ブックタイトル同志社看護 第2巻

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概要

同志社看護 第2巻

同志社女子大学看護学部におけるキャリア教育の現状と今後の展望サニー・ハンセン(2013,p.48)は統合的ライフ・プランニングをする上で重要課題の一つに,「人生を意味ある全体のなかに織り込む」ことをあげている。働き方について,男女を問わず仕事とその他の人生の役割とのバランスを取りたいと考える人々が増えている。特に,妊娠・出産などライフイベントの影響を受けやすい女性について自己のニーズと働き方にどのように対処していくのか,また長期視点に立ち,女性が働くことを考える意識改革も含めた取り組みが必要である。この取り組みを通して,学生が将来を主体的に考え,時には修正しながら自分らしいキャリア形成を実現していく「キャリアプランニング能力」を身につけることが期待される。2)「課題に対応する能力」を高める取り組みの実施近年,学生の主体的な学びを引き出す,アクティブ・ラーニングやPBL(Problem-based Learning,またはProject-based Learning)と呼ばれる「問題解決型授業」を導入することが学校教育に求められている。学生自身が課題や問題を解決するための方法を考えるなどの能動的な取り組みを促す教育方法である。過去に他大学のキャリア科目においてPBLを導入する授業を行った経験がある。従来の学習方法と比較すると,学生が主体的に課題を発見する力,計画を立てる力,実行力,思考力や協調性など能動的な取り組みが顕著に見られた。PBLを学生時代に経験しておくことが,社会に出て生じる様々な課題に対応する能力や課題に向き合う姿勢を養うことにつながるであろう。キャリア科目だけではなく,導入が可能と思われるその他の科目でも「課題に対応する能力」を高めるPBLを導入することは望ましいと考える。3)生涯にわたるキャリア形成支援の実施少子・高齢化による労働力人口の減少が進む中で,次世代の担い手である学生を社会に円滑に移行させるとともに,移行後も生涯にわたり社会人・職業人としてのキャリア形成を支援していくことが社会的にも重要となってきている。学校は中核的な機関として保有する教育資源をいかし,生涯学習の観点からキャリア形成を支援する機能を果たすことが期待される(文部科学省,2011)と方向性が示されている。この観点から,社会に出たあとも卒業生のキャリア形成を支援する継続的な取り組みが望まれている。卒業した先輩が様々な分野で活躍する姿は後輩にとってロールモデルとなり社会で活躍する意欲を高め,キャリア形成を意識することにつながる。卒業生にとっても卒業後も母校にキャリアを支援される場をもつことは,自己の存在価値が認められ,その人らしさを尊重したキャリア形成の支援にもつながるのではないか。筆者自身,大学卒業後20年以上経った現在もキャリア支援でお世話になった母校の教員から届く母校のポストカードによる便りが働く上で励みになる等,大学によるキャリア支援の重要性を実感している。将来を見据えて,卒業生を含めたキャリア支援体制を進めることが,看護学部学生の社会における様々な分野での活躍と看護学部のさらなる発展につながるのではないかと期待する。Ⅵ.おわりに社会情勢が大きく変化しつづける中で,大学の役割として地域や社会をしっかりと支えていく人材を育てていくことが強く望まれている。同志社女子大学の京田辺キャンパスの門を入ると同大学の創立者であり,約130年前京都看病婦学校を開始した新島襄の建学の精神(岡山・眞鍋,2016)が行事や文化活動など様々な形で具現化され,今も息づいているように感じる。この環境に身をおいて大学生活を過ごす学生が,心理社会的課題を克服しながら,良心を持って知識や能力を活かし,将来様々な分野で活躍することは社会にも大きな貢献を果たすものになるであろう。看護学部におけるキャリア教育が,学生が社会の中で自分らしいキャリア形成の実現を支援するものとして,また「同志社女子大学らしい看護教育」の具現化に貢献するものとして,新島の建学精神や医療・看護への深い思いを忘れることなく,志をひとつにして教職員と連携しながら取り組んでいきたい。5