2020年11月 今月のことば
- 死んだ蠅は香料作りの香油を腐らせ、臭くする。
- 僅かな愚行は知恵や名誉より高くつく。
- 賢者の心は右へ、愚者の心は左へ。
- 愚者は道行くときすら愚かで
- だれにでも自分は愚者だと言いふらす。
- 主人の気持があなたに対してたかぶっても
- その場を離れるな。
- 落ち着けば、大きな過ちも見逃してもらえる。
- 太陽の下に、災難なことがあるのを見た
- 君主の誤りで
- 愚者が甚だしく高められるかと思えば
- 金持ちが身を低くして座す。
- 奴隷が馬に乗って行くかと思えば
- 君侯が奴隷のように徒歩で行く。
- 落とし穴を掘る者は自らそこに落ち
- 石垣を破る者は蛇にかまれる。
(コヘレトの言葉 10章1節~8節)
日本聖書協会『聖書 新共同訳』より
アメリカ大統領選から目が離せないでいる。トランプ大統領のコロナ感染、無謀ともいえる治療法、ホワイトハウスでのクラスター騒ぎはご存知の通り。折しも副大統領候補者によるテレビ討論では、ペンス副大統領の頭に一匹の蠅が2分間止まり、話題をかっさらってしまった。映像を見て、私はヨーロッパの美術館で見た肖像画にこういうものがあったのを思い出した。15世紀から16世紀辺りの絵画には、蠅が描かれているものがある。肖像画以外にも、新鮮な果実や魚、花を描いた写真と見間違えるような静物画や、はたまたイエスや聖母子像にまでも一匹の蠅が、ちょんと描かれていたりする。蠅は「腐敗」や「死」など不吉なものを意味するが、一方でその場面が今ここで起こっているリアルな出来事であることを示す、画家のちょっとした遊び心でもあった。図らずも遊びのネタを提供してしまったテレビ討論であったが、このコヘレトの言葉にあるように、知恵のない愚かしい行動は災難を招く。トランプ大統領はコロナウイルスという「見えないもの」を軽視してきた結果、自ら掘った落とし穴に落ちてしまったように思える。バイデン氏優勢の声も聞かれ始めたが、アメリカは広く、多様な人々が暮らす社会である。トランプ大統領にも熱狂的な支持者が存在するわけで、結果はまだ分からない。いずれの候補になるにせよ、「見えないものに目を注ぐ」賢明な大統領が生まれることを切に願っている。
(洋琴水)