2019年度 現代社会学部公開講演会

2019/06/03

2019年度現代社会学部公開講演会
演題:「ひとりでできるもん!」って、ホントなの?
  ~〈弱いロボット〉の研究からみた「ひとらしさ」とコミュニケーション~
講師:岡田美智男先生(豊橋技術科学大学 教授、同大学人間・ロボット共生リサーチセンター長)
日時:2019年5月29日(水)15:00-16:30

現代社会学部社会システム学科・現代こども学科、および学芸学部メディア創造学科の学生、教員合わせて、約150名の参加者があり、実り大きい講演会となった。講演内容は、ロボット研究を通して、人間・コミュニケーション・教育の本質を考えさせられるものであった。概要は以下の通り。


自分ではゴミを拾えないけれど、子どもたちの手を借りながら、結果としてゴミを拾い集めてしまう〈ゴミ箱ロボット〉。もじもじしながらポケットティッシュを渡そうとする〈アイ・ボーンズ〉というロボット。人の目を気にしながらオドオドと話そうとする〈トーキング・アリー〉というロボット。これらは、支えてくれる人がいないと一人ではなにもできないロボットであり、いつも他を予定するロボットである。

人そっくりで完璧な会話をこなすことを目指すアンドロイドなどの〈強いロボット〉に対して、これらはいわば〈弱いロボット〉である。ゴミ箱ロボットがヨロヨロしながら「ゴミを入れて」という感じで近づいて来ると、人は「ほっとけないな」と感じて、ゴミを放り込む手助けをする。「助けたい、関与したい」と思わせるロボットの動きは、〈弱さの力〉である。

〈強いロボット〉が個々の能力を高めることを目指して個体だけで完結するのに対して、〈弱いロボット〉は、弱さを持ちつつ、弱さを媒介に他者と双方向的にお互いが関与し合う関係性に開かれている。

人間、そして人間らしさとは何だろうか。そしてコミュニケーションは、どのようにして行われているのだろうか。これらの問いを追究したいった結果が、この〈弱いロボット〉の誕生である。

これから人と機械が共生する社会を構想する際に、この〈弱いロボット〉の思想は多くの示唆を与えてくれる。

学生の感想にも、「弱さが排除されがちな現代社会において、〈弱さの力〉の重要性に気づかされた」、「弱いことは駄目なこと、隠すべきことだと考えていたが、弱さが力になると聞いて、弱い自分は勇気づけられた」という意見が寄せられた。

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