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概要

同志社看護 第1巻

初産婦における育児ストレスの特徴話相談に関する調査で,最も利用が多いのは産後1ヶ月未満の初産婦であると指摘している。さらに,山田ら(2012,pp.598-599)は,140名を対象にした産後1ヶ月までの縦断調査により,初産婦は経産婦より不安は強く,その不安は,時間の経過とともに軽減する傾向にあること,初産婦は,産後1ヶ月では母親役割に慣れることができず不安が強いことを示している。また我々は,初産婦を対象とした産後1週と4週における縦断調査において,産後1週でストレス反応が強い褥婦は,4週においても育児ストレッサーが強く,ストレス反応も持続すること,夜間の授乳後の児の啼泣を約9割がストレスと認知しており,その状況に義務や責任感は低く,コントロールできないと感じており,積極的な問題解決や気分転換のコーピングの活用も少ないことを明らかにした(大野・眞鍋,2013,p.187)。これらから,初産婦において産後1ヶ月までの時期は,非常にストレスフルな状況であり,産後1週間の入院期間中に疲労感や不安などのストレス反応を把握し,予防的な介入の必要性が示唆された。そこで,本研究では,産後1週間の入院中や1ヶ月健診時に把握可能な身体的,心理的ストレス反応が強い状態にある初産婦の特徴を明らかにするために,産後4週までのストレス反応の変化と育児ストレッサー,その認知的評価やコーピングとの関連を明らかにする。本研究によって,産後1ヶ月までに重点的な継続フォローの必要な初産婦の特徴が明らかになると共に,育児ストレスに対する具体的な支援の提案により,良好な母子関係の構築に寄与できると考える。Ⅱ.方法1.対象者と調査期間対象は,2010年3月~9月に近畿圏の政令指定都市の産科医療施設にて出産した褥婦282名,ただし精神疾患合併及び児がNICUに入院になった褥婦は除いた。調査期間は,同年3月~10月であった。2.調査方法調査時期は,産後1週と4週の2回であり,研究に同意が得られた褥婦に自記式質問票を配布した。1週時は産褥入院中の対象者に調査票を手渡し,回答後回収した。4週時は1週時に協力の得られた対象者に対して,産後1ヶ月健診受診時もしくは郵送にて配布し,自宅での記入後に郵送にて回収した。3.調査内容産後1週は,属性とストレス反応,産後4週は,育児ストレッサー,認知的評価,コーピング,ストレス反応について調査した。1)属性年齢,産褥日数,分娩様式,産後の生活場所(自宅,実家)2)育児ストレッサー吉永ら(2006)の育児ストレッサー尺度(資料1)を使用した。これは乳幼児期に共通の育児ストレッサーを測定できる尺度であり,親としての効力感の低下,育児による拘束,サポート不足,子どもの特性,育児知識と技術不足の5下位尺度,各5項目の25項目から構成されている。親としての効力感の低下は,「子どもがうまく育てられない」「母親にむいていない」等の5項目,育児による拘束は,「やりたいことを我慢する」「自由な時間がない」,サポート不足は,「夫からの言葉かけが少ない」「育児を1人でしている」,子どもの特性は,「かんしゃくを起こす」「よく泣いてなだめにくい」,育児知識と技術の不足は,「受診のタイミングがつかめない」「何でも話せる友達がいない」等の項目である。回答方法は,経験頻度(よくある:4点~ほとんどない:1点)とその程度(とても気になる:4点~ほとんど気にならない:1点)の4件法であり,経験頻度と程度を乗じた値を下位尺度毎に合計したものを育児ストレッサー得点とした。得点範囲は5~80点であり高得点ほど育児ストレッサーが強いことを示す。3)認知的評価鈴木ら(1998)の認知的評価測定尺度を使用した。これは,日常生活において経験する主要なストレッサーに対する認知的評価の測定が可能である。コミットメント,影響性の評価,脅威性の評価,コントロール可能性の4下位尺度,全8項目からなり,各項目「全くちがう:0点~その通りだ:3点」の4件法で,各下位尺度の得点範囲は0~6点である。得点が高いほど状況を強く認知していることを示す。コミットメントは,状況に対する義務や責任感に関することであり「なんとか改善したい」「改善するために一生懸命努力しよう」の項目,影響性の評価とは,状況が自分にどの程度影響を及ぼすかであり「私自身に影響を与える」「私にとって重要なことだ」,脅威性の評価は,状況が自分にどの程度脅威を及ぼすかであり「私を危機に陥れることだ」21