−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−質 疑 応 答−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−若本 そうですね、今、お話を聞いていて、ずいぶんアジリティという言葉の難しさもあるんですけれども、先生の話で少しわかるところもあったんですけれども、例えば留学生を教えているとやっぱりそういうことは感じますよね。私も大学院で留学生を去年教えていたんですけれども、まったく発想も違うし、授業のやり方という部分についても、常識が通用しないこともあります。教員が学生をよく理解するということは、日本人学生でももちろんそうなんですけれども、文化的背景が違うと、特にそれは大事なのではないかなということは感じましたね。 あとやっぱり、私が今所属しているのは英語英文学科なんですけども、3分の1がいわゆる外国人の先生方という形で、アメリカ、カナダ、イギリスという国々のご出身ですので、やはり話をうまくコミュニケーションしていくということについては、お互いに深く理解しなければ、会議なんかでもうまく話を進めることができないと思いますので、同僚との関係においても、今おっしゃった異文化アジリティについて感じる部分はありますね。8を写真に撮ってきました。問題解決をするときに対症療法を繰り返していくと、副作用が生まれます。根源的な問題は見えなくなってしまう。なんで私たちはこんな現代社会で、いろいろなことを解決しようと思っても、また新しい問題を生んでしまうんだろうか。 『ROBOT-PROOF』の中では、気候変動の課題に取り組む都市計画とか、飲料水汚染、ジカウイルスと闘う生物学者などが例示されているのですが、例えば都市計画でシステム思考を使ったらどうなるか。オルトゥイスさんという人の都市計画はすごくデザインにあふれています。地球温暖化を防ぐためにいろいろな工業的なものを解決するのではなくて、発想の転換ですね。水位が上がっても水没しない都市を作る。どうでしょう。こういったウォータースタジオみたいな図が載っていますけれども、水上都市を建設していって、旧都市がなくなってしまったとしても、しっかりと人間が生き残っていく。こういった考え方は、発想の転換からしか生まれないでしょうかね。 これは、5歳からもできるということで、例えばいじめというか、なぜ対症療法的な行動をとれるんだろうか、とってしまうんだろうかということは、5歳からも先ほどのループ図を描くことは、活動としてされていたりします。 さて、アントレプレナーシップです。デジタル化した職場で差別化戦略をとっていく必要があります。小学校に入学する子どもの現在の65%は、存在しない仕事で働くということですから、発見と発明、それから仕事を破壊するんじゃなくて、潜在的な仕事を作り出す。学校にいるうちに早く失敗して、たくさん失敗する。学生が在学中に破産したり、壊れた人間関係の痛みを被る前に、失敗の教訓を学ぶような機会を大学教育の中で。または、これって研究が一番そうかもしれませんね。研究プロジェクトというのは卒業研究やゼミですけれども、そういった中でアントレプレナーシップは育まれていくだろうと思います。 最後は異文化アジリティ。これが一番難しいところです。経験を積んでいくという経験学習の中でも、異なる文化に機敏に適応するということ。アジリティというのは本当に訳しづらくて、「専門家が異文化に置かれた状況でうまく仕事をこなすための超重要スキル」なんていわれていますけれども、グローバル化したときに、思ってもみない背景を持った人たちと。今の日本人の上司や同僚は、たしか中国人とインド人になるといわれています。アジア圏になりますので。今の中国人、インド人の給与体系はほとんど日本と変わりません。こういった背景の人々を理解して、共感をする。言外の意味や暗黙の意味、文化的前提、こういったことを解決するときに、アジリティ、異文化コミュニケーションは必要かなと思うんですね。 さて、ずっと走ってきましたけども、どうやって教えればいいんでしょうか。経験学習です。この、どうやって教えるかということですが、セミナーやレポート課題や試験、さまざまなことを私たちは用いてきたのですが、学問領域を横断するようなテーマ学習や、プロジェクト・ベースド・ラーニング、現実社会との接続ですね。これは、セーターをもらうんじゃなくて、セーターを裏返しにする。セーターを編み直すという言い方もいいかもしれません。いろいろな授業の中で、目的と手段を明示しながら練習し、獲得していくのかを説明していく。シラバスには学習方法、ディスカッション、演習、試験、模擬実習。さまざまな段階で、先ほど見せた四つの能力がどんなふうに発達するかを記載していきます。各科目を教えるのではなくて、各科目で教える。そういったハンズオンのプロジェクトなんかをもっていくんですね。 さて、ここまでが前半部分になりました。また抽象的な話になっていますけれども、ここまでのところで、もし追加の解説が必要だったり、質問がありましたら、どうかチャットのほうに入れていただけたらと思います。若本先生に、せっかくビデオをオンにされておられますので、異文化アジリティということが一番ちょっと難しいという話がありました。どうでしょう。私たちが異文化アジリティを感じる瞬間とか、教える瞬間ってあるんでしょうか。
元のページ ../index.html#10