上存在する者の割合が,男性では48.3%,女性では63.3%であることを報告している。先行研究と本研究とで質問内容が異なるため完全に比較はできないが,これに比べて本対象者のほとんどは近所に頼れる人を有しており,少なからず地域や近隣とのつながりがある高齢者であることが考えられた。以上のような特性が,本対象者の孤独感の低さに影響したのかもしれない。一方,本結果では性別では男性の孤独感が女性より有意に強かった。しかしながら,年齢区分や世帯構成では有意差がないという結果が得られた。孤独感を性別で比較した先行研究では,孤独感に男女差が認められなかったという報告(青木,2001,pp.125-136)と,男性の孤独感が強いという報告(安藤・小池・高橋,2016,pp.1-9;舛田・田高・臺,2012,pp.25-32)があり,一定の見解が得られていない。孤独感と性別の関連については知見の蓄積が必要と考えられる。孤独感は,先に述べた定義のとおり主観的な経験である。そのため,例えば若い世代に比べて高齢者で,あるいは家族と同居している高齢者に比べて独居高齢者で孤独感が高いとは言えないとの指摘がある(藤原,2012,pp.693-696;Perlman・Peplau,1981,pp.31-56;豊島,2016,pp.13-23)。先行研究においても,年代や世帯構成によって孤独感に差がないことが報告されており(石谷・服部・水主,2014,pp.72-80;舛田・田高・臺,2012,pp.25-32;豊島・佐藤,2013,pp.29-38),本研究もこれを支持する結果となった。一方,高齢者の孤独感の関連要因については,青木(2001,pp.125-136)や古川・国武・野口(2004,pp.85-91)の報告においてうつやソーシャルサポート,生活満足度との関連が明らかにされている。本結果でも近所に頼れる人の人数や生活満足度,グループ活動の参加,主観的健康感,うつのリスク等と孤独感との関連が認められ,同様の結果となった。3.孤独感と閉じこもりリスクとの関連本研究では,孤独感と有意な関連の認められた項目(性別,近所に頼れる人の人数,主観的健康感,主観的体力,うつのリスク,家庭内の仕事,趣味の有無,グループ活動への参加,LSIK)を共変量として,閉じこもりリスクの程度別の孤独感得点を比較した。その結果,これらの因子に独立して,閉じこもりのリスクの3群間で孤独感得点に有意差が認められた。特に,孤独感は非閉じこもり群よりも閉じこもり予備群で有意に高く,閉じこもり群で有意に高い傾向にあった。この結果は,外出が減りつつある閉じこもり予備群の高齢者においても,孤独感が高まっていることを意味している。孤独感は,社会関係の量的あるいは質的な欠如に起因すると言われている(Perlman・Peplau,1981,pp.31-56)。梶原・牧(2008,pp.7-14)は,家族と15