新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。そして、在学生の皆さん、新しい気持ちを抱きつつ、春学期を迎えていることでしょう。

   さて、２０１８年度の宗教部年間テーマは、「愛をもって、他者を敬い、未来を築く」です。宗教主任の先生方と共に模索した結果、重要な問いを秘めた魅力的な表現となりました。上記は新約聖書に伝承されている言葉です。私たちが多様な他者と出会うためのヒントが隠されているように思えます。同質傾向の友人や共感関係の仲間ではなく、自身と異質な敵対者や自身の理解が及ばない他者のために祈ることが求められています。

   かつて、国連事務総長潘基文が「自分と異なる人を悪く言う人に立ち向かおう。本を燃やした炎で未来は照らせない」（『朝日新聞』2010年9月26日）と洞察に富んだ発言をしました。同時多発テロから10年目を迎えた「9.11」を記念して「コーランを燃やす日」とすることを主張する保守派のキリスト者に向けての言葉でした。異なる人を悪くいう人は自身にとって、甘い蜜となる場合があります。その人は自分の味方と錯覚しがちです。「敵の敵は味方」との諺のごとくです。

   しかしながら、自身が敵と判断する異なる他者を迎え、他者のために祈る事は、今までの私自身のあり方を問い直し、自身のこだわりを明け渡す事でもあります。さらに、私自身と他者に対して新たな理解が創出する瞬間であるのかもしれません。異なる人との出会いと対話を通してこそ、新たな自分を発見し得ます。それが、聖書の語る愛でしょう。

   同志社女子大学のキャンパスには多くの異なる風が吹いております。同じであることのみに安心し連帯しがちな私たちであります。平昌オリンピックでの小平奈緒選手の姿勢（ライバルを気遣い、迎え入れる）のごとく、異なる文化に向けて心を披きたく思います。私だけの閉ざされた世界の中で「私的に無理！」と結論づけていた事柄に対して真摯に向き合うことを通してこそ、自身や他者に対して新たな宝を見出すことができます。短くもあり長くもある大学生活の中で、様々な経験を積まれることを応援しています。計算外、想定外の出会いや出来事の中に、真の豊かさを見出す智慧を育んでいきましょう。

   本学の礼拝（チャペルアワー）での出会い（人、思想、智慧）が、皆さんにとって新たな発見の一助となることを祈っています。

                                                                                                                                                            （ＡＧＯ）