ブックタイトル同志社看護 第2巻
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同志社看護 第2巻
体力測定会参加希望高齢者の閉じこもりリスクと孤独感との関連ロモーションの視点からの介護予防の展開が望まれる。実際,全国の市町村における介護予防の取り組みをみると,保健師が関与している市町村は約80%に及んでいる(厚生労働省老健局老人保健課,2015)。また,看護師の関与も約60%の市町村に見られ,看護職による介護予防に向けた支援は今後いっそう重要になるといえる。一方,高齢者の要介護リスクファクターのひとつに,閉じこもりがある。閉じこもりは,何らかの理由で外出をほとんどせず,主に自宅内のみを活動範囲(生活空間)としている状態であり,閉じこもりの状態からさらに活動範囲が狭小化すると寝たきりの状態に至ると言われている(安村,2006,pp.32-38)。したがって,看護職が介護予防の推進に取り組む上で,閉じこもり予防に向けた支援は必要不可欠といえる。厚生労働省によると,閉じこもりの判定には外出頻度が用いられ,外出頻度が週に1回未満の状態と操作的に定義されている(介護予防マニュアル改訂委員会,2012,p.16)。また,高齢者の閉じこもりの背景には,身体的,心理的,社会・環境要因があり,これらの複数要因が複雑に絡み合っていると考えられている(竹内,1984,pp.148-152)。閉じこもりや外出頻度に関連する要因について,これまでの報告によると,身体的要因には年齢(鈴川・島田・小林他,2010,pp.103-107),歩行能力(藤田・藤原・熊谷他,2004,pp.168-180;鈴川・島田・小林他,2010,pp.103-107),体力(山縣・木村・三宅他,2014,pp.671-678),転倒経験(藤田・藤原・熊谷他,2004,pp.168-180;中村・山田,2009,pp.29-38),体重や筋肉の減少感および下肢の痛み(渡辺・渡辺・松浦他,2007,pp.238-246)等が挙げられることが示されている。また,心理的要因にはうつ(藤田・藤原・熊谷他,2004,pp.168-180;椛・川口・酒井他,2011,pp.163-171)や健康度自己評価(渡辺・渡辺・松浦他,2007,pp.238-246)等が,社会・環境要因には就労の有無(藤田・藤原・熊谷他,2004,pp.168-180),他者との交流頻度(椛・川口・酒井他,2011,pp.163-171;渡辺・渡辺・松浦他,2007,pp.238-246)や近隣ネットワーク(藤田・藤原・熊谷他,2004,pp.168-180;中村・山田,2009,pp.29-38),家庭内での役割の数(椛・川口・酒井他,2011,pp.163-171),地域の人口密度(平井・近藤・埴淵,2008,pp.69-78)等があることが報告されている。したがって,閉じこもり予防のための対策を考える場合,閉じこもりの多様な要因を考慮した検討が求められる。一方,高齢者の心理的因子のひとつに孤独感がある。先行研究によると孤独感が低い,あるいはない者に比較して,孤独感が強い者で有意に要介護状態の割合が多いことや,孤独感の強さが死亡率に影響することが報告されている(Tilvis・Laitala・Routasalo,et al.,2011,pp.1-5)。孤独感とは,Perlman・Peplau(1981,pp.31-56)によると,個人の社会関係ネットワークが量的あるいは質的に著しく損なわれた際に起こる不快な経験と定義されている。また,孤独感について,第一に個人の社会的関係の不足から生じること,第二に主観的な現象であり,客観的な孤立とは必ずしも同義ではないということ,第三に不快そして悲惨な経験であることの3点を述べている。高齢者の孤独感の関連因子には,ソーシャルサポートやうつが挙げられる。豊島・佐藤(2013,pp.29-38)は,シニアカレッジに通う50歳以上の男女において年代間で孤独感の強さに有意差は認めなかったこと,および情緒的サポートの受領,提供と孤独感に関連があることを明らかにし,ソーシャルサポートの授受により孤独感という不快感情が低減することを示唆している。青木(2001,pp.125-136)は,60歳以上の在宅高齢者では男女ともにうつ傾向にある,生活満足度が低い,対人・自立的対処が高い,家族・親戚ソーシャルサポートが低いほど,さらに女性においては,友人・ソーシャルサポートが低いほど孤独感が強いことを報告している。うつやソーシャルサポートと孤独感の関連は,ハワイ在住の日系高齢者を対象とした調査からも同様の結果が報告されている(古川・国武・野口,2004,pp.85-91)。そして,これらは閉じこもりや外出頻度にも関連する要因である。そのため,閉じこもりと孤独感との間にも,何らかの関連があることが推察されるが,これらの関連を明らかにした報告は見当たらない。他方,高齢者の閉じこもりに関する研究の多くは,閉じこもりか否かの2群間で比較,検討がなされている。しかし,閉じこもりの発生を“予防”するという視点に立てば,閉じこもりには至らないがリスクの高い高齢者の特徴を捉えることに意義がある。特に,外出頻度が2~3日に1回程度の高齢者の身体的,精神的,社会的な健康水準が劣っているとの報告(藤田・藤原・熊谷他,2004,pp.168-180)もあり,外出頻度が週に1回未満の閉じこもりか否かで状態像を捉えるのではなく,外出頻度が減りつつある高齢者等,閉じこもり予備群に対象を拡張して閉じこもりを捉えることが,閉じこもり予防を検討する上で重要である。我が国の重要課題に高齢者の介護予防が挙げられる9