
- 教員による時事コラム
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- 東日本大震災の想定外さを悼む!
※所属・役職は掲載時のものです。
東日本大震災の想定外さを悼む!
山上徹(現代社会学部社会システム学科特任教授)
日本では、高度成長期を経て交通施設、上下水道施設、通信施設などのインフラが整備され、多くの国民が快適に過ごせるようになった。振り返ると、1970年代後半、公害の発生や環境破壊が進行した。これらは生態系や地域住民への影響を無視し、企業の多くが有害化学物資を垂れ流していたことにあった。この公害問題は地域規模であり、加害者(排出企業)と被害者(地域住民)が特定できた。
しかし、近年、地球温暖化やオゾン層破壊などの問題は、ローカルな地域や国境を越え、グローバルへと拡散化している。このような問題は、多くの場合、排出者(国)自体を特定・断定できなく、加害者も被害者も不特定多数である。いまや環境問題は「一部」の地域問題ではなく、もはや地球「すべて」の共通課題となっている。これを克服・解決するには人類共通のグルーバルな課題と捉えることが必要である。
ところで、わが国で、2011(平成23)年3月11日に東日本大震災が起こった。それによる大津波の襲来で東北地方が壊滅的な被災地となり、また、死者・不明者数約2万5千人が出たことを悼む。鋸の歯のように連なるリアス式海岸の三陸地方では、たとえば、869(貞観11)年の貞観地震、1611(慶長16)年の慶長三陸地震、1896(明治29)年の明治三陸地震、1933(昭和8)年の昭和三陸地震などと大地震や大津波で被災してきた。
この度の東日本大地震はマグニチュード(M)9.0であり、その津波は東京電力福島第一原子発電所周辺でおよそ14mから15mの高さであった。巨大地震・大津波はまさに想定外であり、未曾有、壊滅的、空前絶後の被災状況となった。福島第一原子発電所ではこの津波で原子炉の冷却システムが停止し、その後、水素爆発が起こり、国際原子力評価尺度レベル7の大事故の発生となった。
原発自体は、(1)発電コストが安く、(2)二酸化炭素排出がなくクリーン、(3)何重もの防護策のため絶対安全という呪文を多くの国民は深く信じてきた。しかし、福島第一原子発電所の建屋内外から高い放射性物質の放出や高濃度の放射能汚染水の漏れが検出された。津波による大量の海上浮遊物や漂流物は風・海流で移動するばかりでなく、さらに、原発事故による放射線量などの大気汚染や放射性物質の汚染海水などが越境汚染する恐れもある。汚染の及ぶ範囲は当初、原発周辺の沿岸部、次に、日本国内の太平洋沿岸地域・日本海側へと広がり、さらに、日本海対岸諸国や太平洋対岸諸国・地域へとグローバル化することが懸念される。
東日本大震災の大津波による原発事故は天災地変とみるよりも、初動操作やリスク管理の不適切さなどを考えると、もはや人災ともいえよう。放射性物質の排出者は東京電力であると特定できるが、「原子力損害の賠償に関する法律」(第3条1項)に「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」とある。この「ただし書き」を適用するか否かで東京電力は賠償の無限責任者から無責任者への逆転が起こり得る。つまり、事故の原因が想定外の天災地変であれば、東京電力の免責事由になる可能性もある。一方、国内外の多くの人びとは、東京電力と同様に日本政府にも責務があると、認識していることもたしかである。
