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新島八重×同志社女子大学

コラム

八重の『再生』に挑んで

2012/11/20

鳥越 碧 (1967年 学芸学部英文学専攻卒)

このほどやっと、長篇小説「めぐり逢い-新島八重回想記」を講談社より上梓いたしました。

 同志社の創立者の新島襄を小説化してみないかというお話を先輩や友人から幾度かいただきましたが、気持が動きませんでした。というのは、清廉潔白なピューリタンのクリスチャンである新島襄は、小説の主人公としては魅力に乏しく、もっと人間臭い人物を描きたいという想いが強かったからです。
 それが、2013年にNHKの大河ドラマで新島襄の妻の八重が取り上げられると聞き、周囲の勧めもあって、この機を逃しては新島襄を一生書けないと、なにやら使命感めいたものを抱きペンを執ることになりました。

 そうして重い気持でスタートしましたが、資料を読んでいくうちに1つの大きな壁にぶつかりました。襄の信仰するキリスト教が、未信者の私には難しすぎたのです。この疑問を八重に背負わせることにしました。
 また、同じ書くのなら、やはり、私がかれこれ20年ほどになる小説作業の中で追い続けてきたテーマで挑んでみようと思ったのです。

 私が追い求めているのは、人は誰でも自分の意思で、自分の人生のシナリオを望むように書き、演出し、主役となって生きる喜びを得られるはずだという夢です。人生の「再生」の夢を、ぜひとも、この小説でも書いてみたい。そうした思いで、私はヒロインの八重の「再生」に挑んでみました。

 会津藩の砲術指南役の家に生まれ、石投げや木登りなど男の子に負けぬお転婆な少女であった八重は、会津戦争の折には男装して、女であるよりも男として銃を取って戦ったことを誇りとします。
 その八重が、京の地で、アメリカから帰国したばかりで、キリスト教主義の学校設立の夢に燃える襄にめぐり逢い、結婚します。
 決して諦めず苦難に立ち向かう襄に、八重とともに私もぐいぐい惹かれていきました。
 やがて、かつては女であるよりは男として生きたいと望んだ八重が、愛する夫に、女として愛されたいと願うように変わっていきます。襄にめぐり逢ったことで、女として再生したいと望むようになるのです。
 が、夫婦の糸は、キリスト教、会津への想い、襄の理想の女性像などがからみ合いもつれていきます。

 この世に与えられた生を熱く生き抜くバイタリティあふれる襄の、あまたの試練を一つ一つ乗り越えていく姿を忠実に添って追いつつ、八重がどのように夫婦のもつれた糸を解して己の再生を果たしていくか、その心の裡を描いてみました。
 そして、愛する人に女として愛されたい-八重の一途な気持を書くうちに、しだいに彼女がいとおしくなってまいりました。
 こうして、作中の襄と八重に助けられて、どうにか「めぐり逢い」を書き終えることができました。今では、食わず嫌いを恥じるほどに、襄も八重も大好きな登場人物として、想い出深い作品になりました。が、まだまだ2人の魅力は書き足りない思いがしております。

 ともあれ、拙著「めぐり逢い」で、新島襄と八重の奇跡のめぐり逢いを愉しんでいただければ幸いです。

鳥越 碧さん『めぐり逢い-新島八重回想記』表紙

『めぐり逢い-新島八重回想記』
 単行本(ソフトカバー): 386ページ
 出版社: 講談社
 ISBN-10: 4062180650
 ISBN-13: 978-4062180658
 出版日: 2012/11/16
 商品の寸法: 19 x 12.8 x 3.6 cm