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※所属・役職は掲載時のものです。

1位大判焼き、2位今川焼き、3位回転焼き

2017/08/10

吉海 直人(日本語日本文学科 教授)

小麦粉を主体として、中に餡が入った焼き菓子といえば、あなたは何を想像しますか。「たい焼き」ですか、それとも「大判焼き」ですか。では「たい焼き」と「大判焼き」は何かどう違うのでしょうか。歴史を紐解いてみると、どうやら「たい焼き」は「大判焼き」から派生したもののようですから、材料などはほとんど一緒です。

ただし、「たい焼き」には重曹が加えられているものもあります。それよりできあがりを見ると、「たい焼き」の方は生地を薄手にして、カリッと焼き上げていますね。形と焼き上がり、この二つが主な相違点ということになります。

今回問題にしたいのは、「大判焼き」に別称が異常に多いということです。どうやら「大判焼き」にも、地域による名称の違いなどが認められそうです。そこで調べて見たところ、全国的に一番流通しているのは、「大判焼き」ではないでしょうか。面白いことに、これは愛媛県松山発祥とされています。

それに対して「今川焼き」も全国区ですが、特に首都圏に密集して使われているとされています。それというもの「今川焼き」は、江戸の今川橋付近で売られていたという由来があるからです。地名に起因する名称なので、東京近辺に多いことも頷けます。いずれにしても「今川焼き」が一番古い(1800年頃)ようです。

三つ目に「回転焼き」があげられます。これは主に西日本に多いとされています。もともとこの名称は、お菓子を焼く道具が回転することから、そのまま「回転焼き」と称されるようになったとのことです。

この三つが地域的な呼び方の代表例とされていますが、かなり入り混じっているようです。もちろんこれ以外にもいろいろな呼ばれ方があります。例えばお菓子の形から、「太鼓焼き」とか「太鼓饅頭」とも言われています。私は長崎出身ですが、小さい頃「太鼓饅頭」と言っていた記憶があります。これは同音の「太閤焼き」(大阪)や「大幸焼き」(兵庫)、さらに「大砲焼き」(鹿児島)にも変化しています。

広島では「二重焼き」と呼ばれています。これは別々に焼いた二つの生地を重ねて作ることから派生したものです。兵庫県では一風変わった「御座候」という名称になっていますが、これは店舗の名称が商品名に転化されたのでしょう。「えびす焼き」もヱビス屋の商品名です。富山の「七越焼き」にしても、七越(ななこし)という店の商品名です。また滋賀県長浜では「暫(しばらく)」という名で流通しています。これはもちろん歌舞伎十八番の演目からの命名です。

その他、信州上田では「自慢焼き」と言われています。茨城近辺では「甘太郎」という名が一般的です。土浦では「どてきん」、山形県では「あじまん」として売られています。四国松山の「日切焼」は、日切地蔵の境内で売られていたものです。静岡県藤枝市では「黄金まんじゅう」と称されています。三重では「天輪焼き」など、所変われば名前もさまざまですね。

意味不明の名称としては、赤穂浪士に因んで「義士焼き」、岡山の「夫婦まんじゅう」などがあげられます。横文字の「スミス焼き」というのは、スミスさんが飛行機の曲芸(宙返り)を見せたことから、それに「回転焼き」の回転を重ねたハイカラなものです。

それは違うだろうという名称も流通しています。たとえば「どら焼き」ですが、これは「大判焼き」とは別種の菓子のはずですが、東北・北海道では「大判焼き」の別称として立派に流通しています。同じく東北・北海道では「おやき」とも呼ばれているようですが、これは信州名産の「おやき」の方が一般的ですよね。また福島では「きんつば」という名称の「大判焼き」がありますが、これも京都の「きんつば」(和菓子)の方が有名です。

なお京都の「ロンドン焼き」は、「大判焼き」とは似て非なるものです。兵庫の「人工衛星饅頭」も、別称とは言えそうもありません。三重県の「蜂蜜饅頭」も微妙に形が違っています。北陸の「六法(むほう)焼き」にしても、四角く六面体にしているので、「大判焼き」とは別物です。

いかがですか、「大判焼き」は、こんなにたくさんの名称を持つお菓子だったのです。ところであなたは何派ですか。


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