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2012年1月

わたしたちは見えるものだけではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。

コリントの信徒への手紙Ⅱ 4章18節

 同志社女子大学創立125周年記念写真集『同志社女子大学125年』の「知の構築 -新たな学びの可能性を求めて-」の章には、次のようなに書かれています。「西暦2000年を人々は新しい時代への期待と高揚をもって迎えたことであろう…」。これは、京田辺キャンパスに蒔かれた種が次々に芽を吹き見事に開花し始めると同時に、女子大学全体としても総合大学化していく様子をつづった部分の冒頭のことばです。バブル崩壊後の先行きの見えない重苦しさはあったものの、コンピュータが次々にもたらす産業や生活の革命的な発展に触れ、人々は、21世紀になればきっと明るい時代が開ける、今までよりもっと心地よい幸せが地球上のより多くの人たちに訪れると、ここに書かれているのと同じ気持ちで年の変わりを迎えました。その後、女子大学は情報メディア学科や現代こども学科・薬学部の開設など、この記念集が予測できなかった大きな発展を遂げてきました。

 けれども、転じて世界の動きを見れば、人々の抱いた期待と高揚は完全に裏切られたといわざるを得ません。2001年の同時多発テロ事件は、世界中の人々に冷戦後の新たな対立構造を鮮烈な映像とともに見せつけました。疲弊するアメリカにリーマン・ショックが起きその揺らぎが大きな混乱を世界中にばらまいたのは、2008年のことでした。そして、昨年の東日本大震災。被災した人たちの有形・無形の傷は1年近くたっても一向に癒されることなく、また原子力発電をめぐる電力会社や行政のもたつきは大きな不信感を国民に植え付けました。

 あれから干支でいうならちょうど一回り、12年目の新しい年を迎えました。新年を迎えながらも、無邪気な高揚感にはなかなか酔えないような気がします。今年は何かいいことがある、心に引っかかっていたことは去年で終わって新しい気持ちで踏み出そう…といった気持に素直になれません。ここ数年、社会のそこここをずうっと覆ってきた重苦しい雰囲気が、今年もまた続くような気がします。

 しかしながら、そうした雰囲気の中にも気持ちが上向きになったりほっとして暖かくなるような出来事に折々に遭遇したのも一方の事実です。震災で避難した人たちがたびたび耳にし口にした歌の中に、「上を向いて歩こう」があったといいます。これは、もともとは永六輔が‘60年安保で味わった挫折感を詩にしたものだそうです。被災した方々は、決して思い出のメロディとしてではなく、 今まさにここにいる自分たちの歌として歌ったことでしょう。「上を向いて歩こう」。このことばを節をつけずに口に出してみると、力強い響きを持っているのに驚かされます。

 2012年は、どのような年になるのでしょう。それが 明であれ暗であれ、静であれ動であれ、この歌の持つ柔らかな強靭さを持って歩んでいきたいと思います。

                                                                                      (Mr)


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