11内の経験ですね。態度とか戦略性など、五つの色がついていますが、SAILと名付けるように学生がいろいろなことを知り、経験し、羽ばたける。その船の帆になるように、それを支えていくような仕組みをとっているわけです。 さて、それが経験学習ですが、高等教育はこんなふうに個別化・カスタマイズできるのか。していかなければいけない、と思うわけです。大学4年間の断片的な期間だけではなくて、現代のキャリア全体では、生まれてから、ゆりかごから墓場まで絶え間ない技術変化にさらされていきますので、その中の4年間、医学薬学は6年間、それを前後する部分もうまく考えながら、生涯学習にもっていくわけです。 日本は2%ですが、アメリカの場合は25歳以上の学生は、2000万人中820万人います。これが970万人まで増加するそうです。 アメリカはすでにリカレント教育、生涯学習に舵をきっています。学部生、大学院生だけではなくて、企業の方とともに、または25歳以上の非伝統的学生を大学で一緒に学んでいく。生涯学習が二流のものになってはいけないということです。 そのことが社会人の学び直しというところに、このデータサイエンスプログラムやSTEAMプログラムは注目を浴びていきます。AI、ロボット工学、ハイテク技術。営利大学の登場です。企業内大学の登場ですね。日本ではほとんどないですが、世界中では推定5000の社内プログラム、営利大学が生まれています。専門職大学が生まれてくるのは、ここに近いかもしれません。 「つくれば奴はやってくる」と言われている、大学で研究してさえいれば、学位授与証明があればいい企業に勤められるといったモデルは破綻しています。大学が中心ではなくて、学習者が中心です。学習者がデータサイエンスの力を身につけるプログラム、カリキュラムを求めています。自分たちだけというのは、大学人だけでカリキュラム設計してきたんですね。企業や学習者というのは生涯学習も含むので、私たちを含むすべての学生候補者たちと協力し、ともに設計する。職業ニーズや成果を練って、意見を交わして、職場の変化に対応していくということです。 カスタマイズの事例です。もしこれが2022年度からのカリキュラムに役に立つということがあればありがたいです。アメリカの事例で恐縮ですけれども、ちょっと解説をしておきたいと思います。 メリーランド州です。サイバーセキュリティ人材の育成として、大学、産業界、政府機関の多重連携教育がなされています。産業界の代表者と共同開発した特別教育課程、オナーズ・プログラムといいまして、選抜された学生に奨学金を与えていくというのがオナーズといいます。正規カリキュラムと並行してオナーズが用意されています。 ここは、IBMとカーネギーメロン、UCバークレーなどとの提携で、認知計算科学の教育課程です。データ分析専門家、先ほどアナリストの話が出ていましたが、これはデータサイエンティストです。教室にIBMのワトソンと呼ばれるAIエンジンが使えるようになっています。学生と企業がペアになって「技術的メンター」についてもらって、AI技術を使いながら教育をしていく。 ここには企業の学生がたくさん入ってきていて、労働時間の一部を学習に費やす必要がありますので、従業員にメリーランド州大学に行ってもいいですよという報酬やインセンティブ、それを得た学生が例えばIBMに雇用されるとか、企業間移動も柔軟にできるような企業集団の連携がなされています。コンソーシアム組織があると考えていただいていいと思います。 カスタマイズのその2です。情報伝達の事例です。オンラインプログラムだけでは知識の伝達になってしまいますので、オンラインと対面型を混ぜたハイブリッド学習が、オンラインだけ、対面型だけよりも、効果が高いことがわかっています。もう1回注意しますが、これはコロナの前の話です。 なぜかというと、年配の学習者にとっては、本当に仕事しながら教育を受けるのは大変なんですね。自動化の影響を受けているので、その中にオンラインと対面を混ぜながら、短縮型の学位プログラムを入れていくわけです。そうすると、従業員の経験が生かされながら、ハイブリッドで課題解決を行っていって、時間が足りなくてもオンラインシステムで学ぶことができる。 そういった生涯学習者の学位プログラムをどうしたらいいのか。年間40万とか100万とか、なかなか払えないかもしれません。そういった中で、余裕ないのですが、必要なんだという教育経験。自分の雇用の中で、人生の中で、特定の知識・スキル・コンピテンシーのセットを効率的に取得し、迅速・効果的に運用していきたいという気持ちが出てくる。 その中で例えば、プログラミングのブートキャンプが流行っています。ブートキャンプというのは1週間プログラム、2週間プログラム。例えば東京大学の松尾先生がAI人材のブートキャンプをやっていますね。ああいったところに登録して、社会人であっても学ぶ見直しができるわけです。 学部課程や大学院課程にはめ込まずに、モジュール化していきます。全部を教えるわけではありません。すべてを総花的に教えるのではなくて、直ちに実用可能な知識を重視することが、このモジュール化されたものには可能になっていきます。
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