FDreport_vol15
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6されてきています。 ギルフォードという方が、この創造性というときのヒントとして、二つの思考方法を述べています。収束と発散です。収束的思考というのは、正しい答えを見つけることに集中する。多肢選択式というのはマークシートだと思ってください。それから、白か黒かを選ぶような知的活動。国家試験があるような学部ですと、国家試験がわりと、X2問題とかは二つの解答を選べということもあったりしますけれども、基本的には収束的思考で、知識が得られたかどうかを判断することがあるかもしれません。 一方で発散的思考は自由なアイデアです。複数の回答を創造的に生み出すということで、アクティブ・ラーニング型授業に代表されるようなブレインストーミングやKJ法、それからディスカッション、ペアワーク。いろいろなやり方があると思いますけれども、遊び心や好奇心、リスクをとるということに関係するといわれています。 この間亡くなってしまったケン・ロビンソンは、学校教育は創造性を殺してしまっているという有名なTEDトーク、TEDトークというのはYouTubeのビデオですけれども、伝統的なK-12、キンダーガーデンから12学年までで小中学校教育のことをいいますが、それと大学教育は主に収束的思考であって、創造性を殺してきたんじゃないかということを、強く警鐘していました。 そこで創造性を育むためのカリキュラムということですね。アメリカ教育のDNAは産業経済のニーズに対応してきました。19世紀は、工場・官僚組織・金融に有用なスキルとして、数学、語学、科学を教えるハードスキルに特化してきました。 そしてリベラルアーツ。創造的な分野、音楽や芸術などを含むリベラルアーツも一応やってきたのですが、ソフトスキルのようなメタ認知、メタ認知というのは自分がどう学んでいたかという学び方を俯瞰的に見る。自分がどういうふうに生きればいいのかとか、そういうことも含みます。メタ認知が必要だったわけですけれども、そのスキルはまだ重視されてこなかったわけです。 アラムという人の『漂流する大学教育』、原著では『academically adrift』というのですが、これは約10年前の論考です。学部生の45%が大学2年までの間、先ほどのソフトスキル、批判的な思考や複雑な推論など、ライティング能力も非常に低い。さらに、4年生になっても36%に全く改善がみられないということを発見してしまいます。 これから求められる創造性というのは、ロボット・プルーフな思考方法として、より高度な、高次な認知能力です。人間固有の心的・知的な特性を育む学習モデルとして、ヒューマニクスが必要だということがいわれます。 三つのリテラシーがここで出てきます。もう一度戻って話をしますと、リテラシーの語源、リテラというのは文字のことです。読み書きそろばんの能力。そろばんというのは、計算能力も最近は含みます。文字や数字も、口頭での表現を記号で表して保存することで、ほかの人へ伝達することを可能とする、原初のヴァーチャル・リアリティだともいえます。私たちが文学作品を読んだときに、頭にありありと想像してその情景が浮かぶわけです。このリテラシーというのは、識字能力を大きく超えて、情報を伝達して創造性に火をつける道具であると思うんですね。そのことを拡張させて、文字や数字を乗り越えて、○○リテラシーというふうに、何とかリテラシーってつけるんですね。 データサイエンス教育で目指すのは、データリテラシー。そのデータがなんであるかを知るということ。その背景にはハードの情報がありますので、ハードウェア、技術リテラシー。そして人間こそができるということ。この三つのリテラシーを合わせると、他者だけではなくて、機械ともデータとも、それから新しい産業をするような新しい知恵ともネットワークを構築することが可能になるだろう。そうすると、デジタル世界を最大限に活用できるようになるんじゃないか、ということです。 順番に三つのリテラシーについて押さえていきたいと思います。 さて、技術リテラシーですが、数学、プログラミング、工学の基礎的な原理に関する知識ということで、量子力学からそれが必要かというとちょっと難しいところですけれども、デジタルネイティブと呼ばれる、生まれたころからパソコンやスマートフォンを持っている世代は、使い方はすごく上手です。でもそのデバイスや、機械がどんなふうに作用しているとか、どうやってできているかということは、理解していません。デバイスの背後にある基本的な原則を理解する。工学部の教育に近いとは思いますけれども、文科系の人間でも医療系の人間でも、こういったことを知る必要があるんですね。ソフトウェアとハードウェアを最大限に活用するため、成功と創造する力を最大限に発揮するベースとしては、ハードの技術の理解が必要になるかと思います。 その上で、二つ目のリテラシーです。データリテラシー。これは、統計学教育が本当に言われていますけれども、分析を通じて、機械が生み出した情報の海、ビッグデータを理解し活用する能力のことです。情報の解釈、文脈の理解を助けて、機械群からあふれてくる圧倒的な情報の洪水から意味を見出すことができるのは、人間の本当は得意とするところです。 これ以降、モノのインターネット、Internet of Things、IoTが、推定500億のスマートオブジェクト。スマートオブジェクトというのはスマートフォンだけのことを言っていません。冷蔵庫などの家電や自動車もそうです。い

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