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概要

同志社看護 第1巻

研鑽し続ける基本能力)と20の看護実践能力とそのために必要な教育内容を示すものである。看護実践能力については,他にもいくつかの概念が紹介されているが,その中で,松谷ら(2010)は,30件の英文献の検討から,看護実践能力とは,「知識や技術を特定の状況や背景の中に統合し,倫理的で効果的な看護を行うための主要な能力を含む特質であり,複雑な活動で構成される全体的統合的概念である」と定義づけ,潜在的能力コンピテンスを前提とした基準を満たす行為コンピテンシーと説明している。さらに,看護実践能力を7要素に分類し,大きく3つの主要能力構造として図式化している(図1)。それは,1人々を理解する力(知識の適用力,人間関係をつくる力),2人々中心のケアを実践する力(看護ケア力,倫理的実践力,専門職者間連携力),3看護の質を改善する力(専門職能開発力および質の保証実行力)である。看護学部では,この検討会や松谷らによる看護実践能力の考え方を取り込み,看護学に関する高度な知識と技術に加え,幅広い教養や人間の尊厳に基づく高い倫理観を学び,総合的なヒューマンケアに基づく看護実践力育成をめざしている。2)系統的で段階的なカリキュラムの構築看護学部の教育課程は,同志社女子大学の理念のもと,「学士力と看護実践能力の育成」をめざしている。そして,大きく「全学共通科目」と「学科科目」から構成し,系統的で段階的な履修ができるように工夫している。「全学共通科目」は,大学の教育理念に関わる「共通学芸科目」「キリスト教・同志社科目」「外国語科目」「スポーツ・健康科目」の構成となっている。ここでの学びを通して,総合的・学際的知識や幅広い教養の修得をはかり,自らの専門知識を得るだけではなく,様々な角度からの考え方を学ぶことで,総合的な理解力を養う。主に1年次で学修する。「学科科目」では,看護学の隣接科目である医学や社会保障に関わる「専門基礎科目」,看護学関連の「専門科目」から構成されており,前者は「人体の構造と機能科目」「健康支援と社会保障科目」,後者は「看護基礎科目」「看護展開科目」「看護探究科目」と系統的な科目構成となっている。これらの科目を4年間で,段階的で丁寧な積み重ねによって学修する。すなわち,1年次では看護学の基礎となる「専門基礎科目」や「専門科目」の「看護基盤科目」,2・3年次はそれらに加えて健康状況に対応した看護方法を専門領域別に具体的に学修する「看護展開科目」,4年次には看護学をより深く学ぶ「看護探究科目」を履修する。看護学の基礎的知識や看護方法などは講義や演習,臨地実習では看護の実際を学修する。臨地実習は1・2年次に基礎看護学実習,3年次には各専門領域の看護学実習,4年次は学生が希望する専門領域での看護実践総合実習を行う。なお,学科科目は看護師,保健師(選択制)の国家試験受験資格を得るために必要な科目,また養護教諭第一種免許の資格取得(選択制)に必要な科目を含んでいる。3)看護実践能力を育む看護実践総合演習看護学部では,看護学の専門的な知識・技術・態度を段階的に積み上げる形で学び,総合的なヒューマンケアに基づく看護実践能力が修得できるように工夫している。中でも,1~4年次まで一貫して実施する「看護実践総合演習」は,既習の学習内容を統合して「知る」「わかる」から「実践できる」看護力の育成を目指している。その主なねらいは,1看護職としての基本的な姿勢の形成,2臨床判断能力とそれに基づく看護実践能力の修得,3キャリアを主体的に構築する力の修得であり,それらを有機的に結びつけながら段階的に進める。看護学部の全教員が専門領域を越えての担当者となり,学生個々の学習進度を確認しつつ,しっかりと修得できるようにサポートしている。1看護職としての基本的な姿勢の形成,2臨床判断能力とそれに基づく看護実践能力の修得については,シミュレーション学習や看護OSCE(客観的臨床能力試験)において,既習の知識,技術,態度の統合による修得をめざしている。シミュレーション学習は,臨床の現場で起きる様々な出来事という素材をシナリオという教材に変えて学ぶものである(阿部,2009)。シナリオとなる素材は,臨床にお4