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概要

同志社看護 第1巻

同志社と看護学教育京都看病婦学校は,新島亡き後,同志社の手を離れ,医師佐伯理一郎にその運営は委ねられた。第二次世界大戦後,看護教育の新しい制度に切り替わるまで続いた。佐伯の看護職育成への志は,米寿記念の碑に刻まれている「受くよりも与うるは福也」の聖句からも偲ばれるようにキリスト教精神に基づいていた。看護学部は,このような新島や佐伯の看護職育成の深い志を引き継ぎ,そして当時導入された先進的な看護教育の原点を忘れることなく前に進んでいきたい。Ⅲ.看護学部のめざす教育同志社女子大学では,「キリスト教主義」「国際主義」「リベラル・アーツ」を教育理念として,伝統を大切にしながら,良心を持って知識や能力を発揮し,社会の礎となって活躍する,自立した女性を育むことをめざしている。また,「同志社女子大学の学生に卒業までに身につけてもらいたい10の力(DWCLA10)」としてあげられている分析力,思考力,創造力,プレゼンテーション力,コミュニケーション力,リーダーシップ,思いやる力,変化対応力,自己管理力,自己実現力の職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な社会人基礎力の育成をすすめている。看護学部では,これらを基盤として,看護職育成のための教育課程を構築している。その大きな柱は「看護実践能力の育成」である。1)総合的なヒューマンケアに基づく看護実践能力の育成本学の看護学部がスタートした2015年春には,全国の看護系学部・学科は240を越え,全大学の4分の1以上が同学部・学科を有する時代となった。これは1992年の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」公布以降,約20年間の急激な出来事であり,この動きは当分続きそうな勢いでもある。この背景の大きな要因として,少子超高齢化,医学・医療の高度化,人々の価値観の変化等,社会の多様な変化により,高度な専門性を備えた看護職が社会から求められていることがあげられる。この社会的要請に対応するために,数年来,厚生労働省では看護教育制度や看護基礎教育の内容・方法の検討が進められてきた。あわせて,文部科学省や看護系大学協議会を中心とした関係者による検討会が重ねられ,学士課程における看護基礎教育の在り方について,一定の方向性が提示された。すなわち,「看護基礎教育における看護実践能力育成の充実」である。「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会報告書」(文部科学省,2011)において,看護学士課程では「長い職業生活においてあらゆる場,あらゆる利用者のニーズに対応できる応用力のある国際性豊かな看護系人材の養成を目指すこと」を基本的な姿勢とし,コアとなる「看護実践能力と卒業時到達目標」を改めて提言した。これは,学士課程修了時に看護専門職者として修得すべきコアとなる5つの能力(ヒューマンケアの基本に関する実践能力,根拠に基づき看護を計画的に実践する能力,特定の健康課題に対応する実践能力,ケア環境とチーム体制整備に関する実践能力,専門職者として図1看護実践能力の構造(松谷ら,2010,p.21)3