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概要

同志社看護 第1巻

「私自身の生活を脅かす」,コントロール可能性は,状況を自分でコントロールできると思うことができるかであり「どのように対処したらよいかわかっている」「平静な気持をすぐ取り戻すことができる」の項目で測定される。認知的評価の傾向がストレスに関係するかどうかは,同じ状況について評価することが必要である(杉浦浩・宇田・杉浦春,2008,p.19)ことから,調査時期である産後4週に育児で体験することの多い状況として「あなたは産後1ヶ月です。赤ちゃんは昼間によく寝て,夜間泣いていることが多く,あなたは寝不足です。授乳は母乳のみですが,ここ1週間,授乳直後から大泣きすることが多いです。」といった夜間や授乳後の児の啼泣をストレッサーとして設定した。そして,この状況が自分に起こっているものと想定した上での認知的評価の回答を求めた。また,想定された状況のストレス度について「とてもストレスである,ややストレスである,どちらでもない,ほとんどストレスではない,ストレスではない」の5件法で回答を求めた。4)コーピング尾関(1993)のコーピング尺度を使用した。これは3下位尺度からなり,もっとも重要なストレッサーに対するコーピングを簡便に測定でき,積極的なコーピングとしての問題焦点型5項目,情動焦点型3項目,消極的コーピングとしての回避・逃避型6項目である。問題焦点型コーピングは,情報収集や再検討等の問題解決に直接関与する行動であり,「現在の状況を変えるよう努力する」「問題の原因を見つけようとする」等の項目,情動焦点型コーピングは,ストレッサーから惹起された自らの情動反応に焦点をあて,注意を替えたりして気持ちを調節するための行動であり,「物事の明るい面をみようとする」「今の経験はためになると思うことにする」,回避・逃避型コーピングは,不快な出来事から逃避したり,否定的に解釈する等のいわゆる消極的な行動であり,「時の過ぎるのにまかせる」「なんらかの対応ができるようになるのを待つ」等の項目で測定される。回答方法は「全くしない;0点~いつもする;3点」の4件法である。下位尺度毎の素点の合計を下位尺度得点とした。得点範囲は,問題焦点型0~15点,情動焦点型0~9点,回避・逃避型0~18点であり,高得点の方が,コーピングの利用頻度が高いことを示す。認知的評価と同様に夜間や授乳後の児の啼泣に対するコーピングについて回答を求めた。5)ストレス反応今津ら(2006)のPublic Health Research FoundationStress Check List Short Form(PHRF-SCL-SF)を用いた。これは,ストレス反応の身体的症状と心理的症状を同時に測定でき,不安・重責感,身体症状,自律神経系不調和,疲弊・うつの4下位尺度各6項目,全24項目から構成されている。不安・重責感は,「何かするときうまくいかないのではないかと不安になる」「物事を積極的にこなせない」等の項目,身体症状は,「体がだるくなかなか疲れがとれない」「肩がこったり首すじがはることがある」,自律神経系不調和は,「急に息苦しくなる」「動悸が気になる」等の項目であり,疲弊・うつは,「人を信じられないことがある」「将来に希望を持てないことがある」等の項目で測定される。回答方法は「ない:0点~よくある:2点」の3件法であり,下位尺度毎の合計を算出しストレス反応下位尺度得点とした。得点範囲は0~12点であり,得点が高いほど症状が強いことを示す。4.用語の定義育児ストレスとは,Lazarus & Folkman(1984)のストレスの心理学的モデル(図1)に準じて,育児ストレッサー,認知的評価,コーピング,ストレス反応を総称する。育児ストレッサーとは,母親が感じる育児に関する心理的ストレス要因のことであり,それらは母親の心身に影響を及ぼすものである。認知的評価には,2つの評価があり,一次評価は,与えられた状況が自分にどれほど脅威を及ぼすかの判定であり,二次評価は,その後にどのコーピングが選択されるかの判断である。コーピングとは,ストレッサーに対して使用する対処方法のことであり,積極的な問題解決にむけた対処である問題焦点型,感情のコントロールを行う一次評価ストレッサー認知的評価コーピング二次評価ストレス反応適応図1 Lazarusの心理学的ストレスモデル図1 Lazarusの心理学的ストレスモデル221.20.8不安・重責感身体症状自律神経系不調和