ブックタイトル同志社看護 第1巻
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同志社看護 第1巻
Key Words:Independent Elderly Citizens,Falls,Related Factors,Everyday Life Sphere NeedsAssessment抄録目的:地域在住の自立高齢者を対象に2年間の追跡調査を行い,転倒経験の有無とその関連要因を分析した。方法:京都府亀岡市在住の自立高齢者で,2011年の日常生活圏域ニーズ調査と2013年の体力測定の両方に参加した533人について分析した。調査内容は,基本属性の他,日常生活圏域ニーズ調査25項目を用いて,1運動機能,2低栄養,3口腔機能,4閉じこもり,5物忘れ,6うつ傾向,7手段的日常生活動作(IADL)の7つの判定項目を設定した。分析は,性,年齢と転倒経験との関連を分析した後,転倒有無を従属変数,年齢を共変量,各判定項目それぞれを独立変数とするロジスティック回帰分析により転倒に関連する要因を把握した。また,7つの判定項目を一括投入するロジスティック回帰分析により転倒への独立した影響を分析した。結果:追跡2年間において,少なくとも1回以上転倒のあった者は35.5%であった。女性は男性より転倒した者がやや高率であったが有意差はなく,後期高齢者は前期高齢者より有意に高率であった。転倒と各判定項目との関連は,男性では,運動機能,口腔機能,物忘れ,うつ傾向において有意差がみられ,とくに運動機能は,他の要因の影響を調整しても強い関連を示した。女性では,うつ傾向とIADLの高い者に有意な関連がみられ,他の要因の影響を調整した分析では口腔機能の低い者,IADLの高い者に有意な関連がみられた。考察:地域在住の自立した高齢者であっても,加齢により転倒しやすくなることが示唆された。また,転倒に関連する要因において,男性と女性とで異なった様相を呈し,性による特性や背景を考慮した転倒予防対策が必要であると推察された。キーワード:地域在住自立高齢者,転倒,関連要因,日常生活圏域ニーズ調査Ⅰ.緒言諸外国に類を見ない速度で高齢化が進行するわが国にとって,高齢者の健康維持とクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上は保健医療福祉の観点から最重要課題となっている。厚生労働省によると,高齢者の要支援・要介護認定の原因の約10%はけがや転倒で占めており(厚生労働省,2005),高齢者の健康とQOL向上のためには,転倒予防対策がきわめて重要である。転倒の発生頻度は,各国によって幅があるものの,世界的には65歳以上の約28~35%が過去1年間に転倒している(WHO,2008/2010,pp.1-2)と報告されている。わが国では,高齢者の約20%が毎年転倒したとの報告があり(川上・加藤・太田,2006,pp.7-18),地域在住の高齢者では12.7%~20.8%となっている(新野,1999)。性別では,過去1年間の転倒経験は,男性よりも女性に多いとする報告(新野,1999,新野・小坂井・江藤,2003,pp.484-486)と,男性と女性で差がなかったという報告(安村,1999,pp.1945-1949;村木・阿久根・岡他,2012,pp.138-147)があり,性差の見解は一致していない。年齢との関連では,高齢になるにしたがって転倒の発生率は上昇するが(新野・小坂井・江藤,2003,pp.484-486;安村,1999,pp.1945-1949),この傾向はとくに女性に顕著で,男性においては有意な関連が認められなかった(村木・阿久根・岡他,2012,pp.138-147)との報告もある。いずれにしても転倒は,高齢者にとって健康阻害の重要なリスクファクターであることは明らかであり,社会問題としても見逃すことのできないものとなっている。また,転倒はさまざまな要因によって発生し,年齢,性別,人種,疾患などの生物学的リスク,多剤服薬や過度のアルコール摂取,運動不足などの行動的リスク,家庭や公共施設などの環境的リスク,低所得,教育レベルなどの社会経済的リスクが指摘されている(WHO,2008/2010,pp.11-22)。これらの要因を多面的に検討するためには,身体面,精神面,社会面を総合的に把握する必要があり,厚生労働省の提唱する基本チェックリストは,これらの情報を得るためにきわめて有用であるといえる。厚生労働省が提唱する基本チェックリストは,要介護認定をスクリーニングするために作成された25項目からなる調査票で,約1万人を対象に実施した調査結果をふまえて作成され(鈴木,2009),一定の手法による特定高齢者の決定および自治体間の介護予防事業の効果を比較評価する際に活用することを想定している(厚生労働省,2010)。また,こ10