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※所属・役職は掲載時のものです。

「八重の桜」

吉海直人(日本語日本文学科 教授)

2013年のNHK大河ドラマが「八重の桜」に決定しました。掛詞を含むとてもきれいなタイトルですね。聞くところによると、東日本大震災に遭った福島を励ますために急遽差し替えられ、會津若松出身の新島(山本)八重に白羽の矢が立ったとのことです。

脚本は山本むつみさんが書き下ろすようですが、その元となる資料は既にNHKに揃っているようです。というのも、 2009年4月に歴史秘話ヒストリアという番組で「明治悪妻伝説初代「ハンサム・ウーマン」新島八重の生涯」が放映されており、その際の取材資料がそのま ま活用できるからです。

同志社関係者にとって、これは大変有難い話ですね。ただ八重の知名度ということでは、新島襄の妻・山本覚馬の妹という以 上に、どの程度知られているのか不安もあります。外部の人から尋ねられて、ちゃんと答えられる人はそう多くはないと思われるからです。もちろん天下の NHKですから、同志社のことをそんなに都合良く宣伝してくれるとも思えません。となると前半は新島襄と結婚する前、つまり戊辰戦争における會津鶴ヶ城籠 城中が主体になるに違いありません(会津のジャンヌ・ダルク)。そして後半は新島襄の死後、おそらく日清・日露戦争における篤志看護婦としての活躍が中心 になるでしょう(日本のナイチンゲール)。そうなるとなおさらですね。

仮に同志社のことが取りあげられたとしても、これまでは新島襄尊崇の反動として、妻の八重に対しては悪妻とか烈婦という 非難の声の方が高かったのです。先のNHK歴史秘話ヒストリアはそれを逆手にとって、見事に八重の印象をハンサム・ウーマンに転換しています。いわば外部 の目によって、新島八重の見直し・復権が行われたわけです。これを契機として、同志社関係者は新島八重についての正しい知識を早急に身につけることが求め られます。

とはいえ、そんな便利なテキストが市販されているわけではありません。同志社でも『新島八重子回想録』と『山本覚馬新島 八重その生涯』という小冊子二冊があるだけです。最近、本井康博氏が『ハンサムに生きる』(思文閣出版)を出されており、これが現在のところ一番のバイブ ルです。その他、八重のことを小説にしたものとして、同志社出身の作家・福本武彦氏の『會津おんな戦記』(筑摩書房)と『新島襄の妻』(新潮社)がありま す(ともに絶版)。また最近、藤本ひとみ氏の『幕末銃姫伝―京の風会津の花』(中央公論新社)も出ています。さらに文月今日子氏の『結婚しない彼女』(宙 出版)というコミックには、「サムライ・レディ」というタイトルで八重の伝記がマンガになっています。

まずはこういった本を一通り読んで、八重についての基礎知識を身につけることが、同志社関係者に与えられた緊急の課題ではないでしょうか。