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概要

同志社看護 第1巻

尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会』の実現を目指すものであり,標準的な認知症ケアパスを構築することが基本目標の一つとされた(厚生労働省,2015)。認知症ケアパスは「適時適切なサービスを提供し,地域で安心して暮らし続けること」を目的とするものである(遠藤,2015,p.127)。しかし,認知症の人と家族にとって,適時適切なサービスを決めることが実はとても難しいことである。認知症の人の意思決定においては,医療的行為,特に胃ろうに関する議論が進みガイドラインも作成されている。また,成年後見制度や日常生活支援事業なども認知症の人の意思決定支援に貢献している。このように「医療や財産に関する重大な決定」や「日常生活での決定」については支援が進んできている。しかし,認知症罹患後には,「医療や財産に関する重大な決定」と「日常生活での決定」と共に,住む場所や介護に関する決定,すなわち介護サービス利用や施設入所などの生活上の重要事項に関する決定が必要となる。認知症の人と家族の現在の生活の質あるいは人生の質には,このような事項が大きく関連すると思われるが,皮肉なことに認知症の人の場合は病状の進行とともに決定の困難性は増してくることが予想される。そこで本研究では,介護サービスの利用が必要となった時に,主として関わる介護支援専門員(以下,専門員とする)が,認知症の人の意思決定においてどのような支援を行っているのか,文献をもとにその現状と課題を明らかにすることを目的とした。Ⅱ.方法1.対象文献の抽出方法文献選定に用いたデータベースは医学中央雑誌Web版(以後,医中誌)およびCiNii Artclesである。検索は平成27年9月2日に実施し,検索対象期間は介護保険法が導入された2000年から2015年8月までとした。まず「介護支援専門員」「認知症」「意思(意志)決定」のキーワードで検索したところ,医中誌では4件,CiNii Artclesでは1件であった。「介護支援専門員」の代わりに「居宅介護支援」を入れるとそれぞれ1件,0件となり,「ケアマネジメント」では12件,0件であった。そのうち,会議録,総説・解説,重複したものを除くと,4件が抽出された。そこで,専門員の行う支援には意思決定に関わる支援が多く含まれると当然予想されることから,「意思決定」のキーワードを外し,「介護支援専門員」「認知症」で検索すると,医中誌では571件,CiNii Artclesでは56件であった。そのうち,会議録,総説・解説,重複したものを除くと,111件,12件であった。これらの中から専門員が行う認知症の人の意思決定支援に関する文献8件を選定し,ハンドサーチした3件と合わせ,合計11件を分析対象とした。なお,介護保険制度についてはドイツ,韓国等にも類似の制度があるが,制度の内容及び専門員の在不在,その役割等異なる部分が多いため,国内のみの文献に限定した。2.対象文献の分析方法データベースによる抽出およびハンドサーチした11件の文献を精読し,研究目的,対象,方法,結果について整理し,一覧表(表1)を作成した。文献の内容を,認知症の人の意思決定における専門員の支援について,類似性に従って分類し検討を行った。さらに,専門員の特性によって支援に差があるかどうかを検討するため,専門員の特性に言及した文献について整理した。Ⅲ.結果1.文献の内容による分類データベースによる抽出およびハンドサーチした11件の文献を類似性に従って分類すると,認知症の人に対する説明・同意とその影響を検討した文献,認知症の人への支援から意思決定について言及した文献,高齢者の意思決定支援に関する文献,困難事例の検討から意思決定について言及した文献の4つに分類された。1)認知症の人に対する説明・同意とその影響を検討した文献意思決定においては,まず意思決定に必要な情報が提供されることが条件の一つであり,認知症の人に対する説明・同意の方法や現状に焦点を当てた文献は2件であった。渡邊・今井・鈴木(2009)は,認知症の人本人に対して専門員がサービス提供に際し行っている説明の現状と課題を明らかにする目的で実態調査を実施した。サービスの依頼や希望は家族介護者からが多く,大半の専門員はケアプラン説明時に家族の同席を求めていた。本人への説明の実施については,すべての利用者に説明を実施するが2割,ほとんどの利用者に説明を実施するが5割,一部の利用者のみに説明を実施するが3割であった。説明を行っている認知症の人の日常30