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概要

同志社看護 第1巻

4)困難事例の検討から意思決定に言及した文献専門員が行う居宅介護支援における困難事例あるいは困難状況を検討する中で,意思決定に言及した文献が5件であった。これらは,専門員が困難と感じる状況に意思決定に関する事柄が多く含まれることを示すものであり,対象文献に含めた。斎藤・佐藤(2006)は,専門員がケアマネジメントを行う上で対応困難度が高いものは「虐待ケースの対応」,「独居認知症者へのケアプラン立案」であり,経験頻度が高いものは,「退院決定から利用開始までが短期間のサービス調整」,「家族内の意見が不一致の際の意見調整」,「利用者に利用拒否のある場合の説得」であった。困難感,経験頻度ともに高かったものに,「家族の意見調整」,「利用者・家族の利用拒否への対応」等が挙げられた。専門員全般に対する研修に含め,専門員の個別支援にも重点を置くなど,対応困難の実態や専門員の特性に合わせた支援の必要性を述べている。吉江・齋藤・高橋(2006)は,専門員がケース対応について抱く困難感と,個人・事業所特性等との関連を検討することを目的に,吉江らが作成した困難を感じる可能性のある12類型「認知症」,「独居」,「家族関係不良」,「苦情・要求過多」,「意向にズレ」,「経済的問題」,「サービス拒否」,「キーパーソン不在」,「医療依存」,「精神障害」,「虐待」,「事業所との関係不良」を用いて調査した。ケース対応に関する困難感は,「認知症」,「独居」,「家族関係不良」,「苦情・要求過多」,「意向にズレ」の順で多い結果であったと報告した。長谷川(2007)は,専門員が保健師の関与を要請する事例をもとに,困難事例の問題構造を捉えようとした。「本人の事例のニーズが充足できない問題構造を「本人・家族」,「ケア提供者」,「社会資源」という要素間の関係から分析した結果,「本人の対処機能が低い」,「家族の対処機能が低い」「ケア提供者の援助機能が低い」「本人の問題と近隣者の思念に不均衡が生じている」の4つを挙げ,そこから1本人・家族の拒否等により「本人・家族」と「ケア提供者」,「社会資源」の間の繋がりが断たれている,2ケア提供者が本人・家族のニーズを把握して必要な社会資源を判断しないために適切な社会資源を調整できない,3本人・家族の多様なニーズに応じて様々な社会資源が必要となっているため,社会資源を整えることが困難,という状況にあることを報告した。兪・清水・神部(2012)は「ケアマネジメントで最も時間を要する事例」の抽出から,利用者と家族の特性を明らかにした。利用者は「医療的ニーズ」,「認知機能・意欲の低下」,「行動・心理状態の不安定さ」,「過剰な要求」,「介護サービスに対する否定的態度」の5つがあり,家族には「介護負担感」,「介護力の脆弱性」,「家族間の意向の違い」,「家族のパーソナリティ特性」の4つの特徴が挙げられた。家族間や利用者と家族の間の意見調整などで多大な時間を要することを指摘した。鈴木・山中・藤田(2012)は,介護サービスが必要であるにもかかわらず利用に至らない高齢者に関して,「生活の変化に対する抵抗」,「親族の理解・協力の不足」に,「手続き・契約における能力不足」,「インフォーマルサポートの不足」や本人の「受診に対する抵抗」の問題が重なり,介護サービスの導入が困難になっていることを報告した。これら5件の文献では,専門員が行う居宅介護支援を困難にする要因として,家族間での意向の不一致や本人のサービス拒否に関する記述が多く挙げられた。支援が困難になる状況には意思決定に関する様々な問題,すなわち本人のサービスに対する拒否感等の個人的問題のみならず,サービスの不足や近隣との関わり等の社会的問題が複雑に絡んでいることが示唆されている。2.専門員の特性(基礎資格,性別,経験年数)に言及した文献11件の文献のうち,専門員の特性に言及したものは3件であった。吉江・齋藤・高橋(2006,p.36)は介護支援専門員がケース対応について抱く困難感と,基礎資格,経験年数,性別などの個人特性の関連を検討した。困難を感じる可能性のある12類型「認知症」,「独居」,「家族関係不良」,「苦情・要求過多」,「意向にズレ」,「経済的問題」,「サービス拒否」,「キーパーソン不在」,「医療依存」,「精神障害」,「虐待」,「事業所との関係不良」のうち,基礎資格でみると,「看護職」は「介護職」「その他」に比べ「医療依存」,「精神障害」に関して困難を感じる割合が低く,性別では男性に「医療依存」で困難を感じる割合が高かった。経験年数が長いほうが「意向にズレ」,「サービス拒否」,「精神障害」以外の9類型で困難を感じる割合が高く,担当するケース数が多いほうが,「意向にズレ」,「事業者との関係不良」以外の10類型で困難を感じる割合が高いと報告した。齋藤・佐藤(2006,p.12)は,ケアマネジメントを行う上で対応困難と感じる程度,頻度を特性で検討し,基礎資格では「身体疾患をもつ介護者への対応」,「認34