ブックタイトル同志社看護 第1巻
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同志社看護 第1巻
た,卒業直前の看護系大学生を対象に「看護職キャリアの可能性」のテーマでキャリアデザインに関する特別講義を試みたところ,参加者は少なく,参加学生からは「キャリアと聞いて私には程遠いと感じていた」と感想もあった。このような状況から看護学生は,就職に対する不安が少ない反面,自分自身のキャリア開発や将来ビジョンを深く考える機会を逸していることを実感した。これらの経験から,低年次からキャリア教育・学習として正課内の科目と正課外の活動を位置づけて体系化することの必要性を痛感している。看護学部では,主体的なキャリアの構築をねらいとして,看護実践総合演習の科目内で入学時から学年の進行に合わせた段階的な教育を計画している。看護職には様々な職種や活動の場があるとともに,各個人の能力および生活(ライフサイクル)に応じてキャリアをデザインし,自己の責任でその目標達成に必要な能力の向上に取り組むことが求められることの必要性に気づき,その素地を身につけていけるように内容を工夫している。具体的には,キャリアカウンセラーによる講議や先輩看護職による看護の魅力に関する講演を取り入れ,学生の個人ワークやグループワークによる年間目標の設定とポートフォリオの作成を行っている。さらに,4年間の継続した担任教員(アドバイザー)の個人面談の際にもポートフォリオをひとつの資料として,学生の成長を確認している。これらのキャリアの主体的な構築への取り組みは,看護実践能力のなかの専門職者として研鑽し続ける基本能力や専門職能開発力の修得に大きく寄与すると考えている。看護専門職が社会情勢の変化に応じて社会から期待される役割を果たし対応するためにも,学生自身が,在学中に将来の方向性に関心を寄せて,自らの力で学び続ける素地を身につけることを期待している。5)主体的な学修力を育むPSCの設置とICT活用看護学の講義・演習・臨地実習での学びに加え,学生がいつでも自由に看護学の知識や技術の基本をくり返し学習できるような学習環境を整備している。ハード面では,プラクティカルサポートセンター(PSC)を設置し,各種看護教育用シミュレータ・トレーニングモデルや医療機器,備品などを整備しており,医療現場を模した環境で安全かつ効果的に繰り返しのトレーニングができる。またPSCには専任のインストラクターが常在しており,学生のトレーニング中のサポートやきめ細やかな学習ニーズへの対応を行っている。また,PSCは,薬学部との連携で,チーム医療を学ぶ場としての活用も計画している。学生にはiPadを貸与し,デジタル書籍や教材の活用をすすめている。オンラインツールとしては,看護技術e-learning,国家試験の学習支援e-learningや疾患の診断・治療方針,治療薬情報,診断アルゴリズム,検査・処方例,ガイドラインなどの最新の情報が確認できるツールを提供し,いつでもどこでも学習できる環境を整備している。Ⅳ.おわりにある日の看護学関連の授業で,F.ナイチンゲールの著「看護覚え書き」(2014)を用いての講義がなされていた。この著は1859年に出版されたもので,看護のバイブルのように,現在でも全世界の看護職者をはじめ保健医療関係者に広く読まれている。130年前,京都看病婦学校においても,この著と同様な内容が教授され,実践されていた足跡がある。その両者のつながりを思うとき,「同志社看護の夢,今ふたたび,そしてさらに大きく」進もうとしていることを感ぜずにはいられない。そのためにも,看護学部では,新島の看護職育成の深い志や当時の先進的な看護教育の原点を忘れることなく,総合的なヒューマンケアに基づく看護実践能力のある看護専門職の育成をめざして,教職員のみならず学生達と共にしっかりと歩んでいきたい。6