ブックタイトル同志社看護 第1巻
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同志社看護 第1巻
同志社と看護学教育いて日常展開される患者とのコミュニケーションや生活援助,観察などあらゆる状況が対象となる。多様な状況をシナリオにできることから,学生が臨地実習で遭遇することの多い場面に加え,臨地実習では経験が難しい状況も取りあげることができる。シナリオに基づき臨床現場を疑似体験することにより実践力を身につけて,臨地実習に臨み,実際の現場や対象者さんからでないと学べないことへの気づきによるスキルアップを目指している。これらの学習成果は看護OSCEで確認する。OSCEは限られた時間内に,模擬患者さんを対象に看護の提供を行う。シミュレーション学習と同様に臨床現場の模擬体験であるが,評価者(教員や臨床看護師)による評価といった能力試験の要素も加味されるため,学生は緊張度の高い中での看護実践能力の発揮を求められる。そして,学生は,体験に基づいた気づきに加え,模擬患者さんや評価者からのフィードバックにより,自らの強みと弱みなどの学習状況を把握し,自己の学習課題を明らかにする。学習課題は,看護技術e-learningやプラティカルサポートセンター(スキルス・ラボ)などの学習環境を活用してワンステップずつ実践力を身につけることにより達成していく。看護学部で,これらシミュレーション学習や看護OSCEに,特に力を注いでいる理由は2つある。1つは,現行の看護基礎教育課程では,講義や演習での学びを統合して実践する場が,臨地実習だけでは必ずしも十分ではなくなっていることが挙げられる。すなわち,臨地実習において,学生は,看護職者が行う実践の中に身を置き,看護職者の立場でケアを行う。看護実践に不可欠な援助的人間関係形成能力や専門職者としての役割や責務を果たす能力は,看護サービスを受ける対象者と相対し,緊張しながら看護行為を行う過程で育まれていくものである。しかしながら,臨床現場は,患者さんにとっては療養生活の場であり,学習者である学生のために時間をかけるなどの学習環境は常に保障されるわけではない。それを補う意味でも,シミュレーション学習を積極的に取り入れ,模擬患者やモデルを用いることで学習者を中心とした教育の展開ができる。学生は,失敗を恐れることなく,時間をかけて繰り返しトレーニングもできる。このような安全で安心な学習環境では,学生も主体的に知識を補い,専門的な技術を向上させることができると考えている。もう1つの理由は,現行の学士課程での教育上の大きな課題は,大学と臨床現場との乖離があり,それを埋めるための努力が必要ということである(眞鍋,2011,p.794)。臨地実習において,学生はひとりの患者さんを受け持ち,実際の看護を展開するが,複数の患者さんを同時に受け持つ機会はほとんどない。しかし実際には,就職後すぐに複数の患者さんの受け持ちを求められる。新人看護師は,複数の行為や人との関わりの中での優先度を考えながら行動するといった多重の課題や時間が切迫した状況のもとでの適確な優先順位と迅速な対応が難しい段階である。さらに,臨地実習では身体的侵襲を伴う採血などの処置は,学生であるために制約される現状にあることから,シミュレーションやOSCEでは,臨地実習で十分に経験ができない状況や技術についても,現場のリアリティのあるシナリオを作成することにより学修することができると考えている。このように,看護実践総合演習は,認知領域,情意領域,精神運動領域の能力を総合的に学修できることだけでなく,現在の看護基礎教育の大きな課題である看護実践能力育成や大学と臨床現場との乖離を埋めることのできる有用なプログラムであると考えている。4)キャリアを主体的に構築する力の育成本学看護学部では,学生全員が看護師の指定規則に対応した教育課程を学修する。また,一部の学生は保健師の指定規則や養護教諭一種の教職課程に対応した教育課程を学修し,卒業後は看護師,保健師,養護教諭として就職あるいは大学院や助産師養成機関に進学する。保健師や養護教諭の就職状況はやや厳しいものの看護師の有効求人倍率は約2.5~3.0倍という高い数字で推移している。すなわち,看護師での就職を希望する学生にとっては,就職先を探す苦労や不安は少ない。また,大学で学んだ専門性が就職に直接結びつくことや在学中の臨地実習では,実際の医療現場で実践的な学修をするので,学生時代から卒業後の像が描きやすいという特徴もある。一方,これまでの看護学生の就職相談の経験から,看護職に就くことには揺らぎがなくても,具体的な目的や目標を抱いているのではなく,何となく就職先を選んでいる学生も多いことを感じていた。ま5